▲オーナー×ジョッキーの異色対談の第2回、「オーナーがジョッキーに求めること」とは
「自分の馬を持ちたい」と初めて意識したのが5歳というタバートさん。それからは母国オーストラリアでそして日本で、レースを見る力を養ってきました。だからこそ「自分の感覚」を信じ、騎手にも自信を持って意見ははっきり言うといいます。大事な馬を託すオーナーだからこそ、ジョッキーに求めることがある。オーナーとジョッキーの“競馬”をめぐる真剣勝負のお話です。(取材・構成:不破由妃子)
(前回のつづき)
日本で競馬をやっている誰よりも数多くのレースを見ている自負がある
佑介 馬主になるのは子供の頃からの夢だったそうですね。
タバート うん。僕が5歳くらいのころ、オーストラリアにキングストンタウンていう馬がいてね。ウィンクスと同じくコックスプレートを3連覇した馬なんだけど、その馬がすごく好きで、「キングストンタウンが自分の馬だったらいいなぁ」と思ったのが始まり。
佑介 5歳で(笑)。身近に馬を持っている方がいたんですか?
タバート 父親は普通に馬券好きの競馬ファンだったんだけど、母方の祖父がドッグレースの犬の調教師をやっていてね。そこで成功して、最終的に大きな牧場の雇われ牧場長になった。そこにはけっこう種牡馬もいたりして、夏休みはいつもその牧場に行ってたよ。だから、父親を通じて競馬のギャンブルとしての楽しさを知り、母方の祖父を通じて馬の魅力を知るみたいな。そんな環境で育ってきた。
佑介 ある意味、競馬エリートですね。
タバート そうかもね。週末は必ずみんなで競馬を観ていたしね。もう時効だと思うけど……馬券もかなり若いときから買ってた(笑)。
佑介 そうなんですね。僕も子供の頃から馬は身近な存在だったけど、父親が関係者だったこともあって、ギャンブルという感覚はまったくなかったなぁ。
タバート 僕の場合、身近な存在といっても夏休みにちょっと餌をあげるくらいで、触って可愛がったりとか、そういうのはあまりなかった。だから、今でも馬が隣にくるとビビるくらい(笑)。佑介のように馬と育ったというよりも、競馬で育ったっていう感じだね。
佑介 生粋の競馬好きということですね(笑)。
タバート そうそう。だから、騎手に対してはいろいろ思うところがあったりして。僕はね、日本で競馬をやっている誰よりも数多くのレースを見ている自負があるから。だって、5歳からずっとだからね。おそらく佑介が信じられないくらいの数を見ているよ。これだけの数を見ていると、たとえレースに乗ったことはなくても、「なんか今の騎乗は違和感があるな」とか、「これは巧いな」とか、そういう自分の感覚には説得力があると思ってる。もちろん騎手にしかわからない部分もあると思うけど、客観的な目線としては、自信を持って意見できるというか。