▲兵庫の川原正一騎手(兵庫)は真冬でも手袋をしない!?
先週末は日本各地で雪が降りました。1年で最も寒さが厳しい時期を迎えましたが、59歳の川原正一騎手(兵庫)は真冬でも手袋をせずに素手で騎乗します。昔気質のやせ我慢…ではなくて、そこにはちゃんとした理由がありました。
一方、今冬から船橋競馬でもナイターが実施されるにあたり、パドックから発走地点まで騎手は規定のジャンパー着用を許可されました。船橋に先立って真冬のナイター開催を実施している高知競馬でもこのジャンパーは取り入れられています。今回の「馬ニアックな世界」は“寒さに負けない職人”と“騎手の寒さ対策”をご紹介します。
素手の時はおしぼりで…
立っているだけでも手がかじかむ季節。時速約60kmで走る競走馬の背中で川原正一騎手は素手で手綱をさばいていました。
「30代後半くらいから手袋をしなくなったんだよ。昔、JRA京都競馬場で雪の中、手袋をつけずにレースに乗っていたらビックリされたけどね(笑)」
最近はさすがに雪の日は手がかじかむため手袋をすることもあると言いますが、基本的には素手。なぜなのでしょうか。
「道中で折り合いをつけたりする時、馬の動きはハミと手綱からしか伝わらないからね。例えるなら、魚を釣る時にテグス(釣り糸)を直接持つか、釣り竿を持つかで魚がグッと食いついた時の伝わり方が違うでしょ?素手で手綱を持っていると、ハミから手綱に伝わった時の感覚が違うし、手綱やステッキの持ち替えもしやすいんだよ」
馬との呼吸を合わせることに重きを置いている川原騎手にとって、ハミから伝わってくるわずかな感覚はとても大切なのでしょう。
「最近は指先だけ切ってある手袋なんかも馬具屋さんで売っているんだけどね。僕はゲート裏でおしぼりを借りて、滑らないように布手綱を湿らせているんだ」
同じく「素手派」なのは、宮川実騎手(高知)。
「手綱を詰め替えたりステッキを持ち替える時のリズムが素手の方がいいんですよね。あくまで感覚的なものなんですが。ただ、手がかじかんでしまうと使えないので、寒い日は返し馬では手袋をして、ゲート裏で外したりしています」
▲宮川実騎手「寒い日は返し馬では手袋をして、ゲート裏で外したりしています」
60年ほど前であれば若手騎手などは「手袋をするのは10年早い!」と師匠から怒られ、真冬でも素手で乗っていたという話を聞きますが、現代においてはリズムや感覚を重視してのことのようです。しかし、それらは個人差が大きいため、「素手派」と「手袋派」で分かれるのでしょう。
斤量の範囲内で行う工夫とは
ところで、今冬から船橋競馬ではナイターが開催されています。ナイター競馬を行う多くの地方競馬場は比較的暖かい春から秋にかけて行い、冬は昼間開催のみとなっています。これまで、真冬でもナイターを行っていたのは高知競馬のみ。日が暮れると一段と冷え込むため、斤量の範囲内で騎手たちは工夫して寒さ対策を講じています。
先ほど「素手派」でご紹介した宮川騎手も、決して寒さに強いわけではなく、冷え込みが激しい日は勝負服の下には薄手のダウンと風を通しにくい雨用のアンダーシャツ。
▲宮川実騎手は勝負服の下には薄手のダウン
他のジョッキーたちもウルト●ライトダウン的な薄手のダウンを勝負服の下に着用していて、ユニ●ロの功績は大きいなと感じたりします。他にもネックウォーマーや「耳が痛くなるんですよ」とヘアバンドのようなもので顔周りや耳を保護している騎手も。
また、高知競馬ではパドックから発走地点まで枠色に準じた防寒ジャンパーを着ることができます。
▲高知競馬場のパドックでは防寒ジャンパーを着用できる(1番手前は赤岡修次騎手)
船橋競馬でも1月〜2月、黄緑に統一されたデザインの防寒ジャンパーを各騎手が着用できるほか、アンダーシャツ分として馬の負担重量を0.5kg加増しています。
厳寒期、乗る人も見る人も寒さ対策をしっかりして競馬を楽しみたいですね。
全国的にインフルエンザが流行っています。トレセンや地方競馬でも罹患した人がチラホラいますし、みなさんもお気をつけください。(かくいう私はただいまインフルエンザで、自宅に引きこもっています…泣)