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北海道で新人騎手が1日5勝

  • 2019年08月27日(火) 18時00分

今年デビュー組では最多勝、どこまで勝利数を伸ばせるか


 7月30日付のこのコラムでは、『あっぱれ!新人騎手が1日4勝』として浦和・福原杏騎手を取り上げたが、それをさらに上回る“あっぱれ!”が同期の新人によって達成された。

 ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)トライアルラウンドが行われていた8月21日の門別競馬場で、地元の小野楓馬(おの・ふうま)騎手がなんと、1日5勝をマークした。

YJSトライアルラウンド門別に出場した小野楓馬騎手(後列左から2人目)。この日5勝の活躍


 この日は、YJS出場騎手でエキストラ騎乗の機会を得た騎手も少なくなく、第1レースでは藤田凌騎手(大井)が勝利。さらに第2レースでは、地元の落合玄太騎手が勝ち、2着が1番人気に支持された福原杏騎手(浦和)と、前半のレースからYJS出場騎手の活躍が目立っていた。

 そして第5レース、縦長の中団から徐々に位置取りを上げてきた小野楓馬騎手が、逃げ込みを図る馬をゴール寸前でクビ差とらえて勝利。このときはまだ、見習騎手の活躍が目立つなあという程度だったのだが、小野騎手の快進撃はここから始まっていた。

 続く第6レース、小野騎手は4番人気ながら好位から直線で抜け出して快勝。さらに第7レースでは果敢にハナを奪うと後続を寄せ付けず2着に4馬身差をつけての逃げ切り。まさに変幻自在の騎乗で3連勝とした。

 しかしこれだけでは止まらなかった。第8レースには騎乗がなく、第9レースでは3コーナー過ぎで先頭に立つと直線は独走となって2着に5馬身差、騎乗機会4連勝とした。

 迎えた第10レースはヤングジョッキーズシリーズの第1戦。ここは見せ場なく10着に破れ、連勝は途切れた。続く第11レースも7着だった。

 そして最終12レースはヤングジョッキーズシリーズ第2戦の1800m戦。人気上位が単勝4倍台に4頭という混戦で、小野騎手はその中の1頭。すんなりと先頭に立っての逃げに思われたが、掛かり気味に1頭が競りかけてきた。2頭が併走して先行し、向正面では3番手に6、7馬身もの差がついた。明らかにオーバーペースで前潰れのパターン。に、思えた。

 掛かって競りかけてきた馬は3コーナーあたりで失速し、小野騎手は単独先頭。直線を向いたところで後続2頭が直後に迫り、もはやここまでに思われた。しかし、再び後続との差を広げた。迫った2頭は逆に失速、代わって後方から追い込んで来た2頭を振り切っての勝利で、この日の5勝目となった。

 「なるべく馬をなだめることを考えながら、終いはしっかり追ってくることを考えました」とレース後に話していた小野騎手。掛かった馬が並びかけてきても慌てず騒がず。その馬が失速した3、4コーナーでは息を入れることができ、そのぶん直線では、追ってきた後続を突き放す余裕があった。

 小野騎手は静内の出身だけに、この日は家族総出で応援に来ており、家族と記念の口取りに収まった。

 父が静内の牧場で働いていたこともあり、子供の頃から馬に親しんでいたという。静内農業高校では馬術部に在籍、騎手課程の試験に受かったことから、2年までで中退でして地方競馬教養センターに入所。そのときすでに北海道の小野望厩舎への所属が決まっていた。名字は同じだが血縁関係はない。

 デビュー前にひとつの目標として「1年目30勝」を挙げていたのだが、この勝利で早くも26勝。今年デビューした新人騎手では、ここまで最多勝だ。目標達成はほぼ確実で、残り3カ月弱のホッカイドウ競馬のシーズン中にどこまでその数字を伸ばせるか。

 そしてもうひとつ目標として掲げていたのが、「ヤングジョッキーズシリーズのファイナルに一度は出場したい」というもの。ヤングジョッキーズシリーズ・トライアルラウンドは、全騎乗の中で着順上位の4レース分の合計ポイントによって争われるが、今年はデビューした新人騎手の人数が多かったことに加え、南関東のルール変更で減量が復活した騎手がいたことで、出場騎手が増えた。そのため地方騎手の騎乗機会は、予定どおりなら各騎手4レースか5レース。昨年の6〜8レースに比べるといかにも少ない。昨年ならいくつか着外があってもノーカウントとなったが、今年は失敗がほとんど許されない。

 次回、小野騎手が出場するのは、トライアルラウンド最終戦の川崎(11月19日)での2レース。もうひとつの目標が達成できるかどうか、注目だ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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