▲直線一気でレースを制したレッドファルクス×デムーロ騎手、勝利のポイントとは? (撮影:下野雄規)
今週、取り上げるのは鮮やかな直線一気でスプリンターズSを制し、スプリンターズS連覇を成し遂げたレッドファルクス×M.デムーロ騎手のコンビ。今回のレースから哲三氏はデムーロ騎手のポジション取りをポイントに挙げ、その中でも「取りに行く姿勢」の重要性と後方から直線で差し切るための技術をメインに解説します。(構成:赤見千尋)
周囲を納得させる「ポジションを取りに行く姿勢」
今週はスプリンターズSに注目しました。1番人気に支持されたレッドファルクスが連覇を飾ったわけですが、その中で、ミルコ(・デムーロ騎手)のファインプレーが光っていました。直線で外に出して一気に伸びて来たことが目を引いたと思いますが、僕が感じたファインプレーはスタート直後。スプリント戦でも、例え前に行かない馬でも、スタートしてから“ポジションを取りに行く姿勢”が大事だと思います。
■10月1日スプリンターズS(GI) 結果的に位置取りは、ミルコ自身「ちょっと後ろになってしまったかな」とコメントしていましたが、最初からただ“後ろになってしまった”というわけではなく、『取りに行って』のもの。
その『取りに行く』ことがどう重要か。『取りに行った』結果、後ろのポジションになっても、“見た目は後ろでも攻めやすいポジション”になるんです。
スピードを出して行っているから、自分の道ができている。だから、そこに他の馬が入りそうになることもよく見えるし、例え入られたとしてもどっちに動くかというのが見えやすい。もともと力のある馬は、後から入っていける道を作りやすい、という傾向はありますが、今回スタートして位置を取ろうとしたミルコの姿勢が、その後に進む道に繋がったと思います。
では逆に、最初から『後ろから行く』と決めて騎乗していたらどうでしょうか? この場合、道中も勝負所でも前が壁になって、見えなくなってしまうことがあるんです。
『ポジションを取りに行ってから脚を溜める』のと、スタート直後から脚を溜めようと『出たなりのポジションで収まる』のとでは、一見『出たなりで脚を溜める』方が得に見えるかもしれません。でも、実はその『溜めている脚』ってちょっとしか使えないんですよね。
動きたいと思った時に瞬時に動くためには、最初から溜めているよりも、前方に回転をしっかりかけている方が一歩目の初動が速いんです。だから、前半600mくらいを連動性がついた走りで行くのか、スタートしてからスピードに乗せないで終いの脚に賭けるか、っていうのは、僕は前者の方がその馬の能力を最大限引き出す確率が高くなると思っています。
今、説明したのは、俗にいう『エンジンを吹かしながら進む』ということです。スローペースになることや、引っ掛かることが怖いと感じたら、この乗り方を選択するのは難しい。
でもミルコに関していえば、スピードを減速する時に馬の体幹が後ろに下がってしまうことがあんまりないんですよ。それの何が関係するのかというと、