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【函館2歳S】道営所属馬3頭の出走レポート

  • 2019年07月24日(水) 18時00分

芝はこれが初めてで、とにかく健闘を祈ったが…


 先月中旬にスタートした函館開催も、21日(日)で終了した。かつて8週間あった開催期間が6週間に短縮されただけだが、ひどく短く感じるようになった。7月は初旬から週刻みでサラブレッド市場が続くため、八戸→セレクトセール→セレクションと追いかけているうちに、あっという間に最終週を迎えるといった印象が強い。

 せめて最終週の函館2歳ステークスくらいは見たいと思い、今回は思い切って出かけてきた。同じ日高管内でも、私宅のある浦河からだと函館まではかなりの距離になる。今は日高町厚賀から高速道路に乗れるので、一般国道を走るのは約360キロのうちのせいぜい4分の1程度だが、それでも所用時間は5時間。北海道の広さを改めて実感させられる。

 さて、函館競馬場。21日は、晴れたり曇ったりの天候で、風が心地よく吹き、快適であった。函館2歳ステークスには、門別から道営所属馬3頭も出走するというので、どんなレースを見せてくれるのかという興味もあった。アザワク(父カレンブラックヒル)、プリモジョーカー(父スズカコーズウェイ)、バブルガムダンサー(父パイロ)の3頭で、いずれも牝馬である。

生産地便り

アザワク(父カレンブラックヒル)

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プリモジョーカー(父スズカコーズウェイ)

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バブルガムダンサー(父パイロ)

 3頭とも角川秀樹厩舎の管理馬で、アザワクには桑村真明騎手、プリモジョーカーには阿部龍騎手が騎乗することになっている。バブルガムダンサーは中央の岩田康成騎手とのコンビでレースに臨む。

 阿部龍騎手は、この日第3レースの3歳未勝利戦(ダート1000m)、キュウドウクンに騎乗し、嬉しい中央初勝利を飾った。またこれが今年の地方所属騎手による中央競馬での勝利第1号でもあった。この勢いに乗じて、函館2歳ステークスでも好勝負を演じてくれるのでは、との期待が膨らんだ。

 函館2歳ステークスは数えてこれで51回目。16頭がエントリーし、レッドヴェイパー(父キンシャサノキセキ)が1番人気の2.8倍。続いてタイセイビジョン(父タートルボウル)が4.1倍の2番人気。以下、パフェムリ(父ヴィクトワールピサ)が6.1倍、ビアンフェ(父キズナ)が7.0倍と続く。抜けた圧倒的な主軸馬がおらず、やや混戦ムードであった。

 そんな中、道営からの遠征馬は、アザワクが7番人気の21.5倍、バブルガムダンサーとプリモジョーカーはそれぞれ14番、15番人気と評価が低かった。

 普段、門別競馬場で取材をしている何人かの知人に事前の予想を聞いてみたが、一様に「とにかく初芝だから、走ってみなければ分からない。適性があるのかどうかは、ダートの走り方だけではとても判断できない」という意見が多かった。アザワクは父カレンブラックヒルで、サイアーラインから芝適性ありと判断された結果、7番人気まで支持を集めたものか。あるいは母のヒバリエクスプレスが盛岡の芝コース(1000m)で勝利を収めていることも評価されたのだろうか。

 プリモジョーカーとバブルガムダンサーは、どちらもダート適性の高そうな血統ではある。プリモジョーカーは北海道2歳優駿を制したイグナシオドーロが半兄であり、バブルガムダンサーは、母オノユウが門別でエーデルワイス賞を含む3重賞を勝った実績馬である。道営勢3頭はいずれもすでに2勝を挙げているが、芝はこれが初めてで、とにかく健闘を祈るしかなかった。

 レースは、ゲート入りの段階でやや波乱があった。1番ビアンフェが枠入りを嫌がり手こずっている様子はビジョンを通じて確認できたが、何とその向こう側で9番マンバーが枠内で暴れ、左後肢を負傷したことから発走が延びたのだ。

 結局、マンバーは発走除外となり、残る15頭でのレースになった。レースは周知の通り、終始先手を取ったビアンフェが、先頭で4コーナーを回ると、直線でも向かい風をものともせずに危なげなくリードを保ったまま1着でゴールインした。2着は後方から一気に追い上げてきたタイセイビジョンが1馬身4分の3まで迫ったものの、届かなかった。

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函館2歳Sを制したビアンフェ

 1番人気のレッドヴェイパーは5着、そして道営勢は、9着にプリモジョーカー、12着にアザワク、15着にバブルガムダンサーという結果であった。

 このレースを制したビアンフェは、父キズナ、母ルシュクル(母の父サクラバクシンオー)の牡鹿毛。栗東・中竹厩舎の管理馬で、馬主は前田幸貴氏、生産者は新冠・(株)ノースヒルズ。母ルシュクルはすずらん賞など中央3勝馬で、本馬の半姉ブランボヌールも2015年にこのレースを制している。終わってみれば、ビアンフェの強い勝ち方が印象に残ったレースであった。また、父キズナは初年度産駒からいきなり重賞勝ち馬を輩出したことになり、絶好のスタートを切ったと言える。

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函館2歳S口取りの様子

 さて、余談をひとつ。函館の第7レース(3歳以上1勝クラス、ダート1000m)、第8レース(芝1800m)と立て続けに、今年デビューしたばかりの新人騎手2人が勝っていた。第7レースは菅原明良騎手、第8レースは団野大成騎手がそれぞれ騎乗し、見事な手綱さばきを披露した。坊主頭からまだ十分に髪が伸び切っていない風貌にも、初々しさが滲み出ていて、好感が持てた。

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函館第7Rを制した菅原明良騎手

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ファンにサインをする菅原明良騎手

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函館第8Rを制した団野大成騎手

 ご本人はもう忘れているかもしれないが、菅原明良騎手は、去る2013年秋の第5回ジョッキーベイビーズに出場しており、私事ながらその年の9月23日に世田谷の馬事公苑で行なわれた関東地区予選にも足を運んで現地観戦し、後日彼にその時の写真をプレゼントしたことがある。

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2013年秋のジョッキーベイビーズ出場時の菅原明良騎手

 以来6年。関東地区代表としてともにジョッキーベイビーズに出場した菅原明良君と斎藤新君は、ご存じのようにどちらもその後競馬学校騎手課程に進学し、今春、晴れてプロとしてデビューしたばかりである。すっかり見違えるように成長した菅原明良騎手を間近で見て、6年前のことを思い出さずにはいられなかった。今年のジョッキーベイビーズは来る10月13日、東京競馬場にて開催予定である。すでに沖縄を皮切りに地区予選がスタートしており、今週末にはここ北海道地区でも代表が決定する。次回はその模様について触れたい。

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関東地区代表として2013年に出場した菅原明良騎手と斎藤新騎手

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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