脈々と続く血統の物語
6月14日(水)、川崎競馬場で行われる『第53回関東オークス』。2000年(第36回)からダートグレード競走となった3歳牝馬のダート女王決定戦。同時に南関東牝馬3冠戦線を締めくくる戦いでもありますが、今年は浦和桜花賞1着のスターインパルス、東京プリンセス賞1着のアンジュジョリーが不在(アンジュジョリーは東京ダービーに出走して11着)。さらにJRA勢も昨年のタイニーダンサーのような重賞ウイナーが不在。臨戦過程もさまざまで現時点での力の比較が難しいレースです。
そんな中、今回最初に取り上げるのはJRAのサクレエクスプレス。芝でデビューし2戦目の未勝利戦(東京・芝1600m)で勝ちあがり、4戦目には重賞フラワーC(GIII・芝1800m・10着)にも出走しました。5戦目に中山の3歳500万下(4/16・ダート1800m)でダート初挑戦。大外枠からのスタートで道中は3番手。4コーナーを回って1番人気チリーシルバーが先頭に立つと、そのすぐ外から並びかけ、直線では2頭の叩き合い。ゴール前で抜け出し、1馬身差で2勝目を挙げます。
4月の3歳500万下で2勝目を挙げたサクレエクスプレス (撮影:下野雄規)
2番人気だった前走・青竜S(東京・OP・1600m)は道中後方の位置取りとなり7着。牡馬相手のオープン戦は初めてで、東京ダート1600m(スタート地点が芝)の緩みないペースだったことを考えれば、想定内の結果。距離延長となる2100mは好材料と言えるでしょう。
サクレエクスプレスの父はクロフネ。クロフネ産駒は2007年のホワイトメロディー、2008年のユキチャン、2015年のホワイトフーガと3勝を挙げている相性のいい血統。さらに母は2002年のクイーン賞(船橋・1800m)を制したビーポジティブ。ご存知トゥザヴィクトリーの全妹でサイレントディールの全姉。芝のGI馬トゥザヴィクトリーは2001年フェブラリーSで3着、ドバイワールドCで2着とダートでも活躍。サイレントディールも2003年武蔵野S、2007年佐賀記念を制したダートグレード競走ウイナー。祖母フェアリードールの血をひく上記の馬たちすべての背中を知っている武豊騎手と今回初コンビで挑む関東オークス。脈々と続く血統の物語を感じることができるのも競馬の醍醐味のひとつです。
2008年のユキチャンなどクロフネ産駒は関東オークスと相性がいい (撮影:高橋正和)
兵庫CSで3着のクイーンマンボ、地方勢にもチャンス十分
人気を集めそうなクイーンマンボ。デビュー戦こそ芝で大敗しましたが、2戦目でダートに転向。未勝利、3歳500万下と1800m戦で2連勝。特に4月の500万下(阪神)は道中、中団の内で脚をため、直線で外に出すと前にいた馬たちを軽く交わして1着。牡馬相手の勝利でタイム1分51秒2も好時計。5月の兵庫チャンピオンシップではタガノディグオ、ノーブルサターンに次ぐ3着。今回のJRA勢でダートグレード競走に出走経験があるのはこの馬だけ。鞍上・初コンビのルメール騎手とともに重賞初制覇を狙います。
兵庫チャンピオンシップで3着に入ったクイーンマンボ。写真は3歳500万下優勝時 (c)netkeiba
3番手に挙げるのは地方勢から。今回、前走・東京プリンセス賞の2着から5着までの4頭が出走していますが、中でも最先着の川崎のアップトゥユー。ホッカイドウ競馬出身で栄冠賞で5着、フルールCは4着、リリーCは3着と掲示板を確保。10月のエーデルワイス賞(JpnIII・門別・1200m)ではリエノテソーロの2着に健闘。続く11月の南関東重賞・ローレル賞(川崎・1600m)を6馬身差で圧勝。川崎コースで勝っているのは大きな強みです。父サウスヴィグラスは短距離の活躍馬を多く輩出していますが、昨年の関東オークス勝ち馬タイニーダンサー、先日の東京ダービー(2000m)を完勝したヒガシウィルウィンなど産駒の距離適性の幅が広がっているようです。東京プリンセス賞はゴール前でアタマ差外から差されての惜しい2着。目の前で逃げていったタイトル。その悔しさを晴らすべく、最後の1冠に臨みます。
昨年のローレル賞を6馬身差で圧勝したアップトゥユー (撮影:高橋正和)
東京プリンセス賞の3着、大井のステップオブダンスも上位を狙える存在。父ゴールドアリュールで距離延長は歓迎。デビューからコンビを組むのはダービージョッキー・森泰斗騎手。2週連続重賞勝利を狙います。
アンジュデジールは3月のフィリーズレビュー(阪神・1400m・13着)まで芝で5戦。ダート転向初戦は京都・3歳500万下(1400m・牝馬限定戦)で2着。続く前走・5月の東京・3歳500万下(1600m・牝馬限定戦)では直線抜け出して差を広げての勝利。ダートに転じて2戦、ゲートの出が遅いのが気になりますが、京都1400m、東京1600mはどちらも芝からスタートするコース。原因がそこにあると考えると、今回すんなりスタートを切れば、新しい面を見せてくれるかもしれません。
5月の3歳500万下を快勝したアンジュデジール (撮影:下野雄規)
アポロユッキーは前走・中山の3歳500万下(1800m)で牡馬を相手に1着。雨が降り、水が浮く状態の不良馬場で控える競馬。道中は内目を進み、直線で外から伸びての勝利。道悪で泥んこになりながら勝負根性の強さを見せてくれました。戸崎圭太騎手との初コンビで挑みます。
前走、牡馬を相手に3歳500万下を勝利したアポロユッキー (撮影:下野雄規)
さらに、グランダムジャパン2017・3歳シーズンの最終戦でもある関東オークス。ここまでのポイント1位は高知のタッチスプリント(27ポイント)。2位は兵庫のスターレーン(21ポイント)。今回の着順によって3歳シーズン優勝馬が決定。その行方にもご注目ください。
例年JRA勢が上位にくるレースではありますが、昨年2着のミスミランダー、2015年3着のトーセンマリオン、2014年2着のトーコーニーケ、2012年1着のアスカリーブル、3着のシラヤマヒメのように過去5年をさかのぼっても多くの地方馬が上位争いを演じています。今年もまた地方勢にもチャンス十分。この勝利をきっかけにどの馬が飛躍を遂げるのか、非常に楽しみでなりません。
※次回の更新は6月27日(火)の18時。翌日に大井競馬場で行われる「帝王賞」のコラムをお届けします!
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中央競馬・地方競馬の交流を促進し、ダート適性のある実力馬の出走機会の拡大を図るため、全日本的な見地から体系づけられたダート交流重賞競走の総称。