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“龍王”顕彰馬選定記念 パパになったカナロアさんへ。陣営より(1)

  • 2018年09月27日(木) 18時02分
G1ドキュメント

▲種牡馬になっても大活躍のロードカナロアを特集!(撮影:高橋正和)


中央競馬の発展に特に貢献した競走馬が選出されるJRA顕彰馬。今年はロードカナロアが選出されました!9月29日には中山競馬場にてロードカナロアメモリアルも開催されます。これを祝して、ロードカナロアを3週にわたって特集します!第1回となる今回は、管理していた安田隆行厩舎の皆様から頂いたロードカナロアへのメッセージをご紹介します。世界に誇るスプリンターを育て上げた陣営の思いとは?

(取材:大恵陽子)

安田隆行調教師


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 ロードカナロアさんへ

 セレクトセールに上場したけど、たまたま買い手がつかなくて牧場から「安田厩舎でやってくれるか」って言っていただいたのがカナロアを預かるきっかけでしたね。「はい、やらせてもらいます」って気楽な感じで引き受けた気がします。第一印象は…ないんです。入厩したのがたしか2歳の夏前で、体質が弱くて放牧に出したんです。10月くらいに帰ってきてからしっかりしだして、デビュー戦が12月。デビューの頃はがむしゃらにビューッとハナに行って逃げ切るっていう競馬でしたね。時には差すレースもあったけど、とにかくこの頃はがむしゃらでしたね。年を取ることでレースっぷりに幅が出て、見ていても勝ちパターンの競馬ができるようになってきました。

 印象に残るレースは安田記念!それはもう、すごく印象に残っています。

 初めての1600mの重賞で、どんな競馬をするのかなって思っていました。東京コースの1600mなので、「本来なら2000mも持つよ」って声もあって、僕自身は天皇賞・秋でどんな走りをするか見てみたい気持ちもありましたね。

 国内種付頭数の記録を更新したみたいで、「すっごいな〜」と思いました。僕の厩舎にもカナロア産駒がたくさんいて、いまカナロア産駒リーディングだと思います(笑)。毎年いい産駒を預からせていただいて感激ですね。カナロアに似て素直な馬が多いんですよ。

 それにしても、いま考えたら本当にすごい馬だったなとつくづく感じます。オンオフがすごくハッキリしていて、馬房や調教では大人しかった。ところが、競馬に行ったらそれが爆発力に変わる。すごい瞬発力をレースで出してくれるんですよね。このまま元気で、どんどんいい子供をつくってください。

安田翔伍調教師(当時調教助手)


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 ロードカナロアさんへ

 初めて会ったのは、入厩前に父と牧場にお邪魔した時でしたね。2歳でトレセンにやってきた頃は怖がりで、周りの反応を見て暴れることもありましたが、その時の背中の筋肉の柔らかさがすごかったのをよく覚えています。「他の馬ならこの程度で済むのかな」っていうところからさらにもう1段階グ〜ッときて、3〜4回落とされました。あなたが落とそうとしているわけではないのは分かりました。ただ、驚いた時のアクションが本当に大きかったんですよね。

 初めて坂路で15-15を乗った時もビックリしました。「なんだこの馬!」って。なかなか感じられない乗り味で、ちょっと比べ物にならなかったです。調教で動く馬っていっぱいいますが、調教の感触をそのまま競馬で発揮してくれるところが偉大でした。

 でも実を言うと、初めて会った頃の印象は特になかったんです。引退までオーラがなかったというか…。もしも、「馬に乗りたい」という人に厩舎の中から1頭選ぶとしたら、「安全だから」ってカナロアを勧めるだろうなってくらい大人しくて悪さもしませんでした。

 あなたのレースはどれも思い出に残っていますが、特に印象に残っているのは安田記念ですね。夏はどうしても弱くて、前の年はセントウルSからの始動にとても苦労しました。体への負担を考えるとリスクがありすぎるので、高松宮記念からセントウルSの間、馬体が完全にオフにならないようにちょうどいい時期にあるのが京王杯か安田記念だったんです。負担重量や今後の種牡馬価値を考えると、安田記念がいい挑戦になるのではないかなって僕自身は思いました。

 ただ、成績次第では種牡馬価値を落としかねないので、言った以上、形にならなかったらどうしようかと不安はありました。レースはやってみないと分からないですからね。安田記念の頃も気温が上がっているので、レース後は誘導馬の枠場で水をかけさせてもらう準備を整えたりと協力をしていただきました。そんな風にレース後も配慮する必要があったので、無事を確認してようやくひと息つけました。安田記念を勝ってあなたの価値が高まったのは間違いないから、それが何より嬉しかったですね。

 カナロア、これから寒くなっていく季節だよ、良かったな。

 これからは調教助手としてではなく調教師として、あなたみたいな馬に、あなたの産駒で出会いたいです。そして、何より健康で長生きしてください。できれば、僕と一緒に死ぬくらいに(笑)。

岩本龍治調教助手


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 ロードカナロアさんへ

 初めて会った時は女の子みたいで、ビクビクしていましたね。同厩舎で僕が担当していたカレンチャンは精神年齢が高くて「お姉さん」って感じだったので、運動などで先導してもらうこともあったと思います。

 馬房では大人しかったですが、よく僕にちょっかいをかけて噛んできましたね。つまんで噛んで引っ張るので、痛かったです(苦笑)。

 4歳で初めて香港に遠征して勝って帰国すると、自分がどういう立場なのか分かってきた感じがしました。貫録が出て、安心して乗れるようになりましたよ。

 毎日いい意味の緊張感の中で巡り合えて、怪我もなくデビューから引退まで一緒にいられたっていうのが僕にとって最高の財産です。「この日!」っていうんじゃなくて、その日その日が貴重な毎日でした。カナロアの産駒がデビューして2世代目ですが、初年度から7〜8頭、今ではトータル10頭くらい携わり、跨らせてもらいました。いい馬が多いですね。この2年、カナロア産駒じゃなかったのはカレンチャンの初仔(父ノヴェリスト)だけですかね。カナロア産駒のダノンスマッシュとどこか大きいところ、来年の高松宮記念とかを勝ちたいなぁと思っています。

 カナロアには「すげーな!」としか言えないです。競馬で走って、種牡馬になっても子供たちが走っていますし、偉大過ぎてかける言葉がありません。去年も今年も、社台スタリオンに会いに行きましたが、「元気でいろよ!」って言いたいですね。

ロードカナロアのあしあと


 2008年3月11日生まれ。父キングカメハメハ、母レディブラッサム。2010年12月5日小倉4R 2歳新馬(芝1200m)にてデビューし、1番人気1着。続く1600m、1400m戦では2着に敗れるもその後は順調に勝ちあがり3連勝で重賞の舞台へと駆け上がります。

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▲その初重賞の舞台は2011年11月26日京阪杯(G3)人気に応え、見事重賞ウイナーに!(C)netkeiba.com


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▲初G1出走は2012年3月25日高松宮記念。1番人気に推されたものの、3着。芝1200mでは初の黒星(C)netkeiba.com


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▲2012年9月30日スプリンターズS、先輩馬カレンチャンを差し切り優勝!ついにG1タイトルを手にします!(撮影:下野雄規)


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▲2012年12月9日、日本馬が勝つのは難しいと言われていた香港スプリントを2馬身半差付け圧勝!龍王の名を世界に轟かせました!(撮影:高橋正和)


(10月3日公開予定の第2回に続きます)

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