▲競走馬時代のキクノスパンカー(提供:Nさん)
移籍先の荒尾まで駆けつけ「絶対に迎えに来るからね」
キクノスパンカーへの思いは募る一方だったNさんは、何とか馬に直接会うことはできないかと考えた。思い切って生産牧場と連絡を取り、会いたい旨を熱心に伝えた、その気持ちが通じたのか、スパンカーが札幌競馬に出走の日に生産者は家族で札幌競馬場に観戦に訪れ、レースが終わった後に厩舎地区へとNさんを誘ってくれた。念願叶って、Nさんはスパンカーと対面する。1995年7月30日のことだった。
「顔に流星があるんだと、その時に知りました」
札幌競馬場からスパンカーが栗東へと戻る前日、もう会えないかもしれないと考えただけでいてもたってもいられず、Nさんはまた札幌競馬場へと足を運んでいた。その時に厩務員に、スパンカーが引退したら引き取りたい旨を伝えた。厩務員は突然の申し出に驚きながらも、馬のもとへと案内してくれた。
厩務員がその場を離れた際、スパンカーとNさんは向かい合って、1人と1頭の時間を過ごした。Nさんはスパンカーにいろいろと話しかけた。スパンカーはお尻を向けることもなく、ずっと顔を出してNさんの話を黙って聞いていた。
「引き取りたいと厩務員さんには言ったものの、オーナーもいることだし、本当にそうできるのかどうか。揺れている自分もいたんです。
そんな中、もう帰っちゃうんだ。栗東に行っても会いに行くよ、会ってくれるかな?と独り言みたいに言っていたんですよね。すると別の厩舎の人が、