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「馬なり1ハロン!NEO」連載記念作者インタビュー よしだみほ物語(1)

  • 2019年04月21日(日) 18時01分
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▲馬なり1ハロン劇場の作者、よしだみほ先生


かわいいサラブレッドたちが、実際のレースをもとに、その持ち前のキャラを大爆発させる超人気コミック『馬なり1ハロン劇場』。2019年4月19日(金)の連載1000回目をもって最終回を迎え、新たに5月10日より『馬なり1ハロン!NEO』となってnetkeibaにて連載がスタートします! 連載に先駆けて、作者よしだみほ先生のインタビューを3回に渡ってお送りいたします。先生はどのように競馬と出会い、「馬が語る」というスタイルの漫画を描くようになったのでしょうか。

(取材・文=不破由妃子)


──『馬なり1ハロン劇場(シアター)』といえば、実在する競走馬たちを擬人化し、それぞれのキャラクターを引き立てた世界観が多くの競馬ファンに愛されてきました。『馬なり』をきっかけに、競走馬への興味や愛着を深めた競馬ファンは本当にたくさんいると思うのですが、まずはよしだ先生ご自身の競馬との出会いを教えてください。

よしだ もともと馬の姿形に惹かれて、乗馬をやってみたいなぁなんて思っていたんですけど、なにせ東京生まれの東京育ちなので、生活環境のなかでそれを実現させるのはなかなか難しくて。じゃあ、馬を見るにはどうしたらいいんだろうと考えたときに、「そういえばテレビで競馬やってるよな…。そうだ、競馬だ!」と思ったんです(笑)。そんな感じで、テレビの中継を見始めたのが競馬との出会いですね。

──競馬の予備知識は持っていらしたんですか?

よしだ いえ、まったく。身近に競馬をやっている人間が誰もいなかったので、なんの予備知識もないままに見始めたんですけど、1カ月も見続けていると、1カ月前に走っていた馬がまた出てきたりしますよね。それで、「あ、この馬知ってる!」みたいな感じで、だんだん競馬の流れというものに慣れてきて。もともとなんでもハマりやすくて、興味を持つとガーッといくタイプなんです。それこそ競馬の本をたくさん買って、2カ月くらいかけて猛勉強しました(笑)。

──そのハマり方、なんかわかります(笑)。競馬って、勉強しようと思ったら際限なく覚えることがありますものね。で、猛勉強の後、先生にとって初めての春のクラシックで注目を集めていたのが……

よしだ シンボリルドルフです。確かダービーの記事だったと思うんですが、その記事を読んだところ、どうやら今年はシンボリルドルフとビゼンニシキという馬が強いらしいと。せっかくだからどちらかを応援しようと思って、馬名がかっこいいルドルフを選んだんです。

──あ、ルドルフそのものに惹かれたというよりも…。

よしだ はい、馬名で決めちゃったんですね(笑)。その頃、競走馬としての美しさとかはよくわかっていなかったと思うんです。素人が見たら、ガラス玉でもダイヤモンドでも光ってさえいればキレイに見えますよね。だから、当時のわたしも本当にそんな感じで。ただ、そこで選んだほうの馬がダービーをポンと勝っちゃったので、これはすごい!と思って、これからもずっと応援していこうかなと。

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▲2010年、東京競馬場にてお披露目されたシンボリルドルフ(撮影:下野雄規)


──最初に選んだ馬が競馬史に残るものすごい名馬だったなんて、競馬との強い縁を感じさせるエピソードですよね。

よしだ そうですね。本当に運がよかったと思います。トライアルレースに出て、そこを勝って本番の大きいレースに出て、そこを勝ったら今度は古馬と戦って…という競走馬が出世していく様を全部見せてくれましたから。本当に教科書ですよね、ルドルフは。

──当時、すでに絵を描くお仕事をされていたのですか?

よしだ はい。雑誌やタウン誌などのカット描きをしていた頃だったと思います。競馬にハマってからは、『優駿』のイラストコーナーに投稿したり、同人誌にちょっとした4コマ漫画を描いたりしていました。当時、ペーパーオーナーの会に入っていたんですけど、その会を主宰していたのが『週刊競馬報知』(のちの『週刊ファンファーレ』)に勤めている方で。競馬のギャンブル性より「あの馬、可愛いよね」みたいなところを共有できる雰囲気の会だったので、もしかしたら面白がってくれるかもしれないと思って同人誌をお送りしたんです。

──そのときの作品が、『天才ユタカの元気が出る競馬』ですか?

よしだ そうです、そうです(笑)。そうしたら、その方が『週刊競馬報知』の編集長に、「こんなの描いてるヤツがいる」ってその本を見せてくれたんです。当時の競馬といえば、まだ“オヤジの娯楽”という感じだったと思うんですが、その編集長がかなり進歩的な方で、「こいつを連れてきて何か描かせろ」とおっしゃったらしくて。それで岡部(幸雄)さんをちょっと茶化したような漫画を4週にわたって描いたんですが(笑)、それが終わってからも「お前、残れ」と言われまして。コマを割った漫画は本当に描いたことがなかったのでどうしたものかと思ったんですけど、「4ページなら…」ということで『それいけ岡部クン!!』というタイトルで連載が始まったんです。当時、『がんばれ!! タブチくん!!』が流行っていたので、その線でいこうと。

──岡部さんご本人は、そういう連載があることをご存じだったんですか?

よしだ ご存じだったらしいんですけど…、接点を持たないまま今に至ります(笑)。テキトーなことを描いていたので、私もちょっと怖くて(苦笑)。

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▲「テキトーなことを描いていたので、私もちょっと怖くて…」


──そうなんですね(笑)。当時から「馬が語る」というスタイルだったんですか?

よしだ 最初からそうでしたね。今もそうですけど、当時も「擬人化」と言われるたびに、「あ、これは擬人化なのか」とわたし自身が思うほどで、「馬に喋らせたら面白いだろう」とか、まったくそういう意識はなかったんです。

──そうなんですね。のちに『みどりのマキバオー』などが登場しますが、擬人化ということでは先生が第一人者ですので、どこか狙った部分があるのかと思っていました。

よしだ それが本当にまったくないんです。発想そのものが最初からそうだったので。

──先生のなかでは、最初から当然のように感情のある生き物として「競走馬」が存在していたんですね。

よしだ わたしの頭のなかには劇団のようなものがあって、競走馬は役者さんなんです。毎回、今回の話に登場してもらう役者さんを連れてきて作品を作る。その感覚は、馬も騎手も同じです。だから、擬人化と言われると、今でも「ああ、これって擬人化なのかぁ」と思うんですよね。

(次回へつづく)

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