“社台ブランド”の凄まじいブランド力
すっきりと晴れ渡った小春日和の10月25日(水)、(株)ジェイエス主催による繁殖馬セールが開催された。国内では唯一の繁殖馬セールであり、春以来、各地で開催されたセリ結果がひじょうに好調に推移したこともあって、北海道市場には新たな繁殖牝馬を求める多くの関係者が集まり、名簿を片手に待機馬房を訪れ目当ての馬を熱心にチェックする姿が見られた。
セリ前のチェック風景(社台ファーム上場馬)
開場は午前7時半。3時間を下見に充て、セリ開始は午前10時半である。今年、最も上場頭数の多かったのは、社台ファームと、社台ブラッドメアで、名簿上ではそれぞれ27頭と26頭に達していた。また、社台コーポレーションからも10頭が、そしてノーザンファームが6頭、ノーザンレーシングが7頭と、ここまでで合計76頭になり、全体の3分の1を超える頭数である。また、日高の大手牧場からも数多くの上場馬が集まり、最終的には208頭がセリにかけられて、157頭が落札された。受胎馬が166頭中131頭の落札で78.92%、不受胎馬、未供用馬が42頭中26頭の落札で、61.90%、両方合わせると、75.48%の売却率となる。
総売り上げは、このセール初の10億円を突破し、10億7132万7600円。平均価格は、682万3743円であった。
因みに昨年の数字と比較すると、上場頭数は+1、落札頭数は-9、売却率は4.71%下落したものの、総額では2億9109万2400円上回り、平均価格も、212万3531円上昇した。
価格の落差が例年にも増して大きかったのが今年の繁殖馬セールの特徴で、最高価格馬は5000万円(税込5400万円)に達した。その反面、50万円以下の低価格の落札馬も数頭出て、価格のばらつきが目についた。
なお、最高価格馬は、受胎馬ではなく、未供用の123番「アドマイヤシャイ」5歳黒鹿毛馬であった。父キンシャサノキセキ、母ブロードアピールという血統で、22戦4勝(姫路特別、鳥取特別)、2着3回、獲得賞金6090万円という成績を残している馬だ。
最高価格馬、123番「アドマイヤシャイ」の落札場面
最高価格馬、123番「アドマイヤシャイ」の立ち写真
競り合いはお互い譲らずに5000万円にまで高騰し、(有)ケイアイファームが落札した。販売申込者は、オーナーの近藤利一氏。飼養管理者はノーザンファームである。
続いて高額だったのは187番「エアマチュール」、6歳青鹿毛馬の4100万円(税込4428万円)。今年ノヴェリストの牝馬を出産し、現在、ルーラーシップを受胎している。最終種付け日は5月24日(出産予定日は4月24日)。父ディープインパクト、母エアジャメヴー、母の父シンボリクリスエスという血統で、自身も中央2勝、2着2回、3着1回、獲得賞金1991万円という実績を持つ。まだ若く、しかもディープインパクト譲りのボディラインの美しい馬で、人気が集中した。販売申込者は社台ファーム、落札者は田畑利彦氏。
187番「エアマチュール」の落札場面
187番「エアマチュール」の立ち写真
3番目に高額だったのは、45番「ゼロメリディアン」未供用の3歳馬黒鹿毛馬で、父ディープインパクト、母ザズー、母の父Tapitという血統。母のザズーは北米のGI馬で、本馬は初仔である。成績は6戦未勝利ながら、母系の良さと年齢、将来性などが高く評価され、活発な競り合いが展開した。販売申込者は(有)ノーザンレーシング、落札者は草間庸文氏。
45番「ゼロメリディアン」の落札場面
45番「ゼロメリディアン」の立ち写真
最高価格馬アドマイヤシャイはオーナーが販売申込者だが、飼養管理はノーザンファームであり、ベスト3の他の2頭も、上記の通り、社台ファーム、(有)ノーザンレーシングからの上場馬で、ここでもブランド力を如何なく発揮した形である。
ちなみに、社台ファームは1頭欠場して26頭の上場で、25頭が落札された。また社台ブラッドメアも、26頭中25頭を売却した。また社台コーポレーションは10頭全馬を完売、ノーザンファームは6頭全馬完売、ノーザンレーシングは7頭中6頭を売却し、実に75頭中72頭落札という驚異的な成績であった。
また、ざっと見渡したところ、税込2000万円以上の取引馬13頭のうち、10頭がこれら“社台ブランド”からの上場馬である。ちょうど、セレクトセールの「繁殖馬版」とも言うべき、凄まじいブランド力を改めて見せつけられたような気がする。
これら5社(社台ファーム、社台ブラッドメア、社台コーポレーション、ノーザンファーム、ノーザンレーシング)の売却分を差し引くと、133頭上場で85頭の落札、売却率は63%になる。総額と平均価格までは計算していないが、価格もまたかなり下がることになるだろう。
なお、次の繁殖馬セールは年が明けた1月下旬の開催が予定されている。