▲前回に引き続き、乗馬クラブ「クレイン伊奈」に暮らす元競走馬たちを取材
乗馬クラブで「馬がグッと身近な存在に」
ダイワスペリアーの週にも少し登場したが、乗馬クラブクレイン伊奈には2003年の中山記念3着馬ダイワジアン(セン21)が在籍している。こちらはダイワスペリアー(セン22)やメジロマントル(セン20)とは違って、顔も性格も個性的だ。
ダイワジアンは、1996年4月7日に、北海道千歳市の社台ファームで生まれている。父はノーザンテースト、母はナショナルフラッグ、母の父はディクタスという血統だ。全兄には1998年のステイヤーズS(GII)優勝のインターフラッグ、半姉には1999年の京都牝馬特別(GIII、現・京都牝馬S)勝ちのマルカコマチ、半妹に2007年の福島牝馬S(GIII)で2着となりその後の活躍が期待された矢先に疝痛で命を落としたフラッグシップがいる。あまり響きは良くないが、競馬の世界で良く使われる、いわゆる「屑の出ない血統」だ。
1998年8月に札幌の芝1800mの新馬戦でデビューして11着。しばらくの休養ののち、翌年の2月、東京のダート1400mの未勝利戦で初勝利を挙げている。2000年に入って3勝し、徐々にクラスを上げていったダイワジアンは、2001年10月に本栖湖特別(1000万下)、白秋S(1600万下)と連勝してオープン入りを果たした。さすがにオープンクラスでは苦戦も強いられたが、2003年の中山記念では、9番人気ながらローエングリンの3着と好走もしている。9歳まで現役を続けたダイワジアンは、夏の新潟のNSTオープン(OP)の18着を最後にターフに別れを告げた。
ダイワジアンは、彼が大好きだという女性会員さんとともに洗い場にいた。
「優しい子ですよ。噛むのは仕方ないですから。人によって、噛む力が違うんです。加減しているのよね」
女性会員さんは、ダイワジアンにメロメロのようだ。馬は人を見るとよく聞くが、ダイワジアンも彼を理解してくれる人には優しく、それほどでもない人には少し強く噛んで、強弱をつけて意志表示しているようだ。目良さんも「噛むのが愛嬌だと思ってくれる方には、とっても良い子だと思いますよ」と、ジアンの性格を評価している。
▲▼重賞でも好走実績のある表情豊かなダイワジアン(セン21)
「ジアンは新潟(NSTオープン・18着)のレースが終わって、それこそすぐにウチに運ばれてきたと聞いています」と乗馬クラブクレイン伊奈の目良光さん。
普通は他のクラブで調教をされるなど、ワンクッション置くケースが多いようだが、ジアンは競走馬のまま、クラブに仲間入りした。引退レースは2005年7月だから、クレイン伊奈のメンバーになってから、およそ12年の月日が流れた。
後日、その話を現役時代に管理していた上原博之調教師に伝えると