北海優駿口取り
3冠達成の可能性がひじょうに高くなってきた
このところ、週の前半は比較的好天に恵まれるものの、半ばから週末にかけて天候が崩れるという周期になっている北海道の天気。門別競馬場もそのあおりを受けていて、先週の6月1日(木)に行なわれた「第45回北海優駿」は、朝からあいにくの雨になってしまった。
ついでながら、今週もまた8日木曜日に交流重賞の「第21回北海道スプリントカップ」が予定されているが、どうやらこのままだとまた雨になりそうな気配で、何ともツキがない。
さて、北海優駿。今年は、去る4月18日のホッカイドウ競馬開幕日に行なわれた「第41回北斗盃」に、岩手からベンテンコゾウが遠征してきて、地元勢を一蹴し、3冠レースの1冠目を制した。
ホッカイドウ競馬は、昨年より、3歳の3冠レース全てに勝つと2000万円のボーナスが交付されることになっており、昨年はスティールキングが北斗盃、北海優駿と勝ち進み2冠を制したが、残念ながら3冠目の王冠賞でジャストフォファンに4馬身差をつけられ2着に敗退し、3冠馬になれずに終わった。
今年もこのボーナス制度は継続されており、所属する競馬場を問わないとされていることから、開幕日に実施された北斗盃にベンテンコゾウが勇躍参戦してきたというわけである。
そして、きっちりと勝利を収め、勢いを保ったまま、北海優駿にも駒を進めてきたというわけだ。
戦前の予想では、ベンテンコゾウにとって2000メートルの距離がいささか長いのではないかと不安視する声も聞かれた。また、折からの降雨によって門別の馬場状態は時間を追うごとに悪化の一途で、暗くなる頃には水が浮く不良馬場と化してしまった。
天候悪化は、ファンの足が遠のいてしまう大きな要因である。せっかくのダービーデーというのに、この日の門別は閑散としており、場内の風景はいつもの開催日とあまり変わらない。後の主催者発表によれば入場人員は621人となっていたので、やはりいかにも少ない。悪天候を嫌って、遠出を止めた向きが少なくないのだろうと思われる。
北海優駿は第12レース。午後8時40分のスタートだ。レース前、出走各馬がパドックに姿を現したが、やはり雨模様のせいか人が少ない。出走馬はドンカスターボーイが取り消して13頭。ベンテンコゾウが1番人気で2.3倍。それに、北斗盃で2馬身までベンテンコゾウに迫ったストーンリバーが3.1倍で続く。3番人気は目下2連勝中のモンサンルリアンである。
パドックを周回するベンテンコゾウ
ベンテンコゾウ返し馬
雨は強くなったり弱まったりしながら、止む気配がないまま、いよいよ発走時間を迎えた。しかしこの頃には小雨程度にまで収まってきて、土砂降りの中のレースにはならずに済みそうであった。
ストーンリバー(五十嵐)を注視する村上忍
門別の2000メートルは4コーナーからのスタートである。村上忍騎手の騎乗するベンテンコゾウは5枠7番。ゲートが開いて各馬が泥んこの馬場に飛び出した。パチャッパチャと水の浮く馬場を13頭が最初のゴール前を通過して行く。ハナを切るのは岩橋勇二騎手の騎乗するスカイロックゲートだ。それにベンテンコゾウ、ストーンリバーが続く。
そのままベンテンコゾウは2番手をキープするが、3〜4コーナーにかけて村上騎手の手が動き、追われているのが大型ビジョンに映し出された。もしや、そろそろ一杯なのかと思われたが、4コーナーを回り、直線に向かうと、最内を逃げ粘るスカイロックゲートを外側から一気に交わして難なく先頭に立ち、そのまま1着でゴールした。
一着で入線するベンテンコゾウ
終わってみればあっさりとこれで2冠達成であった。父サウスヴィグラスの距離適性からも、2000メートルはやや長いのではないかと不安視されていたが、危なげない勝ち方であった。
肩掛けをかけてもらうベンテンコゾウ
いよいよこれで、来る7月27日の「王冠賞」が楽しみになってきた。距離は1800メートルに短縮されるのも好材料だし、仮にまた馬場が悪化しても、ベンテンコゾウは不良馬場を苦にしないタイプのようなので、いよいよ3冠達成の可能性がひじょうに高くなってきた。
一方の地元勢にとっては、何とも心中複雑だろう。交流重賞で中央馬に勝たれてしまう光景はある意味見慣れているだろうが、3歳3冠路線にこんな形で他地区からわざわざ遠征してきた馬に勝たれるというのはおそらく初めてのケースで、ここまで来たら何とか3冠を阻止したいところ。
ベンテンコゾウはこれで2冠達成となったわけだが、ボーナスは現段階では250万円に過ぎず、次走の王冠賞制覇で晴れて2000万円を手にすることになる。印象としては、札束に指先が触れつつある、といった感じだが、それをしっかりと掴めるかどうか、王冠賞はひじょうに興味深い一戦になりそうだ。
引き上げてくるベンテンコゾウ
ところでこの日は、南関が浦和開催であったことから、門別は本場こそ入場人員が少なかったものの、ネットを中心に馬券だけは5億4778万円と、かなり売れた。
北海優駿だけでも1億8091万円を発売し、大健闘であった。ただ、このうち本場を除いた場外発売分(ネットを含む)が1億7951万円であり、本場ではわずか140万円にしかならない。場外、とりわけネット発売に大きく依存する体質は今に始まったことではないものの、今後はいかに本場に人を呼び込めるかが課題だろう。
昼間開催の浦和と重なったことが売り上げの伸びた大きな要因であることは確かで、北海優駿の前日、5月31日にも4億1539万円を売り上げている。売り上げが増えることには何ら異論を挟む気はないものの、できることなら自前の売り上げを伸ばしたいところ。本場には地理的条件もあり、そうそう多くの人を呼び込めないとしても、せめて道内各地に展開する直営場外でいかに売り上げが増やせるかを考えたい。