
今回はオーストラリアでの思い出を語ってくださいました
現在、小崎綾也騎手と坂井瑠星騎手がオーストラリアに長期遠征中ですが、今からさかのぼること十数年前、JRAに移籍前の小牧騎手も、短いあいだではありましたが、オーストラリアで腕を競ったことがありました。小牧騎手いわく、現地の競馬は、なかなか強烈だったようで…。ユーザーからの「オーストラリアの思い出を聞かせてください」というリクエストに対し、当時の思い出をたっぷり語ってくれました。
(取材・文/不破由妃子)
海外で乗りたくてたまらん時期もあった
──今回は、小牧さんの懐かしい記憶がよみがえりそうなこんな質問を。「現在、小崎騎手と坂井騎手が長期でオーストラリアに遠征していますが、たしか小牧騎手も行かれたことがありますよね? もしよかったら、オーストラリア遠征の思い出を聞かせてください」。
小牧 前にもちょっと話したことがあるかもしれんけど…、正直「もう二度とここでは乗りたくない!」と思った(苦笑)。
──かなりタフな…というか、ラフな競馬だったとおっしゃっていましたね。
小牧 うん。あ、今はどうかわからんよ。僕が行ったのは、かれこれ15年以上前やから、あくまで当時の話やで。
──先に赤木(高太郎元騎手・現調教助手)さんが行ってらしたんですよね。
小牧 そうそう。赤木くんは当時、かなり長期にわたってオーストラリアに遠征していたから、赤木くんがいるあいだに僕らも行ってみようということになってね。それで、僕と平松(徳彦元騎手・現調教師)さんで1週間ほど行ったんです。なんせ、仕事以前にオーストラリアに行ってみたかったから(笑)。
──たしか、現地で3人が同じレースに騎乗した…というニュースを見た覚えがあります。珍しいことですものね。
小牧 そうやね。早くから段取りをしていたから、行ってすぐにゴールドコーストで3、4レースに乗せてもらえてね。でも、ゴールドコーストは二流のジョッキーが集まっている競馬場で、みんな上を目指して必死なもんやから、とにかくレースが激しいんですわ。もうインばかりを狙ってきて、平気で内をこじ開けてくるし、本当に危なかった。僕も外から切り込んでみたりしていろいろやってみたんやけど、ポッときた日本人だからナメられたのか、文句ばっかり言われてね。まぁ言葉がわからない僕にしてみれば何のこっちゃわからんから、いくら文句を言われても平気やったけど(笑)。僕も若い頃は、海外で乗りたくてたまらん時期もあったけど、オーストラリアで乗って以来、海外はもういいかなって(苦笑)。
──それはもう、立派なトラウマですね(苦笑)。
小牧 さっきも言ったけど、あくまで僕が行った時代の話やで。当時は競馬もまるで違えば、馬の作りからしてまったく違ったからね。今はどうかわからんけど、とにかく引っ張って引っ張って乗る感じやったなぁ。口の硬いカリカリした馬が多くて、引っ張って乗らんかったら調教でも怒られた記憶がある。なんや全然いい思い出話ができんかったけど(笑)、オーストラリア自体は、ものすごくいいところ。遊びなら何度でも行きたいわ。
──でも、日本とは違った競馬を体感するのも大事な経験ですよね。
小牧 若いうちにたくさん経験するのはいいことやから、興味があるならどんどん行ったほうがいいと思う。僕も昔、曾和先生に「海外に行きたい!」って本気で直談判したことがあったなぁ。
──先ほど、「海外で乗りたいと思っていた時期があった」とおっしゃってましたものね。
小牧 うん、本気で行こうと思ってた。もうずっと昔の話やけど、アメリカのダート競馬を経験してみたくてね。でも結局、曾和先生に諭されてあきらめたけど。僕はもう今さら行きたいとは思わんけど、「行ってみたい!」と思う若い子たちの気持ちはようわかる。
──続いては、微笑ましいというかなんというか、こんな質問なんですが…。「小牧騎手とお友達になりたいのですが、どうしたらいいでしょうか? 決して茶化しているわけではなく、僕は本気です。よろしくお願いします!」。文面から必死さが伝わってきたので、つい取り上げてしまいました。
小牧 答えようがないわなぁ…、しかも“僕”やし(笑)。

答えようがないわなぁ…、しかも“僕”やし(笑)
──ですよねぇ。でも、「小牧さんと友達になりたい」というメッセージは、けっこうくるんですよ。
小牧 僕と話したこともないのになんで(笑)? まぁ飲み屋で偶然会うようなことがあれば、すぐに友達になっちゃうけどね。