◆「あの能力は本物なのか」の再確認 ここ数年、のちのビッグレースの主役に出世する馬が少なかった札幌2歳Sだが、今年は楽しみな馬が揃った。
新種牡馬オルフェーヴル産駒が2頭に(ともに人気馬)、藤沢厩舎の持ち込み馬
ファストアプローチ(父は欧州の新種牡馬ドーンアプローチ。5代前のノーザンダンサーまで、世界のクラシック勝ち馬が5代連続する父系)。牝馬
シスターフラッグは、その母がゴールドシップの半姉など、能力・素質だけでなく、さまざまな点で注目を集める馬が多い。
距離が1800mになって、昨年まで20年間。それ以前の10年間には「5頭の牝馬勝ち馬と、6頭の牝馬2着馬」を輩出していた2歳戦初期のこの重賞は、この20年間の牝馬の成績【1-6-7-44】となった。好走はするが、勝ち馬はのちに阪神JFを勝った2013年のレッドリヴェール(父ステイゴールド)だけである。
だが、久しぶりに牝馬のチャンスとみて、5頭の牝馬の中から
ロックディスタウン(父オルフェーヴル)に注目したい。
新潟1800mで勝ち上がりここに出走する馬が3頭もいる。1800mの札幌2歳Sでは史上初である。どうしてなのか? 先週、ほとんど距離の変わらない1600mの「新潟2歳S」が行われたばかりであり、札幌の方が相手が弱いなどということはまったくない。
理由は難しいが、WオールスターJができて、新潟2歳Sの日には残念ながら未来を託していいようなトップ騎手がいないことが大きい。新馬を勝って期待のふくらんだ2歳馬に、オーナーを中心とした関係者はいきなり本意ではない乗り代わりの騎手を配したくない。
また、早い時期に勝った馬は、充電・再鍛錬の放牧に出るケースが多いが、多くの調教・育成牧場は北海道にあり、わざわざ北海道に遠征するわけではない。短期間の放牧と関係している。さらには、高速で上がりだけのレースになる新潟では本当の資質を確認できないので、距離を1600mに短縮して新潟2歳Sに出走するより、洋芝の札幌に向かう陣営もいる。
牝馬ロックディスタウンには、考えられる理由がすべて当てはまる。だから、相手強化は承知で札幌2歳Sなのだろう。
レッドリヴェールが示したように、ステイゴールド系の父オルフェーヴル産駒で、母がゼンノロブロイの半姉で父ストームキャットなら、非力でもスタミナ不安でもない。新潟1800mの1分50秒4は一見、平凡だが、ロックディスタウン自身の上がりは最後の2ハロン10秒台(推定)を2回含み「32秒5」だった。
ルメール騎手は軽く気合を入れて先に抜けた2頭の外に出しただけで、ほとんど追っていなかった。あの能力は本物なのか、新潟では再確認にも、確信にもならないのである。輸送の連続はちょっと心配だが、楽に上がり32秒5で勝った牝馬の秘める可能性に期待したい。上がり32秒5は、新潟2歳Sを勝ち馬として史上最速で決めた2戦目のハープスターの記録と同じである。