音無厩舎にダービー馬候補2頭が入厩 シエラ&コンキスタ迷わず指名だ/吉田竜作マル秘週報
◆「“巨大グループ企業”みたいです」
今年も「ザッツPOG」を発刊することができました。お忙しい中、まだキュウ舎にも入っていない2歳馬が多い中で、取材に協力してくれた関係者、そして寄稿していただいた皆様にも厚く御礼申し上げます。
特に記者にとって大きな財産となったのは稲富菜穂に随行したノーザンファームしがらきでの取材。サラブレッドを育成する上での理念を教えていただき、稲富も感動しておりましたが、記者も目からうろこの話ばかりでした。松田博元調教師をはじめとする関係者の方々から、NFしがらきの様子をうかがう機会は多かったとはいえ、やはり聞くと見るとでは大違い。少しでもこの取材で得たものを読者の皆様に還元できれば…。
何より驚かされたのは調教メニューから、カイバの配合、サラブレッド個々の体調を示す数値など、ありとあらゆる情報を北海道のノーザンファーム本体と共有できていること。言うのは簡単だが、行うのは難しいことをやれているからこそ、現在のノーザンファームの隆盛があるのだろう。
「確かにウチの強みは情報をグループ全体で共有できていること。離乳から、イヤリング(1歳馴致)、そして入キュウまで、情報を共有することで、やるべきことを的確に行うことができる」とは場長の松本康宏氏。
組織は大きくなればなるほど、末端の統率が利かなくなるものだが、このグループにはその不安が全くない。今年、調教師試験に合格した安田翔伍調教師はこんなことを言っていた。
「僕もトレセンに入る前にノーザンファームで働いていたのですが、当時はここまでではなかった。今は何事にも組織だっていて、“牧場”という感じがしないですね。“巨大グループ企業”みたいです」
トレセンで取材していると、牧場とキュウ舎、生産牧場と育成牧場との摩擦や手柄の奪い合い、時には不手際の責任のなすり付け合いなどを目にすることもある。しかし、徹底した“品質管理”ができていて、かつ「全員が一つの方向を向いて仕事ができている」(松本氏)強固な組織は不要なトラブルもなく、安心して仕事に専念できる。生き物が相手だけに、人間がストレスも、迷いもなく働ける環境は大きなメリットになるに違いない。その積み重ねが多くのクラシックホースを生んできたのだろう。今週のオークス、次週のダービーにも「NFしがらきの申し子」たちが数多くエントリー。必ずやいい結果を残してくれるに違いない。
最後に取れたてPOG情報を――。音無キュウ舎はダービー目前にして、来年のダービー馬候補が入キュウしてきた。シエラネバダ(牡=父ディープインパクト、母ミスパスカリ)とコンキスタドール(牡=父ルーラーシップ、母レーゲンボーゲン)の2頭だ。
「シエラネバダはおとなしくて扱いやすい。牧場の人間もウチのスタッフもみんな乗り味の良さを褒めてくれるんだ。コンキスタドールは少し子供っぽいところはあるが、馬体はルーラーシップの子らしく見栄えがする」と音無調教師。
この2頭もNFしがらきとキュウ舎を行き来しつつ、鍛え上げられ、成果を出していくのだろう。POGドラフトでは迷わず指名してほしい。