▲クラスターCに騎乗したデビュー2年目の落合騎手
コパノキッキング・藤田菜七子騎手とヒロシゲゴールド・武豊騎手参戦で盛り上がった今月のクラスターカップ(JpnIII、盛岡)。私はとあるベテラン馬と若手騎手のコンビに注目していました。
それは9歳馬のメイショウアイアンとデビュー2年目の落合玄太騎手(門別)。2走前にはダートグレードレースで2着に入り、同馬を管理し落合騎手の師匠でもある田中淳司調教師は「クラスターCでダートグレードを勝たせたい」と意気込みました。結果は7着とほろ苦いものになりましたが、ベテラン馬と若手騎手の真夏の戦いを振り返ってみましょう。
デビュー年に新記録樹立
愛知県出身の落合騎手は乗馬を習っていたことから騎手を目指します。高校2年生の時に地方競馬教養センターに合格。2018年、ホッカイドウ競馬の田中淳司厩舎からデビューしました。
田中厩舎はホッカイドウ競馬で2015年から毎年リーディングに輝くトップ厩舎。活躍馬も多い一方、服部茂史騎手と岩橋勇二騎手というリーディング上位騎手も所属している大所帯です。
そういった環境で落合騎手は兄弟子の背中を見て学びながら1年目から活躍を見せ、門別競馬場のシーズン中(4月から11月)に挙げた勝ち星は57勝。これはホッカイドウ競馬の新人騎手年間最多勝の新記録でもありました。さらに、日本プロスポーツ大賞新人賞も受賞。授賞式会場には大賞を受賞した大谷翔平選手などもいらっしゃり、「すごい方たちばかりで圧倒されました。とても楽しかったです」と有意義な時間を過ごしたようでした。
デビュー2年目を迎えた落合騎手は今年6月6日、自厩舎のメイショウアイアンと共に北海道スプリントカップ(JpnIII)に挑みました。
大外枠から好スタートを切ると中団でレースを運び、直線で脚を伸ばして2着。勝ち馬ヤマニンアンプリメからは3馬身差ながら、JRAの人馬に混じり存在感を示したのでした。
そして、翌月、地元重賞・グランシャリオ門別スプリントに同じコンビで出走。内枠からロスなく進み、直線で外に持ち出すとゴール前でひと伸びして差し切り勝ちを決めました。これが落合騎手にとっては重賞初制覇で、ゴールの瞬間は小さくガッツポーズをして喜びを表しました。
田中師にとっても弟子の重賞初制覇は嬉しいもので、
「(落合)玄太で勝てたことが、なおさら嬉しいです。この後はクラスターCでダートグレードレースを勝たせたいです!」と話しました。
「メイショウアイアンと一緒にがんばりたかった」
迎えたクラスターC当日、落合騎手は直前のレースでエキストラ騎乗を行いました。結果は2着ながら、当日の馬場状態やコースを体感できたことはいい経験になったはず。
▲9Rでエキストラ騎乗を行って2着
コパノキッキング・藤田菜七子騎手やヒロシゲゴールド・武豊騎手の参戦もあり、前年比183.3%のファンが詰めかけた盛岡競馬場で落合騎手は堂々とパドックを周回し、返し馬へと入りました。
▲沢山のファンに囲まれながら堂々とパドックを周回
レースはメイショウアイアンがクビ一つ出る好スタートを決めましたが、内からコパノキッキングやヒロシゲゴールドなど有力馬が行くのを見て、先行集団の後ろに控えます。
「いつもしまいだけの馬だから、勝負をするためにある程度、前で競馬をしてみようと話していたんです」と田中師。
砂を被ると嫌がる面のある同馬にとって外から2番目の13番枠はいいように思えました。
ところが展開的に内に入れられるタイミングがなく、コーナーを4頭外で回らざるを得なくなってしまいました。
手応え良く直線に向きましたが、内から抜け出したヤマニンアンプリメを捕らえることはできず、勝ったヤマニンアンプリメからは0.9秒、地方馬最先着の5着ブルドッグボスからハナ+ハナの7着でした。
「コーナーに入る時、内から勝った岩田(康誠)さんが伸びてきていたので、砂を被ってでも内に入れたら良かったかな、と結果的に思います。相手は強かったですが、メイショウアイアンは毎回こうやってがんばってくれます。今回も一緒に頑張れたらよかったですけど…」
落合騎手は唇を噛みました。
▲結果は悔しい7着…
その姿を近くで見ていた田中師は「乗り役もこういう舞台に慣れていないせいもあるかもしれませんが、外々を回らされちゃって、今日はしまいに脚を使わなかったですね。状態は変わらず良かったですし、9歳馬とは思えない馬体でパドックを周回していたので、ちょっと色気を持っていました。ワンターンがいい馬なので、この後は10月8日の道営スプリントを狙って、その後に遠征を考えたいと思います」。
クラスターCは悔しい結果となりましたが、メイショウアイアンとのコンビに限らず、これからの落合騎手の活躍に注目したいと思います。
▲師匠の田中調教師と共に、これからの活躍に注目!