▲セントポーリア賞(1月28日、東京芝1800m)を勝利した道営所属のハッピーグリン(撮影:下野雄規)
地方・ホッカイドウ競馬のハッピーグリンが1月28日、セントポーリア賞(500万下、東京芝1800m)を勝利した。クラシックへの機運が高まるこの時期、3年前にはドゥラメンテが勝利したレースへ、輸送費60万円(往復)を負担して上京を決意した。その覚悟に裏打ちされるように、高い芝適性とJRA馬に引けを取らない末脚でスローな流れを差し切って見せた。
今週末、フェブラリーSには地方・大井からララベルが出走予定で、地方馬のJRA挑戦に注目が集まる。ハッピーグリンを管理する田中淳司調教師もある思いを持ってJRAに遠征を続けているという。ハッピーグリンもすでにクラシック登録を済ませ、GI挑戦を視野に入れている。次走スプリングS(GII、3月18日、中山芝1800m)に向け、意気込みを聞いた。(取材・文:大恵陽子)
ハッピースプリントの育ての親
前半1000m63秒1のゆったりしたペースを、ハッピーグリンは外から差し切った。
府中のゴールを先頭で駆け抜けた瞬間から田中淳司調教師の携帯電話は鳴りやまなかった。LINEやメールなど約150件の祝福メッセージが届き、帰りの飛行機に乗るまで喜びのメッセージを返していたという。
JRA勝利は地方競馬の関係者にとってそれだけ大きいことだ。しかし、3歳春での勝利はそれ以上の意味を持っているように思う。
「僕たちは2歳戦を中心にやっていて、オフシーズンの今は、強い馬はJRAや南関東に移籍していきますし、残っている馬でも春の開幕から使い始める馬がほとんどですね」 ホッカイドウ競馬は11月上旬から4月中旬まで約5カ月、厳しい寒さに伴いレースは休みになる。オフシーズンの前後になると他地区への移籍馬が多くなってくる。
特に2歳戦に力を入れているホッカイドウ競馬は、4月中旬のシーズン開幕と同時に新馬戦をスタートさせ、レースでの走りなどから素質を認められた若駒たちは、新天地でのさらなる活躍を期待され、飛び立っていく。2歳時に田中厩舎からデビューし、大井に移籍後、浦和記念を制覇したハッピースプリントもまたそうだった。
▲2013年の全日本2歳優駿を制したハッピースプリント(撮影:高橋正和)
そういった流れが主流の中、ハッピーグリンは門別競馬場で3歳を迎えた。
「この馬はオーナーの考えがあってなんです。道営から日本の天下を取りにいった馬がいなかったのですが、『これだけの施設があるし』と、北海道から目指すことになりました」 門別競馬場には屋根付きの坂路(ウッドチップ)がある。オフシーズンの間、地元でレースには出られなくても、調教はできた。