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【スプリンターズS】人馬一体の疾風が中山を駆け抜ける

  • 2019年09月28日(土) 18時00分

“不条理でも”思い切りのよい騎乗で


 G1に昇格した1990年からしばらくは芝コンディションの差もあり、逃げた馬が前半「32秒台」の高速で飛ばした記録が再三ある。だが、32秒台で逃げた馬は【0-0-0-7】だった。

 しかし、芝の整備方法が変わり、果敢に行くのも決して失敗ではないとなった最近20年では、6例の該当馬が【2-2-0-2】。06年テイクオーバーターゲット、09年ローレルゲレイロが逃げ切り、01年メジロダーリング、13年ハクサンムーンが2着している。過去20年の前半最速は01年、トロットスターのクビ差2着に粘った牝馬メジロダーリングの「32秒5-34秒5」=1分07秒0になる。32秒台で飛ばしての好走が多くなったのは、芝のコンディション変化だけでなく、スピード型のレベルアップも大きく関係する。

 今年の有力馬の1頭、4歳牝馬モズスーパーフレア(父Speightstown)は、コースを問わず前半32秒台で先行したこと計4回。うち、逃げた3回は「1、1、1」着。中山では今年1月に「32秒8-34秒2」=1分07秒0(武豊)。3月には「最速の32秒3-34秒8」=1分07秒1(ルメール)の逃げ切り勝ちがある。

 この2人の騎手は、ふつうは「速すぎる」とされる前半32秒台でも、なだめて手綱を引きセーブすることはしなかった。行く気にまかせてグングン気分良く行かせた。なだめて行っても、モズスーパーフレアの場合は追って味のあるタイプではない(典型的なアメリカ血統の快速型)であることを、最初から理解していたからだ。高松宮記念は疲れもあって状態?の失速なので別にすると、2人が乗ったケースは【3-0-0-0】になる。

 5、6走前と、前回は、若いジョッキーが巧みになだめ、ふつうは理にかなう常識的な逃げ(先行)作戦を取った。少しも落ち度はない。実際、好走はしている。やがては行くだけしかないモズスーパーフレアも、先行抜け出しや、タメ逃げで結果を出せる馬に成長するだろう。だが、現時点では他馬の楽な追走を許してしまうから、勝機は乏しいことになった。

 前回の敗因を、思い切りの良くない(心もち控えた)先行策にあったと改めて結論づけた音無調教師と、所属の松若騎手は、「思い切って行き切る」と同時に、「タメ逃げしては良くない」と再確認したと伝えられる。

 間隔をとったほうがいいタイプなので、北九州記念をステップに選び、プラス26kgで多分に余裕残りだった馬体をハード調教でしぼり、ここまで【3-1-0-0】の中山1200mのスプリンターズSに狙いを定めてきた。

 芝コンディションも微妙に異なれば、相手も異なる。前出の「1分07秒0-1」の逃げ切りを再現できるかどうか、計算通りに運ぶほど甘くない。失速の危険もある。

 ただし、今回の怖いライバルはみんな中山芝1200mの経験がない。モズスーパーフレア=松若風馬の疾風のような快走に注目したい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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