アイルランドの“出世レース”2歳G1ナショナルSに注目
来春の英2000ギニー上位人気に推される3頭が集結!
今週末は、アイルランドで6つのG1を含む10重賞が組まれた「アイリッシュ・チャンピオンズ・ウィークエンド」が開催される他、イギリスでは3歳3冠最終戦のG1セントレジャー(芝14F115y)が、そしてフランスでは凱旋門賞プレップが行われるなど、見逃せないカードが目白押しだ。
日本のファンにとっては言うまでもなく、日本産の日本調教馬として初めての英国G1制覇を果たしたディアドラ(牝5、父ハービンジャー)が出走する14日のG1愛チャンピオンS(芝10F、レパーズタウン競馬場)が必見のレースとなるだろうが、これと負けないほど大きな注目が集まっているのが、翌15日にカラ競馬場で行われる2歳馬のG1ナショナルS(芝7F)だ。来春のG1英二千ギニー(芝8F)で上位人気に推されている3頭が、ここで勢揃いする予定なのだ。
1849年に創設されたナショナルSは、アイルランドにおける「出世レース」として知られており、それが証拠にこのレースの最多勝調教師は、なんと15回も優勝しているヴィンセント・オブライエンである。すなわち、伝説の伯楽ヴィンセント・オブライエン師が手掛けた、サーアイヴァー、ロベルト、エルグランセニョール、ローソサエティといったクラシックホースたちが、2歳時に制しているのがこのレースなのだ。ヴィンセント・オブライエン師が亡くなった2009年以降、このレースは正式名称は「ヴィンセント・オブライエン・ナショナルS」に改められている。
過去10年に限っても、パワー、ドーンアプローチ、グレンイーグルス、チャーチルと、4頭の勝ち馬が翌春の3歳クラシックを制しており、出世レースとしての伝統はしっかりと守られている。今年のこのレースで1番人気が予想され、そして来春の英二千ギニーの前売りでもオッズ3.5〜4.0倍の1番人気に推されているのが、チャーリー・アップルビー厩舎のピナトゥボ(牡2、父シャマーダル)だ。ゴドルフィンの自家生産馬で、ロンシャンのLRラセーヌ賞(芝2200m)勝ち馬ラヴァフローの3番仔となる同馬。
5月10日にウルヴァーハンプトンのメイドン(AW6F20y)でデビューし、ここを3.1/4馬身差で制して緒戦勝ち。続くエプソムの条件戦(芝6F3y)も連勝すると、ロイヤルアスコットのLRチェシェイムS(芝7F)を3.1/4馬身差で制し、3連勝で特別初制覇。そして、グロリアス・グッドウッド初日の7月30日に行なわれたG2ヴィンテージS(芝7F)を5馬身差で快勝して、重賞初制覇を果たしている。
続いて、来春の英二千ギニーへ向けた前売りでオッズ9〜12倍の2〜3番人気に推されているシスキン(牡2、父ファーストディフェンス)も、ここまで無敗で来ている逸材だ。こちらはカリッド・アブドゥーラ殿下のジャドモントによる自家生産馬で、従姉妹にG1パーソナルエンスンS(d9F)など北米で5つのG1を制し古牝馬チャンピオンとなったクローズハッチーズ、祖母の全兄に欧州牡馬2歳チャンピオンのザールがいる牝系の出身だ。ジャー・ライオンズ厩舎の所属となり、5月11日にナースのメイドン(芝6F)でデビュー。ここを2.3/4馬身差で制すると、続くカラのLRマーブルヒルS(芝6F)も2.1/2馬身差で制して連勝。重賞初挑戦となったカラのG2レイルウェイS(芝6F)も2.1/2馬身差で制し重賞初制覇。そして、8月9日にカラで行われたG1フェニックスS(芝6F)も勝って、4連勝でG1制覇を果たしている。
ナショナルSにおける同馬のポイントは、距離が1F伸びることだ。父はサラトガのG1フォアゴーS(d7F)勝ち馬で、牝系に流れる血を考えても7Fで止まってしまう血統構成ではないと思うが、母の父オアシスドリームの血が色濃く出てしまうと、手こずる可能性もありそうだ。
そして、来春の英二千ギニーへ向けた前売りでオッズ8〜13倍の2〜3番人気に推されているのが、エイダン・オブライエン厩舎のアーモリー(牡2、父ガリレオ)である。クールモアによる自家生産馬で、G1仏千ギニー(芝1600m)4着を含めて、重賞での入着を4回重ねたアフターの2番仔となるのがアーモリーだ。6月27日にカラで行われたメイドン(芝7F)を2.1/4馬身差で制し、デビュー2戦目で初勝利を挙げると、続いて出走したレパーズタウンのG3タイロスS(芝7F20y)を5馬身差で快勝して重賞初制覇。前走となったのが8月23日にカラで行われたG2フューチュリティS(芝7F)で、ここも勝って3連勝を果たしている。来春のギニー戦線を占う意味でも、目の離せない一戦となるG1ナショナルSに、日本の競馬ファンの皆様もぜひご注目いただきたい。