▲国際競走の華やかさが失われたジャパンC、打開策はあるのか (写真は2016年のジャパンC、撮影:下野雄規)
今年のジャパンカップ(JC)は、外国馬が過去最少タイの2頭止まり。過去5年は3-4頭(3頭が3回、4頭が2回)で推移していたが、この“防衛線”も崩れた。近年の外国馬は着順掲示板入りも珍しく、馬券も売れない。今年も期待薄で、38回目を迎えるJCは、国際競走の華やかさが失われ、「国内芝2400メートル王者決定戦」と化した。「JCパッシング」の背後には何があるのか?
締め切り日にやっと2頭が…
第1回登録馬発表の11月11日。例年なら、外国馬の顔ぶれは前日までに発表されているが、今回は違った。日本馬の登録がメディアに公表される午後2時半に、やっと2頭の名前が出た。昨年に続きエイダン・オブライエン厩舎(アイルランド)は、カプリ(牡4、父ガリレオ)を投入。もう1頭は英国の5歳せん馬サンダリングブルー(父エクスチェンジレート)である。
両馬の格とレーティング(RT)には、逆転現象が見える。実績上位のカプリは118で、119のサンダリングブルーより低い。カプリは昨年、アイルランドダービーと英セントレジャーの両G1優勝でRT120。今年は4月にG3を勝っただけ。凱旋門賞5着時(エネイブルと3馬身4分の1差)が118。英チャンピオンSはクラックスマンと7馬身半差で、8頭中4着だった。
サンダリングブルーは完全な格下。G1未勝利で、前回は世界の芝2400メートルG1でも格下のカナダ国際で2着。RT119がついたのは、その前の英ヨークのインターナショナルS(G1)で8頭中3着。これがトップクラスで唯一の戦績で、3歳最強のロアリングライオンから3馬身4分の3差だった。
カプリは芦毛で紫の入った服色に加えて、常に2番手前後でレースを運ぶため、映像で確認しやすい。仏G2フォワ賞、凱旋門賞、英チャンピオンSの映像を見たが、前でしぶとさを生かすタイプで、最後の瞬発力比べで苦戦していた。休養明けとは言え、馬場の速かったフォワ賞であっという間に後続馬にかわされた場面は、日本の馬場適性に疑問を抱かせる。ただし、クリンチャーには先着していた。
サンダリングブルーも芦毛だが、こちらは差し馬で、インターナショナルSでは最後方から、決着がついた後に追い込んできた印象。カナダ国際は1番人気に推され、中位の内から直線で抜け出したが、英国のデザートエンカウンター(セン6)に差された。同馬は3月末のドバイ・シーマクラシック(G1)が10頭中9着で、日本馬3頭に先着された。ネット検索で簡単に映像を確認できる今日、RTに幻惑される人はいないだろう。
「奇特な」? 遠征馬の意図は…
JCで外国馬が馬券に絡んだのは、2006年のウィジャボード(英=3着)が最後。その後は延べ47頭が出走し、09年4着コンデュイット(英)、13年5着ドゥーナデン(仏)、昨年5着のアイダホ(アイルランド=後にアワアイダホと改名)と、着順掲示板入りは3件止まり。馬券的にも11年の凱旋門賞馬デインドリーム(6着)が1番人気に支持されたのを最後に、5番人気以上はない。
▲2006年のジャパンCに出走したイギリスのウィジャボード(3着) (撮影:下野雄規)
▲同年のレースを勝ったのは、ディープインパクトだった (撮影:下野雄規)
「勝てないから来ない」という悪循環が定着した中で、今では遠征馬の陣営が奇特に見えるほど。オブライエン厩舎の場合、一軍半以下は「使い倒す」傾向があり、次年度に一線級に投入する「予選」と位置づけている。昨年のアイダホは、10番人気で5着と健闘した。賞金3000万円は欧州ならかなりレベルの高いG1の優勝賞金に匹敵する。昨年は十分にペイする結果となったが、決して確率は高くない。それでも、1つの営業方針としているのだろう。