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【中京記念】異色なメンバー構成が、ストレートに象徴される結果に

  • 2019年07月22日(月) 18時00分

前走から5kg減、軽ハンデを活かしたNHKマイルC組によるワンツー


「3歳-3歳-4歳」の1-3着独占は、例年とは組み合わせの色彩が異なっていたことをストレートに象徴する結果だった。

 7月に移った2012年以降、4歳馬は【0-0-2-7】、3歳馬は【0-0-0-4】にとどまったが、3歳のGI好走グループや、昨年まで降級制度があっても引きつづきオープンの4歳馬(獲得賞金十分の力量馬)も、夏の休養に入る時期にあたる。だから、出走数がごく少ない。

 しかし、今年はNHKマイルC組の3歳馬が3頭も出走してきた。重賞を狙うオープン馬を擁する厩舎は、前半戦、あるいは1年間の出走レース予定のカレンダーを作成する。

 最初、中京記念は主要路線ではない時期外れのハンデGIII重賞だった。でも数年して3歳馬が想定以上の軽ハンデで出走でき、かつ手薄な重賞であることが判明する。見逃す手はない。

 古馬フラガラッハで12年から中京記念を「1着、1着、10着」している松永幹夫調教師は、今年のグルーヴィット(父ロードカナロア)が3月のファルコンS(中京1400m)を2着したあたりで、NHKマイルCの結果しだいで「→中京記念」を予定表に書き込んでいたのではないか(と想像できる)。見事に勝ったので、夏のマイルシリーズは自重とされる。

重賞レース回顧

調教師の緻密なマネジメントのもとで勝利したグルーヴィット(c)netkeiba.com


 52kgの3歳馬グルーヴィットが勝ち、同じく52kgの3歳馬クリノガウディー(父スクリーンヒーロー)が2着したとなっては、来年からはもう、3歳馬の出てこない重賞ではなくなるだろう。まだまだ総合力では見劣るのは事実だが、馬齢56kgや定量57kgの重賞でそれなりのレースをした期待の3歳馬が、52-53kgで挑戦可能なのである。

 4コーナーを回った地点では、やっぱり勝つのは人気のプリモシーン(父ディープインパクト)かと思えたが、ゴール寸前で55.5kgのハンデ(牡馬なら57.5kgに相当)が堪えたというより、渋馬場で懸命に追いすがってきた3歳馬の軽ハンデに抗しきれなかった。

 差しの決まりにくい芝を考慮し、早め早めに進出したのは正解だったが、レース全体のバランス「46秒7-46秒9」=1分33秒6以上に、稍重馬場のため最後の2ハロン「11秒9-12秒3」のしのぎ合いが厳しかった。1-2着馬が鋭く伸びたのではなく、プリモシーンの脚さばきがちょっと鈍っただけだろう。栗東入厩をクリアし、馬体は文句なしだったが、落ち着き払った状態というより、前回ほど気迫が前面に出なかった印象はある。3月のダービー卿CTも、惜敗のヴィクトリアマイルも絶好調に近かった。牝馬が好調期間を続けるのは改めて至難を思わせた。ベストの左回りのマイル戦とあって、ここを勝ちにきたのはゴール寸前まで正解だった。だが、例年以上に長引いた梅雨が味方しなかった。

 勝ったグルーヴィットは3コーナー過ぎからだいぶもたついたが、NHKマイルCから5kg減は大きい。NHKマイルCはグランアレグリアの斜行降着(ダノンチェイサー)の真後ろにいたのがこの馬。そのあとも進路がなかったから、2度の不利に近かった。今回の52kgは残った記録以上に有利だったろう。加えて、あの手応えで最後まで鈍らなかったあたりが、ダイナカール→エアグルーヴのファミリーの真価と思える。身体つきはまだ幼く映る。秋にはさらに成長するだろう。

 種牡馬ロードカナロアはアーモンドアイ、サートゥルナーリアなど、産駒のこなせる距離の幅が広く、素晴らしい種牡馬としてますます評価を高めることになるが、ここまでに制したJRA重賞は17レース。2000m以上の5鞍はアーモンドアイと、サートゥルナーリアの2頭によるもので、残る12の重賞勝ちは1800m以下(1600mで7勝)となった。このあたりをうまく見きわめたい。

 2着クリノガウディーは、ここ3戦カッカして行き過ぎていたが、ようやく朝日杯FS時と同じようにためて差す形が取れた。決してたまたまではない。行けなくても少しも慌てなかった森裕太朗騎手(22)の好騎乗だった。

 通ったコースによって明暗の分かれるちょっと特殊な馬場状態だった。カテドラル(父ハーツクライ)は、中京の重馬場の新馬2000mを勝っているので、渋馬場は大丈夫と思われたが、新馬戦は相手のレベルもある。実際は苦手だったのかもしれない。また、この日の少しずつ回復しかけた稍重の芝は、一見、芝の良さそうな馬場の中ほどを選んだ馬は他のレースでも不発だった。なぜか、荒れていそうなインが伸びた。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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