荒武者ダブルシャープ 中央入り/吉田竜作マル秘週報
◆既存の勢力図を塗り替える可能性も秘める
予想の的中率の低さを指摘された際は、決まって「私は皆さんが予想をするための材料を提供するのが仕事であって、予想をする楽しみを奪うわけにはいきません」と返すようにしている。
冗談めかして、言い訳をしているだけなのだが、当たらずとも遠からず? 皆さんの背中を押してあげられるような有益な情報を伝えることこそが“本分”…と偉そうなことを言っておきながら、早々に自身の体たらくを白状しなければならない。
クローバー賞の勝ち馬で、札幌2歳Sでも3着に入った道営・米川昇キュウ舎のダブルシャープ(牡)が、栗東の渡辺キュウ舎に転入していた事実を全く知らなかったのだ。
「先々週から、こちらで乗りだしました」と渡辺調教師が言うので調べてみたら、19日に坂路を駆け上がっている記録が残っているではないか。ちなみに記者が存在を確認したのは23日のゲート試験合格馬をチェックしていた時のこと。予想するうえでいい材料を…という以前に、こうしたニュースを少しでも早くお伝えしなければ、と大いに反省した次第だ。
その代わりといってはなんだが、渡辺調教師にダブルシャープの話をたっぷりうかがってきた。
「前のオーナーさん(小林克己氏)はセイクリットファームを運営されている方で、僕もお世話になっているのですが、中央競馬の馬主資格を持っていないそうで。(中央の資格を持つオーナーに)トレードして、ウチに来ることになったんです。中央参戦の時はパドックでの発汗がすごかったので、うるさい馬なのかなと思っていましたけど、こちらに来てからはそれほどでもなくて安心しました。
レースぶりもまだ粗削りに見えましたが、やはり芝でこその馬とは感じますね。ゲート(試験)も受かりましたし、このままキュウ舎で調整して、朝日杯FS(12月17日=阪神芝外1600メートル)へ向かう予定です」
トレーナーも指摘していたように、過去の中央での3走は、中央で育ってきた2歳馬とは少し異なる雰囲気で、その荒っぽい走りはまさに“荒武者”といった感。この素材型が渡辺キュウ舎の“チューニング”でどう変わっていくのか。進化を遂げれば、既存の勢力図を塗り替える可能性も秘める非常に楽しみな存在だ。
朝日杯FSの話題が出たついでに、その他の有力馬の情報もお伝えすると、未勝利戦→もみじSと連勝中のダノンスマッシュ(牡・安田隆)も放牧から帰って、大一番への準備を始めている。
「まだ緩さを残した段階なのに、一戦ごとに課題をクリアして、レースぶりが良くなっている。(ロード)カナロアの子の評判としてよく耳にしますが、この馬も物覚えが早く、非常に頭がいいんですよ」と安田助手の評価は一貫して高い。
父ロードカナロアと2代にわたって担当している岩本助手も「うん、いい感じで帰ってこれた。もう追い切りもしているし、順調だよ。相手は(新馬戦→サウジアラビアRCと連勝中の)ダノンプレミアム?(クローバー賞2着後、ききょうS→京王杯2歳Sを連勝中の)タワーオブロンドン? どれも強いけど、やっぱり勝ちたいよな」と、早くも決戦が待ちきれないといった口ぶりだ。
GIに昇格したホープフルS(12月28日=中山芝内2000メートル)に“持っていかれる”ことが心配された旧来の2歳王者決定戦だが、“荒武者”ダブルシャープほか、続々と好素材が名乗りを上げており、レースレベルの低下を心配する必要はもはやなし。これまで通りの存在感を示せそう。岩本助手ではないが、記者も朝日杯FSが今から待ち遠しい。