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ダービー馬にいきなりの代打騎乗も、ほぼ完ぺき/神戸新聞杯

  • 2018年09月24日(月) 18時00分


◆1番人気で4着、エポカドーロの敗因は明白

 日本ダービー馬ワグネリアン(父ディープインパクト)の秋の始動戦は、多くのファンが改めて納得する勝利だった。春の日本ダービー時に比べ、10キロ増の460キロ。父と同様に大きくはみせない体つきだが、500キロを超す馬の10キロと、450キロしかなかった馬の10キロは違う。とくに馬場に入っての動きに、力強さを増していた。

 日本ダービーで後方からの追い込みではなく、好位からの抜け出し(正攻法)に成功していたのが、急に乗り替わることになった藤岡康太騎手(29)には大きかった。作戦を用いる必要はない。能力を信じストレートに能力全開がテーマだった。

 いきなりダービー馬にピンチヒッターで乗るのはきびしいが(実際は日本ダービーでも調教担当だった)、休み明けなので向こう正面で少し行きたがったくらいで、ほとんど完ぺきだった。ただし、陣営はすでに天皇賞(秋)2000mへの挑戦を明らかにしている。

次走は天皇賞(秋)に向かうワグネリアン


 ワグネリアンの天皇賞(秋)は、まだ対戦相手もかなり不確か。ここは神戸新聞杯の回顧なので、まずは10月21日の菊花賞を考えたい。京都新聞杯が春に移った2000年以降、ここまで18年間の菊花賞で3着以内に快走したのは54頭。そのうち「34頭」が神戸新聞杯の出走馬である。荒い概算だと、毎年だいたい2頭は神戸新聞杯組が馬券に関係する。

 2着に突っ込んだエタリオウ(父ステイゴールド)は、対ワグネリアンに2連敗となったが、差は「0秒2→0秒1」。こちらも春よりプラス14キロの馬体で秋を迎え、素晴らしい身体になっていた。3コーナー近くから押っつけ通しで、直線は一番外に回り、ただ1頭だけ上がり33秒9。あの手応えで良く届いたものだ、がレース直後の実感としては、新馬2000mでは上がり33秒8で伸びながら0秒6差の4着に完敗(4番人気)しているから、レースが空くと闘志に火がつくのが遅いのかもしれない。

 心配された内にもたれる面はみせなかった。血統背景はともかく、あれだけ追って追って伸びるのだから、2400mからもっと距離が延びるのは歓迎だろう。2戦目にはブリンカーを装着して一気のスパートで勝っている。オーナーは異なるが、(ワグネリアンと)同じ友道厩舎の管理馬で、同じノーザンFの生産馬。エタリオウは菊花賞の最有力馬の1頭となった。

 カギは、このところ毎回鞍上がチェンジしていること。つづけてM.デムーロが騎乗するのかどうか? 追わせる馬だけに騎手の占める比重は大きい。また、ズブいからといって、距離が延びるほどいいとは限らないケースもある。

 母方の近いところに著名馬はなく、配されてきた種牡馬は母の父カクタスリッジ(その父へネシー)→ブロードブラッシュ(ワグネリアンの祖母の父でもある)→プライヴェイトアカウント→マジェスティックライト→ボールドルーラー…。

 ずっとアメリカのパワフルな中距離型が連続し、スプリンター色はないが、母の父がヘネシーの直仔となると、ともに輸入種牡馬の「ヘネシー→ヨハネスブルグ」と付き合っているわたしたちは一歩引きたくなる。ただ、今年の米3冠を6戦無敗で制したジャスティファイの父スキャットダディは、ヨハネスブルグの直仔だった。ダンチヒ、ストームキャットなど世界を牽引した大種牡馬は、距離の幅を広げる枝も発展させるから名種牡馬となりえたのだ、と考えれば大丈夫か。

 3着メイショウテッコン(父マンハッタンカフェ)は、果敢にレースを先導し、自身は「1分14秒4-1分11秒3」=2分25秒7。スローだったとはいえ寸前まで粘った。マンハッタンカフェ産駒で、これで2400m【1-0-1-0】。先行力があるのでこなせる距離の幅は広いが、祖母バーモントガール(父ミシエロ)は、米チャンピオンスプリンターに輝いたアータックス(父マーケトリー)の半妹。5月の白百合S1800m、ラジオNIKKEI賞1800mの好内容からみると、これ以上の距離延長は有利ではないかもしれない。

 1番人気で4着にとどまったエポカドーロ(父オルフェーヴル)の敗因は明白。馬体はキチッとできていたが、ちょっとカリカリしすぎていたためかスタート直後につまずき、後方からの追走になってしまった。単調ではないが追い込むレースはしたことがないので、今回は4着に追い上げたのが精いっぱいだった。レース内容がさえなかったため、成長していない印象を与えたが、皐月賞1着、日本ダービー2着の地力に陰りも評価落ちもない。

 史上「日本ダービー、菊花賞」の2冠馬は、現在のクラシック体系になって以降、1973年のタケホープただ1頭。しかし、「皐月賞、菊花賞」の2冠馬は2012年のゴールドシップなど8頭も存在する。これは偶然ではない。候補が激突した最初の皐月賞を制した馬こそ、世代チャンピオンのケースが多いことを伝えている。ゴールドシップの年も、日本ダービー馬ディープブリランテ(父ディープインパクト)が不在だった。ライバルが菊花賞を回避してくれるのは有利である。

 5着ステイフーリッシュ(父ステイゴールド)、6着タイムフライヤー(父ハーツクライ)以下も望みが絶たれたわけではないが、直前の大きな変わり身が必要になった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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