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今年は16名が修了 BTC育成調教技術者養成研修

  • 2019年04月17日(水) 18時00分

馬産地の将来を担う若者を育てられるか


 4月10日(水)、BTC研修第36期生16名の修了式が行われた。昨春、この研修所の門をくぐり、1年間の研修期間を経て、このほど晴れてここを卒業することになった彼ら16名は、当初22名(男女半々)で研修を開始した。

 しかし、夏までの前期のうちに相次いで6名が退所することになり、最終的に16名での研修となった。1年間のうちに育成馬の実践的な調教をこなせるレベルにまで騎乗技術を習得するのは並大抵のことではないが、その後は1人も欠けることなく、冬の寒い季節を乗り越え、このほどようやく修了式を迎える運びとなったわけだ。

 午前10時。研修所に隣接する1周800mダートコースを使用しての実技査閲が始まった。4月に入って間もなく、落馬により肋骨を折るなどのアクシデントに見舞われた1人を除く15名が、コースに出て、3つのグループに分かれ、常歩から速歩、そして、駈歩へと徐々にスピードをアップし、最後は2頭ずつの併せ馬で1年間の訓練の成果を詰めかけた保護者や牧場関係者の前で披露した。

生産地便り

実技査閲でこれまでの成果を披露


 これに先立ち、4月8日に開催されたJRA育成馬展示会では、16名のうち7名がJRA職員とともに来る23日中山競馬場で行われるブリーズアップセールに上場予定の育成馬に騎乗し、ハロン12秒〜13秒での公開調教に臨んでいた。

 16名中7名というのはやや少ない数字だが、今年、JRA育成馬は例年よりも早いペースで調教を進めており、時計を詰めるにつれて、テンションが上がる馬が多くなってきている現状を踏まえ、大事をとって騎乗を見合わせる研修生が多くなったという。

 しかし、修了式前の実技査閲では、騎乗可能な15名が揃って訓練馬にまたがり、砂ぼこりの舞う800m馬場で元気の良い騎乗姿を見せていた。

生産地便り

15名が訓練馬とともに馬場を駆け抜けた


 修了式は11時半よりBTC内診療所二階の会議室にて行なわれた。1人ずつ名を呼ばれた研修生は、BTCの大平俊明理事長より修了証書と記念のゼッケンが手渡され、来賓各位よりそれぞれ今後の活躍に期待する旨の祝辞が贈られた。

 その後、研修生を代表して堀畑仁君が、研修生謝辞を述べ、1年間の研修の出来事を振り返り、感謝の言葉を披露した。アクシデントにより命を落とした訓練馬のことに言及したくだりでは感極まり、言葉に詰まる場面もあった。

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研修生を代表して謝辞を述べた堀畑仁君


 16名はすでに全員が就職先を決めており、今期は地元浦河町内の育成牧場に5名(武田ステーブル、ヒダカファーム、山崎ステーブル、愛知ステーブル)、また日高管内他町の育成牧場に6名(コスモビューファーム、下河辺牧場、北所ファーム、クラウングリーンヒル、ダーレージャパン、木村牧場)、その他社台ファーム、追分ファーム、信楽牧場(滋賀県)、EISHIN STABLE(岡山県)などとなっている。

 昨年はついに地元浦河に就職する修了生がゼロという事態となったが、今期は何とか5名が残ることになり、深刻化する騎乗者不足にわずかながら貢献できた形だ。

 修了式の後は、関係者を交えての昼食会が開催され、そこで、恒例の「各賞」が発表された。皆勤賞は、文字通り1年間を通じて1日も休まずメニューをこなした研修生に贈られる賞で、佐藤謙晋君、森祥子さんが受賞。佐藤君は武田ステーブル、森さんはコスモビューファームに就職することになっている。

 学科賞は、座学での試験において最も点数が高かった研修生に贈られる賞で、36期生唯一の大卒である治部綾佳さんが受賞。治部さんは修了式直前の落馬負傷によって、修了的は騎乗できなかったものの、何とか気力を振り絞って修了式に参列し、大平理事長から修了証書を受け取っていた。就職先は社台ファームである。

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負傷しながらも出席した治部綾佳さん


 騎乗技術最優秀賞は八木飛雄伊(ひゅうい)君。前述のJRA育成馬展示会での公開調教にも元気良く騎乗し、上達した騎乗姿を見せていた。就職先はダーレージャパン。

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八木飛雄伊君はJRA育成馬展示会での公開調教にも参加


 場長賞は模範的な寮生活を送った研修生に贈られる賞で、研修生謝辞を務めた堀畑仁君が受賞。堀畑君は木村牧場に就職することになっている。

 これらの受賞者のポイントを総合した結果、BTC理事長賞には堀畑君、佐藤君、八木君の3名が選出され、それぞれ表彰を受けた。

 毎年、この修了式は晴れやかで微笑ましい祝福ムードに包まれ、和やかな雰囲気で行なわれる。とはいえ、彼らにとってこれからがいよいよ育成の現場でいよいよ戦力として試される日々だ。

 平成4年にこの研修制度が発足して以来、500名を超える修了生を送り出してきたこの育成調教技術者養成研修だが、このところ応募者が減少してきていることと、せっかく就職しても、続かずに転職してしまうケースが数多く見られ、とりわけ生産地では依然として騎乗者不足が深刻な状況にある。

 いかにして意欲溢れる若者たちをこの業界に呼び込み、将来の生産地を担う人材を育てられるかが今後の最も大きな課題として立ちはだかる。

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修了式後の記念撮影

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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