▲噂の“実況ジョッキー”がいよいよJRA初騎乗へ
“実況ジョッキー”が今週末、JRAで初騎乗を果たすかもしれません。昨年5月、当コラムで日本ダービーの架空実況を披露してくれた石堂響騎手(兵庫)。プロ顔負けのレース実況は当初、先輩がTwitterに動画をアップしたことから広がりを見せ、関西の朝夕の情報番組で特集されたり、今夏にはグリーンチャンネル特番に出演するなど、エンターテイナーとしての一面も覗かせます。一方、騎手としても昨年は園田・姫路競馬の新人騎手勝利記録も更新。そして今週末、武豊騎手に誓ったある夢が叶うかもしれません。
動画再生回数22万回!ネットで話題のジョッキーが架空実況京都競馬場で乗馬を習った日々
「やったー!秋華賞当日の京都競馬場に、自厩舎の馬で遠征できるかもしれません!」
▲嬉しいお知らせに思わず笑顔の石堂騎手
興奮した様子の石堂騎手から連絡が届いたのは約1週間前。
所属する長南和宏厩舎の2歳馬・ガミラスジャクソンで13日(日)京都9R紫菊賞に遠征予定だということでした。
地方馬がJRAに遠征する際、最も多いパターンはJRA認定レースを勝った2〜3歳馬が遠征すること。しかし、JRA認定レースは賞金が高いため出走馬のレベルも高く、勝つことはもちろん有力馬に騎乗することさえ若手騎手には難しいこととなります。そのため、若手騎手がJRAに遠征することはとてもハードルが高くなるのです。
そんな中、石堂騎手は見事にJRA認定レースを勝利してJRAへ……と、言いたいところなのですが、実はガミラスジャクソンでJRA認定レースを勝ったのは亀田温心騎手(JRA)。石堂騎手は同馬の新馬戦(4着)には騎乗していましたが、JRA認定レースでは同日のJRA交流レース騎乗のため園田競馬場に来ていた亀田騎手が乗って勝利したのでした。
実は石堂騎手と亀田騎手はジョッキーになる前からの縁。
「小学5年生から京都競馬場の乗馬スポーツ少年団に通っていたんですが、彼とはそこで一緒に乗馬をしていたんです」と石堂騎手。
▲中央の亀田温心騎手とは小学5年生の頃からお知り合い
1学年違いながら、共に汗を流していました。
今年7月のヤングジョッキーズシリーズ トライアルラウンド高知でも再会。初めて高知競馬場で騎乗した亀田騎手は「知っている人(石堂騎手)がいると、気持ちも少し楽になりますね」と旧友の存在に頬を緩めました。
10年前、武豊騎手に誓った夢
石堂騎手は乗馬スポーツ少年団に入団する前年、新聞の企画でスーパースターとの対面を果たしました。
「新聞に『お仕事ノート』というコラムがあって、いろんなお仕事をしている人に子供たちが会って質問をするというものでした。プロ野球選手やケーキ屋さんとかの中に騎手があるのを見つけて応募したら、当選。京都競馬場で最終レース後に武豊騎手に会わせていただいて、『馬の上に乗っているのは気持ちいいですか?』とか質問をしました。でも、緊張して目を合わせられなかったんです(苦笑)」
▲少年時代の思い出を語る石堂騎手
石堂少年は当時誘導馬をしていたマイネルデスポットに勝負服姿で騎乗し、武豊騎手が引き手を持って一緒に歩いてくれるという夢のような体験をしました。
「武豊騎手に『競馬学校にがんばって入学します』と言いました」
自分自身を「運動音痴」と言いますが、レースで駆け抜ける騎手の姿はやっぱりカッコよくて、JRA競馬学校は2次試験で不合格になったものの2018年4月、園田競馬場でデビューを果たしたのでした。
昨年は44勝を挙げて、兵庫の新人騎手勝利記録を更新。ヤングジョッキーズシリーズ トライアルラウンドでも好成績を残し、地方西日本4位でした。しかし、地方競馬からファイナルラウンドに進出できるのは7名。地方競馬全体でトップ通過した騎手と、その騎手を除いた東西それぞれ上位3名。つまり、西日本トップの騎手が東西通じてもトップであれば石堂騎手もファイナルラウンドに進出できました。
ファイナルラウンドではGI・ホープフルS当日に中山競馬場で騎乗できるだけに、より思いは強くなりますが、最終的に全体トップに立ったのは東日本の櫻井光輔騎手。石堂騎手はファイナル進出とはならず、それを知った瞬間、大きくうなだれたといいます。
▲昨年のYJSで記者と点数計算をする石堂騎手
それが今回、師匠や馬主のバックアップもあり、JRAで騎乗できることになったのです。それも、憧れの武豊騎手と対面を果たした京都競馬場で。
紫菊賞には武豊騎手騎乗で新馬戦を勝利したシャンドフルールも出走を予定しています。
自他ともに認める「競馬マニア」だった石堂少年は約10年の時を経て、少しずつ夢を実現させていっています。
あとは台風の影響なく、無事に出走できることを願います。