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【三浦皇成×藤岡佑介】第4回『近づいているGIの足音 その瞬間のために今やっておくべきこと』

  • 2019年05月15日(水) 18時02分
with 佑

▲平成元年生まれの三浦皇成騎手との対談も、今回がいよいよ最終回 (C)netkeiba.com


平成と令和をまたいでの今回の『with 佑』。平成元年生まれの三浦皇成騎手との対談も、今回がいよいよ最終回です。「取材でこんなに馬のことや競馬のことを話したのは初めて」と、本音をもらした三浦騎手。そう、最後に語り合ったテーマこそ“GI”。佑介騎手自身、GIを勝つことを今や遅しと待たれていた経験の持ち主。同じ境遇の三浦騎手の気持ちは誰よりもわかります。先輩として三浦騎手に伝えたいこととは。

(取材・文=不破由妃子)


今の自分には何が足りないのか、ファンや関係者になったつもりで自分を分析


──佑介さんは去年の年明けからリズムがよくて、たしかGIの足音が聞こえていたとおっしゃってましたよね。皇成さんも今年は聞こえているのでは?

佑介 そうそう、そういう予感みたいなものがあるんじゃないの?

三浦 ん〜、それはまだ…。ただ、皐月賞のメイショウテンゲンでいうと、去年までの僕だったら絶対に声が掛からなかったと思うんです。結果は残念でしたが(15着)、勝ち星だけでも関東の上のほうにいると、こうやって流れがくるんだなとは思いました。逆にいうと、こうやって巡ってくるチャンスをモノにしないとっていうのはありますね。

──去年はGIでコンマ1秒差3着が3回ありましたよね。ホントにもう一歩で。

三浦 そうでしたね。さっき話したクリストフの影響もあって、ゲートが開いてからの流れのなかで、自然とレースを組み立てられるようになったような気はしています。

 それができたときは、やっぱりいいレースができていますし、そういう流れが見えないときは結果もよくない。だからあの3戦に関しては、今思い返しても冷静でしたね。でも、それでも勝てないのが現実で。まだまだ足りないものがある証拠です。

佑介 GIを勝つ前、先輩からはずっと「最初は“あ、勝っちゃった”でいいんだよ」って教えられてきた。「一度勝てば、GIの勝ち方がわかるから」って。でも、俺の場合、もうまぐれじゃ勝てない感じになってきて。

 やっぱりGIで勝てるポジション、勝てる競馬をより意識して、数を乗っていかないとダメだと思った。それで、一昨年はチャンスが少ないと思える馬でも、それこそ18番人気の馬でも、チャンスをもらえる限りはとにかく積極的にGIに乗るようにして。

with 佑

▲佑介騎手「チャンスをもらえる限りはとにかく積極的にGIに乗るようにして」 (C)netkeiba.com


──年間GI騎乗数でいうと、2016年の2鞍から2017年は11鞍と激増しましたものね。

佑介 はい。もう半ば無理矢理にでも乗るようにしました。そのなかで、「この流れだとこうやって負けるのか」とか「今回のポジション取りは、勝てる能力のある馬だったら勝っていたかも」とか、負け続けることで見えてきたことがあって。皇成も今、見えてきているものがあるなら、あとは巡り合わせだけだと思うから。

三浦 目の前のGI、翌週のGIではなくて、もっと先を見据えて取り組んできたということですよね。できそうでできないことだから、やっぱりすごいな。

佑介 目の前のことに囚われすぎて失敗してきたから。当然、その時々で結果を出さなくちゃいけないんだけど、そればかりに固執してしまうと、「今日は上手くいった」「今日は失敗した」っていうだけで終わってしまう。

三浦 わかります、考えなくなるんですよね。GIに限らずですけど、僕もそれに気づいて。それで、去年の夏の終わりくらいだったかな、今の自分には何が足りないのか、それこそ自分が馬主になったつもりで自分を評価してみたんです。

佑介 そこ大事だよね。昔から、皇成の競馬を見て「巧いな」と思うことが本当に多かった。でも、俺たちジョッキーにはその巧さが伝わるけど、はたして乗せる側の人間には伝わっているのかな…と思うところもあった。乗せる側にも伝わらないと、先につながらないからね。

三浦 そうなんですよね。だから、その立場になって自分を見たとき、勝つことというよりも、「勝つ意識」を見せることが大事なんじゃないかって。やっぱり、応援いただいているファンの皆さん、関係者の皆さんが、一度は「よし!行け!」って思うような競馬をしなければと思ったんですよね。

 それまでは、どちらかというと折り合い重視で、強い馬がいたらその馬の動きをある程度把握して、この馬についていけば自然と道が開くなと考えて…。

佑介 わかる。でも、道が開いたところでその馬を追い越せない(苦笑)。

三浦 そうなんですよ。だからそうではなくて、レースのなかで自分が目標にされるような組み立て方をしていかなくちゃいけないなって思ったんです。それで、トレーニングや競馬との向き合い方を夏の終わり頃から変えていったんですが、意外とすぐに馴染めたんですよね。

佑介 なるほどねぇ。クリストフの存在も大きかったと思うけど、やっぱりそういう考え方の転換みたいなきっかけがあったんだ。すごくわかるよ。俺も同じだったもん。

三浦 「調教に乗ってもらっているから競馬も」っていう流れには限界がありますよね。僕の体はひとつであって、必然的に調教に乗る回数は限られますから。やっぱり自然とね、「皇成、空いてないかな」って言われる騎手になりたいなって。

──でも、去年のクリンチャーやシュヴァルグランあたりは、そういう流れで皇成さんに白羽の矢が立ったのでは?

三浦 ん〜、ケガから1年ぶりに復帰したという影響もあったかと思います。「つらい思いをしたのに頑張ったな」って、自分が思っていた以上に応援してくださった方がたくさんいましたから。本当にありがたいですよね。

 ただ、僕としては、ケガのことは早く忘れてもらわないと。「そんなことあったっけ?」って、忘れてもらえるくらいにならなくちゃと思います。

with 佑

▲三浦騎手「自分が思っていた以上に応援してくださった方がたくさんいて」 (C)netkeiba.com


佑介 復帰してもう1年半だもんな。昨日、皇成が送ってくれたリハビリ中の映像を改めて観ていたんだけど、頭がすごく大きく見えるくらい体が細くて。そんな状態からよく戻ってきたなと思ったよ。

三浦 まさにマッチ棒みたいな感じでしたからね(笑)。今はもう誰よりも僕自身がケガを引きずってないんです。今もプレートが入っているんですけど、たまに「いつプレート抜くの?」って聞かれたりしたときに、「あ、そういえば俺、プレート入っているんだ」みたいな感じで(笑)。

 休んでいるあいだにしても、大変だったのは僕よりも家族。本当につらかっただろうなと思います。今、こうして競馬に集中できているのも家族のおかげです。だから、本当に頑張らないと!

佑介 今日話して改めて思ったけど、もう機は熟したでしょう。さっきも言ったけど、GIに関しては、あとはもう巡り合わせだけだよ。みんな待ってるよ、きっと。俺ですら、こんなにたくさんの人がこの瞬間を待っていてくれたんだってビックリしたくらいだから、皇成がGIを勝った日にはとんでもないことになると思うよ。

 まぁ皇成の場合、ひとつ勝ったらポンポン勝ちそうな気がするから、もうちょっと引っ張ってくれてもいいよ(笑)。

三浦 いやいやいやいや、これ以上引っ張りたくない!

佑介 あと、GI初勝利までの連敗記録はまだまだ俺のほうが上だから、それを超えてくれてもいいよ。俺はね、83連敗したからね。最長らしい(苦笑)。

三浦 かんべんしてください(苦笑)。

佑介 今年は関東リーディングも視野に入っているしね。

三浦 いや〜、戸崎さん凄いからなぁ…。でも、GIは勝っていないから「GI、GI」言われるわけですけど、リーディングを期待されるのは数を勝っているからこそ。この流れを大事にして、絶対に2019年を飛躍の年にしなければと思っています。

佑介 皇成、今日はありがとう。皇成はホントに発言の内容が変わったよ。大人になった。まぁ大人なんだけど(笑)。

三浦 これでも一応、親なので(笑)。いや〜、取材でこんなに馬のことや競馬のことを話したのは初めてです。こちらこそ、ありがとうございました。

with 佑

▲「取材でこんなに馬のことや競馬のことを話したのは初めてです」と三浦騎手、ご登場ありがとうございました! (C)netkeiba.com


(文中敬称略、了)
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JRAジョッキーの藤岡佑介がホスト役となり、騎手仲間や調教師、厩舎スタッフなど、ホースマンの本音に斬り込む対談企画。関係者からの人望も厚い藤岡佑介が、毎月ゲストの素顔や新たな一面をグイグイ引き出し、“ここでしか読めない”深い競馬トークを繰り広げます。

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1986年3月17日、滋賀県生まれ。父・健一はJRAの調教師、弟・康太もJRAジョッキーという競馬一家。2004年にデビュー。同期は川田将雅、吉田隼人、津村明秀ら。同年に35勝を挙げJRA賞最多勝利新人騎手を獲得。2005年、アズマサンダースで京都牝馬Sを勝利し重賞初制覇。2013年の長期フランス遠征で、海外初勝利をマーク。2018年には、ケイアイノーテックでNHKマイルCに勝利。GI初制覇を飾った。

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