2018年3月に新規開業する調教師の中に、どうにも気になる新人トレーナーがいる。JRA史上初、開成高校・東京大学出身の調教師が誕生するのだ。その名も“りんてつ”こと林徹調教師。「スゴすぎる経歴」と「異色なキャラ」を併せ持つと噂のりんてつ調教師、その素顔を暴くべく、東大の先輩・須田鷹雄氏が立ちあがった!! (文:編集部)
矢作調教師の“凄み”を目撃
須田 前回が小難しい話になってしまったので、最後は林厩舎の具体像を探っていきたいなと思います。目標とか夢とか理想とか、70歳までにこれができたら気持ちよく死ねます、みたいなものはありますか?
林 合格した時は「ダービーを勝ちたい」って言ったんですけど、大レースに勝ちたいのはもちろんですけど、大レースを勝ったときにみんなで泣いて喜びたいです。チームとしての信頼関係がなかったら、そこまでならないじゃないですか。そうやってみんなで泣いて喜べたら、すごく幸せなことだなと思います。
須田 確かに。ただ、スタート地点ではもっと無茶な野望を持ったほうがいいのかもしれないですよ。いずれ現実は見るので(笑)。
林 そういう意味で言ったら、中学高校大学と、競馬と関係のない友達もたくさんいるじゃないですか。自分がダービーを走らせることがあったら、「林、ダービー走らせるってよ」って、みんなが知ってくれるぐらい競馬が人気になってくれたらうれしいです。あんまり面白いこと言えなくてすみません。
須田 林先生が助手としてどういう仕事をやってきたか見てきたわけじゃないけど、馬に関わるスキルでほかの調教師に勝つのって難しいと思うんです。われわれ大学の馬術部に一般入試で入った人間が、ずっと馬に乗ってきた人に勝つのはその時点で無理だし、さらに助手時代から馬乗りが上手いって話題になるような存在じゃなければ、今度はどのようにしてアドバンテージを作っていくかっていうことが課題になりますよね。
▲「馬に関わるスキル以外で、どのようにしてアドバンテージを作っていくかが課題」
林 中小企業の親分になるわけで、誰かに勝ちたいというよりも自分が何をしたいかを考えていたいです。誰かに負けたくないってなると、絶対に従業員がおざなりになってしまうと思うんです。自分は体重的な問題があったので、いつも汗取りしてたんです。その時に何をしてたかというと、ブックオフで古本を買いだめして読むという。経済、マネージメント、リーダーシップ。先輩がおっしゃられた一般社会の常識みたいなところで、何かアドバンテージになればいいなというのは思いますね。