スマートフォン版へ

日高軽種馬農協総代会

  • 2005年03月22日(火) 19時56分
 先週の3月18日(金)、静内町公民館にて「第34回総代会」が開催された。昨年は11名の組合員が資格を剥奪されるという白熱した総代会だったが、今年は至って平穏に流れ、日高の沈滞ムードが如実に表れた静かなものだった。

 今年度の主な計画としては、老朽化の著しい門別支所を3150万円の予算で新築することと、サラブレッド種牡馬2頭を予算10億円以内で導入することなどである。すでに、新種牡馬キッケンクリス号(父クリスエス、2000年生まれ)を昨年購入し、本年度より供用開始だが、組合員に高資質の種牡馬を低料金で提供するという目的から、今年度以降も引き続き新種牡馬導入に積極的に取り組んで行くことになったのである。

 ただ、かつては1800人もの組合員を擁していた日高軽種馬農協だが、生産地としての日高が地盤沈下し続けている現状では、組合員もまた急速に減少している。言うまでもなく、組合員の減少は牧場の減少でもある。平成16年度末でその数は1168軒。昨年度末が1233軒。10年前の平成7年度末には1474軒あったのだ。この数字から比較すると300軒も減少したことになる。

 さらに、飼養形態別戸数を見ると、全体の約77%(905戸)がサラブレッドのみを飼養し、サラとアラ双方を飼養する牧場が約7.5%(87戸)、そして約1.5%(18戸)がアラブのみの飼養となっている。だが、このいずれにも属さない牧場が158軒もあり、これらはおそらく「名前だけ残っている」牧場なのだろうと推測せざるを得ない。

 飼養頭数別では、繁殖牝馬1〜3頭の牧場が236戸、4〜5頭が191戸、6〜10頭が375戸、11〜14頭が107戸、15〜19頭が58戸、20頭以上が43戸という内訳である。ここでも、「その他、158戸」とあるので、前に挙げた種類別内訳と照合すると、やはり実質的に「馬を飼養していない牧場」がこれだけあるということなのだ。1168-158=1010軒。日高で実際に繁殖牝馬を飼養している生産牧場は、ほとんど1000軒を割り込む寸前まで減少してきていることがこれで分かる。

 もっとも、昨今の中央・地方を問わない馬券売り上げの減少により、地方競馬の廃止が相次いでいることと、「社台ブランド」攻勢の影響をモロに受けて相対的に地盤沈下の目立つ現在の日高の状況を考えれば、今後さらに競走馬需要の減少と生産頭数、生産牧場戸数の減少傾向は続くものと思われる。大きな過渡期を迎えつつあることを否が応でも認識せざるを得ない。

 私の住む浦河は、日高管内の東部に位置し、馬産地としては比較的古い地域である。そのせいか、各牧場の経営規模は比較的小さく、家族経営を主体した生産牧場がほとんどだ。経営面積も狭く、しかも、道路や河川、山林などに分断されている土地が多いので、なかなかまとまった面積の土地を入手することが難しい地域だと見なされている。

 一方の日高西部(新冠や門別など)は、東部と異なり、このところかなり「牧場再編」が進行したと言われている。何人かのオーナーブリーダーが、積極的に土地を求め、牧場開設や規模拡大に乗り出しているのである。老舗の生産牧場が身売りをして、ある日突然看板が新しいものに替えられる。そんな実例をずいぶん耳にした。

 しかし、その流れからどうも日高東部(敢えて言えば三石以東)は、取り残されているようだ。10年前に開場したBTC(軽種馬育成調教センター)の周辺だけはかなり大きな変貌を遂げたものの、他はまったく変わっていない。

 時代の波に取り残されていることが果たして「吉」と出るか、「凶」と出るのか…。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング