◆最先端を行く著名種牡馬の活力を取り入れ続けて
どんなレースでも断然人気の馬を挙げるのは気が引けるが、ここはグレイトパール(父キングカメハメハ)。ダートに転じて6戦6勝。前回は骨折で約1年の休養明けながら、今回もそのメンバーが10頭もそろっていたアンタレスSを完勝してみせた。
6勝は1800〜2000m。今回の1900mには破格の1分55秒2があるが、それはダート2戦目、1000万当時の記録であり、いまなら馬場コンディションひとつで大きく記録短縮も可能だろう。成長力と、牝系の秘める底力にも期待していい。前回とほとんど同じ組み合わせである。
妙味ある相手本線は、テイエムジンソクが加わってスローはないから、確実に差してくるクインズサターン。こういう人気馬の相手には人気薄が台頭することが珍しくないので、連穴にトップディーヴォ、コスモカナディアン。
グレイトパールのファミリーは、3代母が1982年のエリザベス女王杯(3歳限定)のビクトリアクラウン(父ファバージ)。さらにその祖母が1962年のオークス馬オーハヤブサ(父ヒンドスタン)。印象は古いが、牝系に新しいも古いもなく、言い出せばずっと連続しているから、みんな古典の世界である。
今年のNHKマイルCの伏兵だったパクスアメリカーナ(父クロフネ)も、その全姉でヴィクトリアマイルを勝ったホエールキャプチャも、この姉弟の3代母にあたる1987年のエリザベス女王杯のタレンティドガール(父リマンド)も、その半兄ニッポーテイオー(父リィフォー)も、みんなオーハヤブサの子孫になる。
こういう名牝系は、牝祖に相当するオーハヤブサ(1959)、輸入牝系の祖になるビューチフルドリーマー(1903)の血が流れていると表現されるが、さすがにそれはない。
そうではなく、オーハヤブサの子孫ゆえに、その直仔ワールドハヤブサ(父ダイハード・1957)からこのファミリーに深く関係する名門=千代田牧場は、その子孫をどこよりも大切にしてきた。かつ、配合する種牡馬は名牝系にふさわしいそれなりの種牡馬だけが選ばれる。したがって、名門のファミリーは、冒険の名もない種牡馬で失敗しない限り、時代の最先端を行く著名種牡馬の活力を取り入れ続け、牝系が古くなることはない。ずっと不滅なのである。