
▲危険と隣り合わせ、ジョッキーという仕事について、改めて語ります
今週の『太論』も、ユーザーからの質問&リクエストがテーマです。「栗東最年長騎手として意気込みを!」というリクエストに対し、小牧騎手らしいコメントを残しつつ、最近目撃したという危険なシーンの話になり…。危険と隣り合わせのジョッキーという仕事について、改めてリアルに語ってくれました。
(取材・文/不破由妃子)
ホンマに生きるか死ぬかやで
──今回は、ケガに関するこんな質問からです。「ジョッキーにケガは付き物だといいますが、ケガの程度に対し、みなさん復帰がすごく早いような気がします。一般人がしないような何か特別な治療をされているのでしょうか?今回の小牧騎手の例でいいので教えてください」
小牧 なにも特別なことはしてないよ。我慢やね、ひたすら我慢(笑)。でも、僕の今回のケガでいえば、痛かったのは落ちたときと最初の2、3日だけで、あとは本当に楽やったから。骨折した場所がよかったんやわ。肺気胸のほうも、2〜3日で治ったからね。
──2、3日!? そんなに早かったんですね。
小牧 うん。肺に骨が刺さっていたらもっと時間がかかるけど、僕の場合は刺さったわけじゃなかったから、出血もすぐに止まってね。3日くらいで管も抜けたし。
──なるほど。不幸中の幸いだったわけですね。
小牧 うん、間一髪や。特別なことではないかもしれないけど、自宅で酸素カプセルに入ったりはしてたよ。骨折の治りが早まるっていうからね。
──酸素カプセルがご自宅にある時点で一般の方とは違いますね。
小牧 まぁそうかもしれんね。あとは整体に通ったり。そのくらいかなぁ。
──年を取るにつれ、ケガや風邪の治りが遅くなるのが普通ですから、やっぱり単純にすごいです。
小牧 年齢はね、もう忘れたわ(笑)。
──その年齢を思い出させるようで恐縮ですが、こんなリクエストがきています。「林騎手の引退で、ついに栗東最年長騎手になりました。今後に向けて意気込みをひと言お願いします」
小牧 意気込みは……ない(笑)。今のモチベーションは、ケガをせずに楽しくやっていきたい、それだけやから。また大きなケガをしたらと思うと怖いもんね。さっき痛かったのは最初の2、3日だけだと話したけど、落ちたときの痛さはたまらんものがあったからね。本当に痛かったし、苦しかった。危ない仕事やなと思う。ひとつ間違えたら…ね。
──いろんな経験をすればするほど、怖さが増すというのはよく聞きます。
小牧 そうやね。この前さ、ゲートで僕の隣が(武)豊くんやってん(9月2日・小倉7R・3歳上500万下)。メイショウラケーテっていう馬やったかな、ゲートのなかで馬が立ち上がって豊くんが落ちたんやけど、どこに落ちたと思います? ゲートのなかの馬の真後ろやで。
──ゲートの後ろ扉と馬の隙間…ということですか?
小牧 まぁ隙間なんてほとんどないんやけど、馬のお尻を抱きかかえるようにしてスポッと落ちてね。あんなん、紙一重やで。あの状態で蹴られたらもう終わりや。隣で見ていて、怖かったなぁ。
──ケガはなかったんですよね?
小牧 うん、どこもケガせえへんかった。正直、「豊くん、ついてるわ」と思ったわ。
──馬もよくジッとしていましたね。
小牧 そうそう、馬がよう我慢したわ。豊くんは豊くんで、5秒くらい馬のお尻を抱きかかえるような態勢で耐えてたんちゃうかな。ホンマに生きるか死ぬかやで。一蹴りされたら…と思うと、ホンマに怖かった。さすがに何も言われへんかったもん。そんなん見たからね…改めて危ない仕事やなぁと思って。
──レース中だけではなく、ゲートも危ないって言いますものね。
小牧 危ない、危ない。もう復帰したけど、(岩田)康誠もゲートやろ?
──そうですね。
小牧 まぁ避けられん事故もあるからどうしようもないけど、とにかく自分の体をちゃんと作って、衰えんようにしないと。ケガをせんようにもそうだし、何より若い子に負けないようにね。そういう意気込みはあるよ。

とにかく自分の体をちゃんと作って、衰えんようにしないと