▲紫苑Sから秋華賞を制覇したディアドラ (C)netkeiba.com
騎乗したミリッサは8着、能力的にあそこまで負ける馬ではない
レース創設以来、初の重馬場施行となった秋華賞。確かに巧拙を問われる柔らかめの馬場ではあったが、時計がそこまで掛かっていなかったように(勝ちタイムは2.00.2)、重馬場巧者でなければ走れないほどの極端な道悪ではなかった。
勝ったディアドラは、夏場から始動するタフなローテーションに耐え切っての3連勝。調教できっちり時計を出しつつ馬体を増やし、最後にはGIのタイトルをもぎ取ってしまうのだから本当にタフな馬だ。
秋華賞の競馬自体もタフな流れとなった。一番のポイントは、やはり3〜4コーナーのクリストフの進路取り。理想はリスグラシューの後ろから進んで行きたかったのではないかと思うが、あいだに皇成のポールヴァンドル(9着)がいて、それは叶わず。3〜4コーナーでペースが上がったところでやや馬群がバラけ、内にスペースができたと見るやいなや、すぐさま内に潜り込んだ。
4コーナーを回る時点でクリストフの前にいたのが和田のラビットラン。ラビットランが進路を作ると読んで内に誘導したのかもしれないが、これはおそらくひとつの賭けであり、決して内からさばいていけると確信があったわけではないと思われる。実際はラビットランの手応えが悪くなり、進路をやや外目に切り替えることに。そこで左隣にいたファンディーナが一瞬外に流れたのだが、クリストフはその一瞬の隙を逃さなかった。もちろん手応えもあったのだろうが、わずかにできた進路を取り切り、少しも減速させるところなく外に誘導。そこから前を行く馬たちをまとめて差し切った。
周りの手応えを見ながら誘導していったのだろうが、もしファンディーナの動きまで読み切っていたんだとしたら恐ろしい限り。ただ、そこさえも読み切っていたのではないかと思わせる説得力が、今のクリストフにはある。「これで詰まったら仕方がない」と腹をくくったのかもしれないが、同業者として正直、今回の騎乗には唸らされた。攻めたジョッキーとそれに応えた馬。本当に見事な勝利だった。