▲俳優・東出昌大さんをゲストにお招きしての対談もいよいよ最終回
演技と騎乗を通じて、“プロの仕事”についてそれぞれの考えをぶつけあってきた対談も今回が最終回。ラストテーマは「緊張感」。大舞台に立つときに、緊張感は持った方がいいのか、ない方がいいのか? そもそも、緊張感の正体とは? 最後まで目の離せないトークをお楽しみください。(構成:不破由妃子)
(前回のつづき)
競馬はリアリティーのあるドラマ、とにかく週末が楽しみです
東出 先ほど準備万端でレースに向かうとおっしゃってましたが、福永さんほどのキャリアの方が準備を整えたとしても、やはり大舞台の前は緊張するものですか?
福永 いや、そんなことはない。経験が浅い頃は、緊張感に呑まれたりしたこともあったけどね。そもそも、大舞台で1番人気になるような馬に乗りたくてこの世界に入ってきたのに、いざそういう立場になったときに、プレッシャーに押しつぶされそうになるのは何か違うなって。だって、それこそが自分が望んでいた状況だからね。あとは、長くやっていると、緊張を抑えることはある程度できるようになるんだけど、逆に緊張感を自分で生み出すことのほうが難しくなる。
東出 なるほど。そういうものなんですね。
福永 うん。平場のレースと1番人気に騎乗するGIで、同じ緊張感を持てるかといったら…、正直、難しいからね。それに、ひとつの仕事を長く続けているとどうしても慣れが出てきてしまうから、今は逆に、胸がザワつくような緊張感が湧き上がってくると「あっ、きたきた!」みたいな感じで楽しめるようになった。
▲福永「今は胸がザワつくような緊張感が湧き上がってくると、楽しめるようになった」
東出 羨ましい限りです。準備をしてこなかったことで緊張してしまうのはわかるんですけど、僕の場合、準備をしてきたぶん、緊張してしまうというか。役者になって6年になりますけど、まだ「このプレッシャーに打ち勝つには、どうしたらいんだろう…」って悩んだりしている途上です。そういった葛藤も、だいぶ楽しくなってきましたけどね。