◆大本命敗退の裏に前哨戦の奥深さ
思いがけない幸せ、僥倖(ぎょうこう)という言葉を思い起こさせる毎日王冠であり京都大賞典だった。
リアルスティールは、15年の三冠はドゥラメンテ、キタサンブラックにタイトルを持っていかれてて2、4、2着。しかし、強い世代であることは間違いなかったのだが、毎日王冠では今年のオークス馬の存在があまりにも大きかった。
ただ、終ったから言えるのだが、一頭牝馬、それも3歳馬というところに予知しにくい落とし穴があった。関西で以前使われていた競馬の言い習わしに“一頭牝馬は擦(こ)すりっこに弱い”というのがあった。牡馬に囲まれたたった一頭の牝馬は苦戦するというのだが、それでも6戦5勝のオークス馬は別と思ってしまった。テンションが高く、いいスタートを切って逃げている姿に、他の全ての牡馬たちの目標になってしまったというもどかしさを感じていた。
この戦況の中、中位につけていたリアルスティールに訪れた僥倖、持ち前の切れ味を発揮できる絶好のチャンスだった。まさかあんな場面になるとは、競馬の中に潜むメンタルな面の大きさを思い知らされた。この先、昨秋2着だった天皇賞なのか、ブリーダーズカップマイルなのか。ドバイターフを勝っているのだからと、ちょっと心が動く。
京都大賞典は、ベテラン牝馬が勝った。これはもう、武豊騎手の判断が光っていた。ここにもシュヴァルグランと大本命がいたのだが、例年以上に出走頭数が多く、前半に遅れをとって後半の位置取りとなり、ジリジリ上がっていっては一旦ためてと、消極的になってしまった。大敗しないタイプだが、いつももうひとつという印象で、これだけ出走してきたところに不確実さが潜んでいた。
一方の勝ったスマートレイアーは、開幕週の内のいいところを突こうと思いを定め、道中はためてチャンスを待ったところに僥倖が訪れたのだった。エリザベス女王杯を最大の目標に、新たな自信をつけたのは大きい。秋華賞をわずか4戦のキャリアで2着したのが4年前、本当に大事に使われてきた。同世代のライバルの大半が引退した中、現役の幕引きがどうなるか楽しみになった。
それにしても、前哨戦は奥が深い。