成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案が閣議決定された。
政府は2022年4月の施行を目指している。1876(明治9)年からつづいてきた「成人」の定義が、実に146年ぶりに変更されるわけだ。
このニュースを見たとき、馬券を買える競馬ファンも今より2世代増えるのかと思ったが、競馬を含む公営ギャンブルは、飲酒、喫煙と同様、20歳未満禁止を維持するという。
それはいいとして、4年後、2022年4月以降に18歳になる人が成人になるということは、つまり、そのとき高校3年になる世代ということか。今の中学2年生だ。将棋の藤井聡太六段より1学年下である。
藤井六段の学年と、そのひとつ上、今の高校1年生は、2022年4月以降にそれぞれ19歳、20歳になる。そのとき今の中2だけが成人して、年上の中3と高1の世代が未成年のままというわけにはいかないだろうから、彼らは、2022年4月になると同時に成人になるのか。
ということは、翌23年には3世代の成人式が一斉に行われるわけだ。
馬券購入可能年齢の話に戻るが、3月14日付の読売新聞朝刊に<飲酒や喫煙は開始年齢が早いほど健康への悪影響が増すほか、公営ギャンブルについても「非行への引き金になる」と不安視する声が保護者や教師ら学校関係者から相次いだ>とある。それはそうだろう。改正後は、誕生日を迎えた高校3年生がドンドン新成人になっていく。甲子園球児が試合中に競馬の結果を気にしている……という状況は、普通の大人なら「けしからん」と言うに違いない。
その記事には、<農水省競馬監督課の担当者は「依存症などリスクを判断するための教育が不十分。青少年保護を第一に考えた>ともある。 しかし、20歳になるまでの2年で、そうした教育がなされるだろうか。少なくとも私はそういう機会を得られなかったし、誰かに与えたこともない。
彼らの倍以上生きている大人として、私が何かを教えることができるとしたら、失敗して怒られたり厭味を言われたりしながら稼いだ金を、数分後に数倍、数十倍にもなればゼロになることもあるギャンブルに注ぎ込み、痛みと喜びを味わってもらうしかない。そうして「カネ」に対する自分なりの「構え」と考え方を持つことも、「大人になる」ことのひとつだと思う。
彼らがギャンブルを実践していれば、そうした時期に読むといい、菊池寛や寺山修司、ディック・フランシスなどの本を薦めることもできる。国民的大作家で、馬主でもあった吉川英治の作品も、競馬をしたことある人とそうでない人とではまったく違った受けとめ方ができるのだが、そうした話もできる。
まるで、「18歳になったら馬券を買いなさい」と言っているかのようだが、そうではない。ただ、若いうちに競馬をたしなめば、そうした人だけの豊かな知的好奇心の満たし方を楽しむこともできる、というだけだ。
さて、本稿と同じタイミングでアップされていた「根多のデットーリ」を書いていた柏手重宝さんが逝去したという報せを受け、驚いた。
惜しい才能を失った。
私淑する伊集院静氏の受け売りだが、いい人ほど早く逝くのは、天国がいいところだからだ。
柏手さん、安らかにお眠りください。