▲馬っこパーク・いわてにて表情豊かなアンナベルガイト(提供:上田優子さん)
引退馬が堂々と生きていける居場所を求めて
何かことを起こそうとする時に、フットワークが軽くて行動力のある人がいないと前に進まないものだ。引退馬支援やホースセラピー活動を行っている上田優子さんも、正にフットワークが軽く行動力にたけている。8月末、上田さんは岩手から車を夜通し走らせて美浦トレセンまでやって来た。
初めて上田さんに電話取材をしてから美浦来訪まであっという間に段取りが決まり、引退馬やホースセラピー活動に関わっている調教師ら、数人で会合を持った。ファン、関係者それぞれの考え方や捉え方、現状での問題点や課題などが活発に議論され、その場に立ち会った私から見ても、有意義な情報交換ができたのではないかと感じたし、双方の今後の活動にもかなりプラスになったのではないかと思う。会合の内容を現時点では詳しくは伝えられないが、この日の議論が起点となって、それぞれの活動に動きがあった時には、当コラムで改めて紹介できればと考えている。
美浦で会合を終えた上田さんは、私が引き取ったキリシマノホシに会いに来てくれた。初対面の人にはつれない態度のキリシマに時折人参を差し出しながら、引退馬についての話題が尽きなかった。電話取材の時も、美浦でもたくさん話をしたはずなのに、馬好き同士の会話は弾み過ぎて止まらなくなるから不思議だ。
中でも、馬たちが必要とされて輝ける場所や仕事がないと、引退した馬たちの居場所もない…という話が強く印象に残った。馬はお金がかかる動物だ。ある程度の広さの馬房と運動や放牧ができる場所を必要とし、餌代もかかる。削蹄や装蹄、予防注射代、定期的な駆虫、病気になれば獣医代も発生する。あまり難しく考えても前には進まないが、安易に引き取っては馬も人も不幸になる。だからこそ、馬たちが人に必要とされ、場合によってはお金を生み出して、堂々と生きていける居場所が必要なのだと思う。
そのような活動の一環が、上田さんが行っているアハルテケイオンの引退馬支援やホースセラピーであり、現在は岩手競馬にアイドルホースを誕生させることに力も注いでいる。長らく誘導馬不在だった岩手競馬に誘導馬を復活させてアイドルにしたい、できれば10月8日に盛岡競馬場で行われる南部杯の日に…というのが上田さんの描く構想だった。