時計の速いダートでも不利にならない血統背景/ユニコーンS
◆コース、距離に加えて高速ダートへの適性も問われる
コース適性、距離1600mへの適性に加え、雨上がりの高速ダートに対する高い適性も問われるコンディションになった。みんな相手が強化するとともに、これまで以上に厳しい内容が求められる。ダート巧者が多いなか、数少ない3歳ダート重賞らしい激しいレースだろう。
5月の「青竜S」をきわめて勝負強い内容で勝ってきたグリム(父ゼンノロブロイ)に期待する。東京ダート1600mのオープン特別を、ヒヤシンスSなどダート3勝のスマハマに競り勝ったから、コース適性、距離適性は大丈夫。追い通しで差し返したように、実にしぶとかった。
問題は、1分36秒9(上がり36秒1)の走破タイムが必ずしも速くないことか。だが、同時期の古馬1000万条件を上回る時計であり(上がりも)、最後の2ハロン「11秒8ー12秒0」の激しい競り合いで、手ごたえでは上回っていたスマハマを差し返すように下したから、時計不足(スピード不足)の心配はないと思える。また、前々走の阪神ダート1400m1分24秒5も、同時期の古馬1000万条件を上回る時計だった。
父ゼンノロブロイ(その父サンデーサイレンス)は、4歳時に「天皇賞(秋)→ジャパンC→有馬記念」3連勝を達成した名馬のわりに種牡馬成績はもう一歩だが、やや早熟傾向もある母方(母の父マイニング)の影響が強く出たのか、早くに完成されてしまうところがある。だが、ゼンノロブロイ産駒とあって、出走させる側は古馬になって……の展望を掲げるから、リズムが一致しない面もある。
代表産駒は、オークスを勝ったサンテミリオン、ジャパンダートダービーを制したマグニフィカ…など。3歳時は光っていた。大器とされたペルーサも、4歳以降の伸び悩みは案外、早くに完成されていた影響があったかもしれない。ゼンノロブロイのいとこにあたる外国産馬シルクビッグタイムは、08年のユニコーンSの2着馬。父母両系ともにアメリカ血統一色のゼンノロブロイは、本来ならダート巧者に出ても不思議ない血統背景がある。マグニフィカが示すように、本当はもっとダート向きの産駒を送る種牡馬の可能性もある。
グリムの母方は欧州色が濃くダート向きを感じさせないが、輸入された4代母バーブスボールドは大種牡馬リファールの半妹。マイラーとしてのパワーがこの一族の特徴でもあり、ダートのG1(格)重賞で、2着9回の大変な記録を残したシーキングザダイヤ(母シーキングザパール)は、このバーブスボールドの牝系の日本での代表馬である。
グリムはダートで頭角を現したように、もともとダート向きの特性が隠された血統背景を持っている。ゼンノロブロイも、母の父サクラバクシンオーも、快レコード樹立の記録を持つスピード系。追い切りも自己最速の坂路51秒6を楽にマークし、時計の速いダートは少しも不利ではないだろう。
高速の不良馬場とはいえ、東京ダート1600mに1分36秒2の2歳コースレコードを記録したルヴァンスレーヴが強敵だが、まだみんなキャリアが浅く未知の部分大。デキ急上昇の伏兵バイラ(父ヘニーヒューズ)以下、少し手広くいきたい。