「平成最後のクラシック」となった皐月賞を、前走から中106日、これが年明け初戦となったサートゥルナーリアが制した。
そして「平成最後のGI」となった天皇賞・春を、同じくノーザンファームの生産馬で、間隔を空けながら使われているフィエールマンが優勝。掲示板に載った5頭を見ると、2着のグローリーヴェイズ以外はノーザンファームの生産馬だった。そのグローリーヴェイズも、中間はノーザンファーム天栄で調整されている――という、もはや「お約束」とも言える結果に終わった。
平成の競馬が「ノーザンファームの一強」で、また、「外厩の時代」となったことを象徴するかのようだった。
そして今週、「令和最初のGI」である、第24回NHKマイルカップのゲートが開く。
その対決の構図が興味深い。
牝馬でありながら朝日杯フューチュリティステークスで頂点を狙い(3着)、それ以来の実戦となった桜花賞を制したグランアレグリアが東の大将。牝馬なので「大将」より「巴御前」などにすべきなのかもしれないが、よりわかりやすくするために、また、人間界同様、強い女性が多くなっているサラブレッド界の現状を鑑み、あえてそう表現した。
対する西の大将は、朝日杯でそのグランアレグリアを破って2歳王者となったアドマイヤマーズだ。
見方によっては、ノーザンファーム天栄とノーザンファームしがらきの対決と言えるのかもしれない。
また、アーモンドアイやブラストワンピースなど、ノーザンファーム天栄で中間を過ごす馬たちの躍進によるところが大きいのだが、平成の最後のほうは、「西高東低」のイメージが、以前より薄まってきた。今年の天皇賞・春が、13頭の出走馬のなかで2頭だけだった関東馬のワンツーで決まったことも、流れが変わりつつある印象を強める結果となった。美浦トレセンの坂路の高低差を現在の18mから33m(栗東は32m)にする工事を行い、2022年の完成を目指すというから、令和の競馬界は昭和の「東高西低」に戻ろうとしていくのかもしれない。
グランアレグリアが勝てば、2005年のラインクラフト以来14年ぶり、史上2頭目の桜花賞との変則二冠制覇となる。
一方のアドマイヤマーズが勝てば、2011年のグランプリボス以来8年ぶり、史上2頭目の2歳王者による勝利となる。
どちらも、大きな勲章を獲りに来る。3歳春のマイル王決定戦にふさわしい。
両者の直接対決となった朝日杯では、ミルコ・デムーロ騎手のアドマイヤマーズが直線で一気に馬体を寄せるという、牡馬の強豪が牝馬を負かすにはこうする、というお手本のような競馬をした。
アドマイヤマーズの父ダイワメジャーも、ジリジリと相手にプレッシャーをかけて競り落とす走りは天下一品だった。2006年のマイルチャンピオンシップなどは、外から追い込んできたダンスインザムードが、先に抜け出したダイワメジャーに馬体を併せそうになると自分からブレーキをかけたように見えた。
翌2007年の安田記念では、ゴール前で粘るコンゴウリキシオーを「格」で競り落とし、マイルチャンピオンシップでは、スーパーホーネットが伸びたぶんだけ自分も伸びて、相手の戦意を喪失させるかのような勝ち方をしてみせた。
ダイワメジャーはサンデーサイレンスの直仔なのだが、自身の走りも、また、産駒に伝える強さも、サンデー系特有の瞬発力以上に、母の父ノーザンテースト譲りの、タフで、粘り強いところが目立つ。というのは、実は社台スタリオンステーションの徳武英介さんの受け売りだ。徳武さんが言う「丈夫で長もち」というノーザンテーストのよさと、競り合いながら相手の瞬発力を封じる魔力のようなものを、おそらくアドマイヤマーズは受け継いでいる。
ダイワメジャーに乗っていたデムーロ騎手も、もちろんそれを感じているだろう。
グランアレグリアのクリストフ・ルメール騎手は、朝日杯と同じ轍を踏まないよう、桜花賞のように早めに動いて、一気に来られない競馬をするのではないか。そうなったらそうなったで、アドマイヤマーズに流れるダイワメジャーの血が騒ぐような気がする。
桜花賞の勝ち方が強烈だったし、今度は斤量差が2キロになることなどから、1番人気になるのはグランアレグリアか。
ここはダイワメジャーの、いや、ノーザンテーストの血の力を信じ、アドマイヤマーズの単勝と、グランアレグリアとの馬連1点で勝負したい。