▲番外編「競馬で振り返る“平成の衝撃!”」をお届け (C)netkeiba.com
平成元年生まれの三浦皇成騎手をゲストにお迎えし、平成と令和をまたいで掲載してきた今回の『with 佑』。最後に番外編として「競馬で振り返る“平成の衝撃!”」をお届けします。現役ジョッキー2人が身をもって体感した、平成を代表する名馬たちの衝撃を語ります。
(取材・文=不破由妃子)
まさに競走馬として“プロ”
──平成と令和を跨いでの掲載となった今回の『with 佑』ですが、最後に番外編として「競馬で振り返る“平成の衝撃!”」と題し、お二人がレースや馬から受けた“衝撃”について伺っていきたいと思います。
佑介 衝撃的だったレースといえば、僕はディープインパクトの新馬戦ですね(2004年12月19日・阪神5R)。僕も同じレースに騎乗していて(アキノセイハ6着)、後ろからディープの走りを見ていたんですが、直線に入ったらみるみるディープの姿が離れていって。
表現するとしたらホントに“ビューン!”ていう感じで、すごかったんですよ。ゴールしたあとも全然止まらなくて、豊さんに「すごいですね、この馬」って言ったら、豊さんがひと言「化け物やわ」って。
▲ダービー優勝時のディープインパクト (撮影:下野雄規)
三浦 ディープインパクトで僕が衝撃的だったのは、負けてしまった有馬記念(2005年)ですね。僕はまだ競馬学校生で、関係者席で赤帽を被って観ていたんです。もうね、ゴール前は凍り付きましたよ。「あのディープが負けるんだ…」と思って。
佑介 確かに、あのレースもある意味衝撃だったな。
三浦 僕が衝撃を受けたのは、レースではないんですけど、アーモンドアイのジャパンCの追い切りですね。普段から国枝厩舎の調教には乗せてもらっていて、あの日も厩舎の馬に跨っていたんです。そうしたら、国枝先生に「お前、先導しろ」って言われて。
佑介 怖い…(苦笑)。
三浦 まさに「えっ!?」っていう感じで。あんなに緊張する追い切りは初めてでしたよ。
佑介 間近で見たアーモンドアイの走りはどうだった?
三浦 いや、本当にすごかったです。僕を抜いていくときの走りを見て、ケタが違うってこういうことなんだなと思いました。アーモンドアイが新馬戦で負けたあと、ある先輩騎手が「あの馬は新馬の前から見ているけど、本当に化け物だと思うよ」って言ってたんです。その言葉を思い出して、その通りだなと。
佑介 (池添)謙くんも言ってたよ。確か桜花賞の追い切りのときに一緒に乗っていて、「これは絶対に勝つなと思った」って。
三浦 わかります。ホントにもう「すごいッ!」の一言でしたもん。ジョッキーになってから一番の衝撃だったといっても過言ではないかもしれません。
佑介 (ノーザンファーム天栄の場長である)木實谷さんのインタビューを見たら、「レースのあとは毎回フラフラになっていて、回復に時間が掛かる」って話していて。それもすごいなと思った。馬は賢い生き物だから、普通はしんどい思いをしたら限界まで走らなくなるものなんだけど。
三浦 人間も一緒ですよね。つらい思いをすると、もう同じ経験をするのは嫌だなと思ってブレーキを掛けるようになる。でも、アーモンドアイにはそれがない。
佑介 うん。秋華賞のあと、確かに木實谷さんが言うような状態に見えて、さすがにしんどかったんだなと思った。だから、まさかジャパンCであそこまで走るとは(笑)。
▲驚異のレコードで古馬牡馬をも撃破したジャパンC (撮影:下野雄規)
──昨年末の『with 佑』で、アーモンドアイの2着を三度経験している川田さんが「まだ本気で走っていないように見える」とおっしゃっていましたよね。
佑介 そう思わせるところがまたすごくないですか? サーッと走っているように見えるけど、終わったらフラフラみたいな。まさに競走馬として“プロ”ですよね。
三浦 ですね。プロ中のプロ!
佑介 “平成の衝撃”といったら、やっぱりディープインパクトとアーモンドアイだよね。まぁ個人的な思い入れとしてはエアグルーヴだけど…。子供の頃から厩舎に会いに行ったりして、本当に大好きだった。
──エアグルーヴが天皇賞(秋)を勝った当時は、近年のような“牝馬の時代”がくるとは思いませんでしたからね。
佑介 そうですよね。だから、エアグルーヴはその先駆けなのかなと思います。あと、“平成の衝撃・ジョッキー編”でいえば、三浦皇成でしょう(笑)。
三浦 そういうの、止めてくださいよ!
佑介 だって、豊さんは昭和と平成を股にかけているわけだから、平成に限ったインパクトでいえば、俺のなかでは皇成一択だよ。
三浦 いや、僕は菜七子だと思います! お願いですから、僕をその枠に入れないでください…(苦笑)。
(文中敬称略、了)