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【ユーイチの視点】京都大賞典&南部杯回顧『ユタカさんの我慢勝ち 7歳牝馬スマートレイアーの鮮やかな勝利』

  • 2017年10月13日(金) 18時01分
祐言実行

▲「ユタカさんの我慢勝ち」スマートレイアーの京都大賞典勝利を振り返る (C)netkeiba.com


今回のような極端な競馬が合うのかもしれない


 京都大賞典は、7歳牝馬スマートレイアーの鮮やかな勝利。ユタカさんの腹をくくった騎乗も実に見応えがあった。

 確固たる逃げ馬が不在のなか、まっ先に飛び出して行ったラストインパクトに陣営の強い意志を感じた。いつもはスタートがもうひとつのミッキーロケット(3枠5番・4着)もうまく出たが、内の馬があまり速くなかったことで、右斜め前に少しヨレながらのスタートとなった。右隣に馬がいないことでそちらに流れてしまうことはよくあるケースだが、今回、それによってポジションが悪くなったのが、内にいたスマートレイアー(3枠4番)とシュヴァルグラン(2枠3番)。ユタカさんのコメントにもあったが、本来ならスローを見越して前目のポジションを狙っていたと思うし、少なくとも良いパターンではなかったはずだ。

 しかし、今回の舞台は開幕週の京都の外回り。スローペースのなか、後方から外を回していては絶対に届かない。誰よりもそういった傾向を熟知しているユタカさんだけに、腹をくくって内でひたすら脚をタメる競馬に切り替えたのだろう。結果、直線もそのまま最内を突き、前にいたヒットザターゲット(7着)が外目に進路を取ったことから、上手い具合に進路が開いた。このあたりは紙一重だが、結果的にはユタカさんの我慢勝ち。それにしてもスマートレイアーという馬は、7歳にして大した牝馬だ。いまだあんなに切れる脚が使えるということは、ひょっとしたら今回のような極端な競馬が合うのかもしれないとさえ感じた。

 スマートレイアーについては、4番人気という立ち位置も、ユタカさんが腹をくくれた一因だったと想像するが、一方でそうはいかなかったのが1番人気シュヴァルグラン。もともとスタートが速い馬ではないが、今回はミッキーロケットに寄られたこともあって、さらにポジションが悪くなってしまった。

 あのペースのなか1番人気を背負い、最後方の内でジッと我慢…という競馬は、正直、自分に置き換えても選択しづらい。道中動かざるを得なかった心情はわかるし、それで届かなかったのは結果論。むしろ、あの競馬でコンマ1秒差3着という結果からは、「やはりあのメンバーのなかでは力が一枚上なのかな」という印象を受けた。

 いつもは後方からいくトーセンバジルが、好位の内を取り切って2着。スタートから意識的に押していったことから、最初からあのポジションを取る作戦だったのだろう。直線もスムーズに進路を取り、脚色も最後まで鈍っていなかった。自分の目には完璧な競馬に映ったし、おそらく岩田くんとしても思い描いた通りの競馬だったのではないか。

 2番人気のサウンズオブアースは13着。道中は動ける位置にいたが、シュヴァルグランが動いてきた時点でスッと反応できなかったし、その後バラけてからもあまり脚を使えなかった。騎乗したノリさんも、「敗因がハッキリしない」とコメント。ここまで大負けする馬ではないだけに、レース後、なにもアクシデントがなければいいが。

南部杯、自信を持って臨んだだけに残念な結果に


祐言実行

▲南部杯はコパノリッキーが連覇達成、来春からの種牡馬入りも発表(撮影:高橋正和)


 カフジテイクで臨んだ南部杯は4着。コパノリッキーが外枠を引いた時点で、これは大きなアドバンテージだなと思ったが、実際、年齢を感じさせない走りで4馬身差の圧勝。左回り1600mの外目からの競馬は、あの馬が一番パフォーマンスを発揮しやすい舞台で、今回も1頭だけ手応えが違った。

 2着のノボバカラは、若干距離が長いかなと思っていたが、展開を利して上手く脚をタメたジョッキーの好騎乗。3着キングズガードは終始抜群の手応えで、直線もロスなく外に持ち出してジワジワと伸びていたが、勝ち馬に肉薄するまでには至らなかった。そのキングズガードと、4コーナーで接触してしまったのが6着のベストウォーリア。力のある馬だけに、ちょっと可哀想な競馬になってしまった。

 カフジテイクは、だいぶトモの入りが良くなっていて、スタートも上手に出てくれた。それほど促がさずともコパノリッキーの後ろのポジションを取れ、道中は「これはいい形になったな」と思っていた。いつもコーナーで置かれる面があるが、今回は砂を被らずにいけていたから、これならコーナーも楽について回れるのでは…と期待していたのだが、やはりいつも通りというべきか、3コーナーから手応えが悪くなり、その隙に外からきたキングズガードに前に入られてしまった。3コーナー手前からもっとバシッと気合いを付けて、コパノリッキーに食らい付いていけば…。このあたりは少し悔やまれる。

 直線はジリジリと伸びたが、前も止まらず。好位で競馬をしたぶん、いつもほどの脚を使えないのは当然だが、それにしてももうちょっと使えるかなと思っていた。仮に、いつも通りに後方で脚をタメたとしても、あの流れでは到底差し届かない。まだ敗因を精査しているところだが、自信を持って臨んだ一戦だけに、残念な結果となってしまった。

祐言実行

▲「コパノリッキーに食らい付いていけば…このあたりは少し悔やまれる」と福永騎手 (C)netkeiba.com


(文中敬称略)


『YU-ICHI ROOM』
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祐言実行とは
2013年にJRA賞最多勝利騎手に輝き、日本競馬界を牽引する福永祐一。まだまだ戦の途中ではあるが、有言実行を体現してきた彼には語り継ぐべきことがある。ジョッキー目線のレース回顧『ユーイチの眼』や『今月の喜怒哀楽』『ユーザー質問』など、盛りだくさんの内容をお届け。

1976年12月9日、滋賀県生まれ。1996年に北橋修二厩舎からデビュー。初日に2連勝を飾り、JRA賞最多勝利新人騎手に輝く。1999年、プリモディーネの桜花賞でGI初勝利。2005年、シーザリオで日米オークス優勝。2013年、JRA賞最多勝利騎手、最多賞金獲得騎手、初代MVJを獲得。2014年のドバイDFをジャスタウェイで優勝。

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