◆少数精鋭で、騎乗技術は総じて高い 地方競馬では今年4月1日付で新たに騎手免許を受けたのは6名。中央競馬の新人騎手は、3月の最初の週末にほぼ一斉にデビューとなるが、地方競馬は主催者ごとに開催日程や出馬投票の関係で、4月初旬から、場合によっては5月にかけて順次デビューとなる。今年はすでに6名全員がデビューし、4月中に4名が初勝利を挙げている。
初勝利1番乗りを果たし、その後も“あっぱれ”な騎乗を見せているのが、兵庫の石堂響(いしどう・ひびき)騎手だ。
4月17日、園田第1レースのデビュー戦は9着だったが、2戦目となった第4レースで早くも初勝利。ナリタクローネに騎乗した石堂騎手は、躓きぎみのスタートで1周目のゴール板を5番手で通過。勝負どころの3コーナー手前から抜群の手ごたえで進出すると、4コーナー手前で外から一気に先頭へ。直線ではそのまま後続を突き放し、5番人気での勝利となった。
デビューを前にした紹介式では「吉田勝彦アナウンサーの実況で初勝利を挙げたい」と話していた石堂騎手。今年81歳になった吉田勝彦アナウンサーが実況する機会はそれほど多くはないなか、デビュー2戦目でそれを実現して見せた。
※石堂響騎手について(兵庫県競馬組合)
http://www.sonoda-himeji.jp/news/detail.html?id=FJ18F5 石堂騎手の活躍はさらに続いた。翌18日の第3レースでは3番人気のカヤクに騎乗して逃げ切り、2着に9馬身差をつける圧勝。続く19日の第6レースでも3番人気のエンデヴァーで逃げ切り、同じく9馬身差の圧勝。デビュー週の開催3日間で毎日1勝ずつを挙げた。
さらに翌週、25日の第4レースでは1番人気に支持され、スタート後から並走した大柿一真騎手との追い比べをハナ差で制した。1日置いて27日の第2レースも2番人気馬で逃げ切って勝利。デビューから2週、6日間で34戦5勝、2着4回。勝率14.7%、連対率26.5%という新人らしからぬ活躍を見せている。
子供の頃には芸人になりたいと思ったこともあったという石堂騎手の特技は競馬実況。デビューする前の地方競馬センターで、スマホで中央競馬のGIレースの映像を見ながらの実況を聞かせてもらったが、もうそのまま実況アナウンサーになれるのではないかというしゃべりに驚かされた。
続いて初勝利を挙げたのは、佐賀の出水拓人(でみず・たくと)騎手。デビューしたのは4月7日と同期の中では1番乗りだったが、初勝利は4月22日、佐賀第5レース。2番人気のダークガーランドで逃げ切り、デビュー31戦目での初勝利となった。出水騎手は4月30日第5レースで2勝目も挙げている。
※新人騎手「出水拓人騎手」初勝利!(佐賀県競馬組合)
http://sagakeiba.lekumo.biz/news/2018/04/post-389c.html 続いたのは岩手の岩本怜(いわもと・れい)騎手で、4月30日、盛岡の第2レース。騎乗したウインアイフォースは1番人気に支持され、2番手追走から3コーナー過ぎで先頭に立った。直線では内から坂口裕一騎手、外から菅原辰徳騎手が並びかけ、3人、3頭での追い比べとなったが、それらを振り切った。4月14日、水沢でのデビューから48戦目での初勝利だった。
※岩本怜騎手 待望の初勝利!(岩手県競馬組合)
http://sagakeiba.lekumo.biz/news/2018/04/post-389c.html 岩本騎手の勝負服は、胴緑、袖黄・緑一本輪という、憧れのサイレンススズカ(の馬主、永井啓二氏)のデザインと同じもの。とはいえサイレンススズカが走っていたのは、岩本騎手が生まれる(2001年3月28日)より前のことだった。
4人目は大井の北野壱哉(きたの・いちや)騎手。岩本騎手と同じ4月30日で、大井第5レース。騎乗したディープフォレストは4番人気。一団となった馬群の中団8番手を追走、4コーナーでは大外に持ち出して追ってくると、直線半ばで5頭横一線となった追い比べから抜け出した。4月16日、大井でのデビューから12戦目での初勝利となった。
※北野壱哉騎手 初勝利!(TCK東京シティ競馬)
http://www.tokyocitykeiba.com/news/40021/ 残るは2名。北海道の落合玄太騎手はホッカイドウ競馬開幕の4月18日、第2レースでデビュー。騎乗したエンジェルアイズは1番人気に支持されたものの、スタートでダッシュがつかず最後方からの追走となり、直線伸びたものの3着というホロ苦いデビューとなった。4月末までで13戦して3着が最高という成績。とはいえ開幕前に行われた能力検査(2歳馬は800m)で、49秒6という一番時計を記録したシントーユタカに騎乗していたのが落合騎手だった。
もうひとりは大井の吉井章(よしい・しょう)騎手。4月16日大井でデビューし、4月末までに18戦。30日には7番人気で惜しくも2着という好騎乗もあった。そしてこの原稿を書いている最中の5月1日、大井第4レース。騎乗したヒワノランニングは10番人気だったが、地方通算最多勝記録にカウントダウンとなっている的場文男騎手と直線馬体を併せての叩き合いとなり、一瞬前に出たかという場面もあったが、惜しくもアタマ差で2着だった。
近年、地方競馬でデビューする騎手は10名以下ということもめずらしくない。しかし少数精鋭で、騎乗技術は総じて高い。今年は6月から始まる予定となっているヤングジョッキーズシリーズでのさらなる飛躍に期待したい。