今週土曜日、2回東京開催初日の4月21日に、東京競馬場内のJRA競馬博物館がリニューアルオープンする。
1991年秋の開館以来、これほど大規模な改装が行われたのは初めてだという。
4月21日(土)に館内全面リニューアルオープンする東京競馬場内のJRA競馬博物館。外観は以前のまま。
リニューアルの目玉と言うべきアトラクションは3つ。
ひとつは、1階エントランスから入って左手奥に新設されたライヴシアター「Thoroughbred」だ。
正面と両側面、底面の4面スクリーンと、5.1chサラウンドによる、臨場感たっぷりの立体映像と音声を体感できる。上映されるのは、馬についてわかりやすく説明する「サラブレッド・ラボ」と、サラブレッドが競走馬になるまでを描いた「競走馬への道〜栄光を目指して〜」、マカヒキが制した2016年の日本ダービーのレースシーンをさまざまな角度から見せる「“競馬の祭典”日本ダービー」の3作品。
1階に新設されたライヴシアター「Thoroughbred」。2016年の第83回日本ダービーの映像。
これらの映像を見れば、初めて競馬場に来た小さな子どもも大人も、馬とはどういう生き物で、競馬場で何が行われているかを知ることができる。
スペースに限りがあり、定員は7名と少ないが、座って順番を待つスペースもちゃんと用意されている。
2つ目は、ライヴシアターの隣につくられた「なりきりジョッキー」。
8つの勝負服から好きなものを選び、自分の顔をカメラで認識させる。そうすると、自分がジョッキーになってレースに出る動画を見ることができる、というアトラクションだ。
「なりきりジョッキー」。右の機械に描かれた騎手の顔の空白部分に自分の顔を認識させてハメ込む。レースの動画は左の大きなモニターに映し出される。
筆者は4頭立てのレースで4着。騎手が自分の顔になった写真を記念に撮ることができる。
上の写真の騎手は「誰だこいつ?」という感じがするが、筆者である。カメラに認識させるとき、顔の近さや角度を工夫すれば、もう少しマシに合成できたと思われる。子ども向けのアトラクションだが、年齢を問わず、かなりの人気になりそうだ。
そして3つ目は、2階に新設された「東京競馬場歴史絵巻」。
東京競馬場は、1907年、目黒に開設されてから111年。1933年、府中に移転してからは85年という歴史を持つ。そんな東京競馬場や、日本の近代競馬発展の歴史を、150枚以上の写真付きエピソードから、タッチスクリーンで選んで見ることができる。
2階につくられた「東京競馬場歴史絵巻」。手前のモニターにタッチし、正面の大型スクリーンに詳細を映し出す。
さらに、2階に上がってすぐのスペースに、ウオッカやディープインパクトの大型パネルの前で撮影できる「Photoスポット」もつくられた。自分なりに「インスタ映え」するアングルを見つけて楽しむことができそうだ。
2階の階段上ロビーにできた「Photoスポット」。右手のロイヤルアスコット開催のパネルの前でも撮影できる。
私は以前から競馬博物館のなかをぶらぶらするのが好きだった。新たなアトラクションができたほか、壁も床も綺麗になったことが嬉しく、余計に長居したくなる。
今回のリニューアルは、ライヴシアターや「なりきりジョッキー」が新設されたことでわかるように、子どもたちに楽しんでもらいたい、という狙いがある。
JRA競馬博物館の岡野伊佐夫館長はこう話す。
「お子さんたちに、これらのアトラクションを楽しみながら、早くから馬や競馬の素晴らしさを知ってもらえると嬉しいですね」
昨秋、大きな反響を呼んだ企画展「前略ディープインパクト様 〜関係者からDEEPへの手紙〜」も岡野館長の企画だ。展示品を自由に撮影できるようにしたことにより、SNSで情報が拡散され、興味をそそられた多くの人が来場するという好循環を呼んだ。
今週土曜日のリニューアルオープンと同時にスタートする企画展「セントライト生誕80周年 小岩井農場の歴史」も楽しみだ。岡野館長は言う。
「日本が近代化するプロセスにおいて、殖産興業と競馬がつながっていたことを知るだけでも、競馬に対する理解が深まるはずです。お子さんを連れたお父さん、お母さんも、百年さかのぼったお洒落な競馬に思いを馳せて、さらに競馬に興味を持っていただければと思います」
リニューアルオープン記念として、4月21日は先着1000名、22日は2000名に、「アニメ馬物語」の可愛らしい紙袋と来館記念オリジナル「ビスコ」がプレゼントされる。
また、前述したセントライトと小岩井農場の企画展に関連し、4月28日(土)と29日(日)、5月5日(土)と6日(日)に、競馬博物館前の特設ブースにて、小岩井農場で生産されたアイスクリームやスイーツを販売するとのこと。
少し先の話になるが、今年10月6日から来年2月17日まで、特別展「メジロ牧場の歴史〜“白と緑”の蹄跡」が開催される予定で、もう展示品を集めはじめているという。
「いつかここにロボットポニーを入れたいと思っているんです」
と、2階を歩きながら微笑む岡野館長から「メジロ展」のプランを聞くと、競馬博物館に来る楽しみがさらにふくらんだ。
顕彰馬・顕彰者を紹介する1階の「競馬の殿堂」や、世界と日本の競馬史がわかる2階の展示室は、いつ来ても、静かに私たちを迎えてくれる。
「競馬」の背景にある歴史を知ると、とても得をした気分になり、競馬を好きになってよかったと心底思える。
馬券を買う前でもいいし、勝負のあとでもいい。ここだけにある、雄大な時間の流れを感じてみてはいかがだろうか。