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ムーアとデトーリ、名手二人の対決は見逃せない!ロイヤルアスコット後半戦の見どころ

  • 2018年06月20日(水) 12時00分


◆ダイヤモンドジュビリーSには豪州馬が参戦

 19日(火曜日)に開幕した英国競馬の華「ロイヤルアスコット(6月19日〜23日)」から、今週は後半戦の見どころを御紹介させていただきたい。

 開催3日目(21日)のメイン競走として行われるのが、1807年に創設された伝統の一戦G1ゴールドC(芝19F210y)だ。

 ブックメーカー各社が2.625倍〜2.875倍のオッズを掲げて1番人気に推すのが、エイダン・オブライエン厩舎のオーダーオヴセントジョージ(牡6、父ガリレオ)である。16年・17年と2年連続でG1凱旋門賞(芝2400m)に挑み、3着・4着と健闘してるから、日本の競馬ファンの皆様にもお馴染みの1頭だが、本来はこちらの距離カテゴリーが主戦場の馬である。

 3歳秋にG1初制覇を果たしたのがG1愛セントレジャー(芝14F)だったし、他ならぬ2年前のこのレースを制したのは、当時4歳だった同馬である。昨年のこのレースは、乾坤一擲の走りを見せたビッグオレンジの2着に敗れたが、秋には自身2度目となるG1愛セントレジャー制覇を達成している。

 今季もここまで2戦2勝、ことに9ポンド12ストーン(約62.6キロ)を背負って優勝を果たした前走LRサヴァルベックS(芝14F)の内容は見事で、6歳を迎えて更に充実著しいところを見せている。

 それならば、ここはオーダーオヴセントジョージの独壇場になるのかと思えば、現実は、さにあらず。各社3倍前後のオッズを掲げて接近した2番人気に推しているのが、ジョン・ゴスデン厩舎のストラディヴァリウス(牡4、父シーザスターズ)である。

 昨年のロイヤルアスコットでG2クイーンズヴァーズ(芝13F211y)を制し重賞初制覇を果たすと、続くG1グッドウッドC(芝16F)でビッグオレンジを含む古馬勢を撃破してG1初制覇を果たし、タレントが豊富と言われる14年生まれのステイヤー陣の中でも、旗頭の地位を手にしている。今季初戦となった、5月18日にヨークで行われたG2ヨークシャーC(芝13F188y)も3馬身差で快勝。16Fを越える距離は今回が初めてとなるが、そこが障壁にならなければ、オーダーオヴセントジョージの牙城をも脅かす可能性があると見られている。

 オーダーオヴセントジョージの鞍上ライアン・ムーアと、ストラディヴァリウスの鞍上フランキー・デトーリの、名手二人による駆け引きを含めて、見逃せない対決となりそうだ。

 開催4日目(22日)に組まれた、3歳馬によるスプリント戦G1コモンウェルスC(芝6F)は、混戦模様だ。

 ブックメーカー各社が5倍前後のオッズで1番人気に推すのが、チャーリー・ヒルズ厩舎のエキラテラル(牡3、父エキアーノ)だ。K・アブドゥーラ殿下のジャドモントによる自家生産馬で、G1ドバイデューティフリー(芝1800m)勝ち馬シティスケイプの甥にあたる同馬。今季初戦となった、5月19日にドンカスターで行われた条件戦(芝6F2y)を8馬身差で快勝して2勝目を挙げたばかりで、強敵にぶつかるのは、ここが初めてだ。

 5倍〜6倍のオッズで、エキラテラルと横並びの1番人気か、僅差の2番人気に推されているのが、エイダン・オブライエン厩舎のスーネイション(牡3、父スキャットダディ)だ。昨年のロイヤルアスコットでG2ノーフォークS(5F)を制し重賞初制覇を果たすと、続くG1フェニックスS(芝6F)も連勝してG1初制覇を果たした馬である。今季2戦目となった、5月20日にナースで行われたG3ラッケンS(芝6F)で3度目の重賞制覇を飾っての参戦となっている。

 7.5倍〜8倍のオッズで3番人気に推されているのが、今季初戦のG3シジー賞(芝1200m)、続くG2サンディレーンS(芝6F)を連勝しての参戦となるサンズオヴマリ(牡3、父パニス)だ。

 そして、今季初戦のG3パヴィリオンS(芝6F)で2度目の重賞制覇後、G2サンディレーンSはサンズオヴマリの鼻差2着だったインヴィンシブルアーミー(牡3、父インヴィンシブルスピリット)が、7.5倍〜9倍のオッズで、サンズオヴマリと横並びの3番人気か、僅差の4番人気となっている。

 同じく開催4日目(22日)に組まれた3歳牝馬によるG1コロネーションS(芝7F213y)は、09年以来9年振りにイギリス、フランス、アイルランドの3か国の1000ギニー馬が顔を揃える予定で、水準の高い混戦となっている。

 しかし、こうしたタイトルホルダーたちを尻目に、ブックメーカーの多くが1番人気(オッズ4.0倍〜4.5倍)に支持しているのが、エイダン・オブライエン厩舎のクレミー(牝3、父ガリレオ)である。

 7F〜8Fで4つのG1を制した、16年の欧州2歳牡馬チャンピオン・チャーチルの全妹という良血馬で、2歳時にはG1チーヴァリーパークS(芝6F)を含む3重賞を制覇。G1英1000ギニーの有力候補に数えられていた馬である。ところが、今年3月に挫石のアクシデントがあり、G1英1000ギニー(芝8F)を回避。ようやく迎えた今季初戦が5月27日のG1愛1000ギニー(芝8F)で、ここでは9着に大敗している。ここで同馬が1番人気になっているということは、同馬の能力の高さが改めて評価されているからで、前走の敗因を「8カ月の休み明け」と捉えれば、ひと叩きされたここは確かに狙い目である。しかし一方で、前走の敗因が「初のマイル戦をこなせなかった」ことにあるならば、ここは危ない本命とも言えそうだ。

 3.75倍から5倍のオッズで、社によってはこちらを1番人気にしているのが、ジェシカ・ハリントン厩舎のアルファセントーリ(牝3、父マスタークラフツマン)だ。ニアルコス・ファミリーによる自家生産馬で、3代母がお馴染みのミエスクという血統背景を持つ。2歳時は4戦し、LRフィリーズスプリントS(芝6F)を含む2勝。今季初戦となったG3バリーリンチスタッド1000ギニートライアル(芝7F)では10着と大敗した後、前走G1愛1000ギニーでは一変した走りでクラシック制覇を果たしている。

 5倍〜6.5倍のオッズで3番手評価なのが、リチャード・ハノン厩舎のビレスドンブルック(牝3、父シャンゼリゼ)だ。2歳時は8戦し、G3プレスティージS(芝7F)を含む3勝。今季初戦のG3ネルグウィンS(芝7F)4着後、前走G1英1000ギニー(芝8F)を快勝し、クラシック制覇を果たした。ここは、4万5千ポンドを払い追加登録を行なっての参戦となっている。

 6〜7倍のオッズで4番手評価なのが、デヴィッド・シムコック厩舎のテッパル(牝3、父カマチョ)だ。2歳8月にリングフィールドのノーヴィス(芝7F)でデビュー勝ち後、ケンンプトンの条件戦(AW7F)を連勝。2歳時をこの2戦のみで終えると、今季初戦となったG1プールデッセデプーリッシュ=(仏1000ギニー)を制し、デビューから無敗の3連勝でクラシック制覇を果たしている。

 10〜11倍のオッズで5番手評価なのが、デルシャー・サンチェ厩舎のクールデブテ(牝3、父ダビルシム)である。近親にG1フィリーズマイル勝ち馬リッスン、G1モイグレアスタッドS勝ち馬シーコヤー、その産駒でG1英2000ギニーなど4つのG1を制したヘンリーザナヴィゲイターがいるという名門牝系の出身で、サイヤーラインはハットトリックからサンデーサイレンスに遡るという、非常に興味深い血統背景を持つ馬だ。今季初戦のG3アンプルダンス賞(芝1400m)を制し重賞初制覇を果たした後、社台ファームの吉田照哉氏がトレードで獲得。前走G1仏1000ギニーは、14頭立ての大外枠からの発走という不利を克服して、テッパルから短首差の2着に健闘している。

 開催最終日(23日)に組まれた、古馬による短距離戦のG1ダイヤモンドジュビリーS(芝6F)も、興味深い顔合わせとなった。

 3.5倍〜4倍のオッズで1番人気に推されているのが、クライヴ・コックス厩舎のハリーエンジェル(牡4、父ダークエンジェル)である。3歳だった昨季、G1ジュライC(芝6F),G1スプリントC(芝6F)とこの路線のG1を2勝し、世界ランキングでもレイティング125でSコラムの首位に君臨した馬である。今季初戦となった、5月16日にヨークで行われたG2デュークオヴヨークS(芝6F)を勝っての参戦となっている。

 オッズ4.5倍〜5倍の2番人気が、エイダン・オブライエン厩舎のマーチャントネイヴィー(牡3、父ファストネットロック)だ。豪州産馬で、今年4月まで祖国に在籍。G1クールモアスタッドS(芝1200m)など2重賞を制した後、愛国に移籍。その初戦となったのが、5月26日にカラで行われたG2グリーンランズS(芝6F)で、ここを快勝しての参戦となっている。

 オッズ5.5倍〜7倍の3番人気が、デヴィッド・ヘイズが管理する豪州からの遠征馬レッドカークウォリアー(セン7、父ノットナウケイト)だ。2月17日にフレミントンで行われたG1ライトニングS(芝1000m)、3月10日に同じくフレミントンで行われたG1ニューマーケットH(芝1200m)を連勝しての参戦で、豪州調教馬としては12年のブラックキャヴィア以来となる優勝を狙っている。

 後半戦も目の離せない戦いの続くロイヤルアスコットに、日本の皆様もぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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