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【菊花賞】 距離適性無視してOK? いや、その考え方に菊花賞の解法は無い!!/岡村信将

  • 2019年10月18日(金) 18時00分

菊花賞をデータから分析(写真:ヒシゲッコウ、撮影:下野雄規)


 菊花賞で重視すべきキーワードは『距離が延びても強気の競馬』。

 もう20年以上も前から「最近の菊花賞はスローペースから直線だけの競馬なので、距離適性は関係ない」と言われているのですが、そんなことはないと思います。たとえスローから上がりの勝負になっても、それでも『後方で折り合いに専念して、追い出しは直線まで待とう』という馬のレースではありません。3コーナー、自分から仕掛けて行くぐらいでないと。

 いくら京都の外回りが直線404mであろうと、4角で後方に位置取っているようでは相当に望みが薄いのです。過去を30年以上さかのぼっても、4角後方からの追い込みを決めた菊花賞馬は、1996年のダンスインザダークぐらいのものではないでしょうか。

 多くの3歳馬にとって、距離は延びれば延びるほど未知数であり、不安が付きまとうもの。それは騎手や陣営の考え、つまりは『後方で折り合いに専念』というレースぶりになって形に現れます。一般的に距離は延びればペースは遅くなるので、距離に不安がなければ(強い馬は)自然と前目に位置することになるはず。

 それを体現していたのが、2015年の菊花賞で◎を打ったキタサンブラックでした。母の父サクラバクシンオーという血統から、3歳時は走るたびに距離不安を指摘されていたキタサンブラックでしたが、そんな声とは裏腹に、レースぶりは距離が延びるほど前へ、前への強気なものに。日本ダービーで14着に大敗してもその積極性が変わることはなかったのですから、陣営の距離に対する自信は相当なものだったのではないかと考えられます。

 極論すると、他の長距離戦はともかく、菊花賞に限っては『本当に長距離が得意かどうか』よりも『陣営が距離に自信を持っているかどうか』のほうがよほど重要なのです。それは騎手や陣営のコメントに現れるものではなく(それは希望的観測も含まれるものなので)、前へ、前への積極的なレースぶりに現れるものだと考えています。

 実はそう言いつつも、近2年の菊花賞は4角で中団に位置していたキセキとフィエールマンが勝っているのですが、キセキの年は走破時計が例年よりも15秒以上も掛かるような特殊な不良馬場での競馬。フィエールマンの年は、これこそ例外の超スローペースでした。今までスローペースの菊花賞と言えば

1996年ダンスインザダーク 11.7-11.4-11.3-11.7
1997年マチカネフクキタル 12.1-11.4-11.5-11.5

 のラスト4ハロンラップが有名だったのですが、2018年フィエールマンの年は 12.2-12.2-10.7-11.3 という別格の上がり勝負。ゆえに、この2年の例外で自説を曲げるつもりはありません。やっぱり菊花賞の狙いは、この距離に自信を持つ馬です。

 今年の菊花賞は『指定勝負レース』になる予定ですので、ウマい馬券での最終結論に、ぜひご注目ください。



■プロフィール
岡村信将(おかむらのぶゆき)
 山口県出身、フリーランス競馬ライター。関東サンケイスポーツに1997年から週末予想を連載中。自身も1994年以降ほぼすべての重賞予想をネット上に掲載している。1995年、サンデーサイレンス産駒の活躍を受け、スローペースからの瞬発力という概念を提唱。そこからラップタイムの解析を開始し、 『ラップギア』 と 『瞬発指数』 を構築し、発表。2008年、単行本 『タイム理論の新革命・ラップギア』 の発刊に至る。能力と適性の数値化、できるだけ分かりやすい形での表現を現在も模索している。

 1995年以降、ラップタイムの増減に着目。1998年、それを基準とした指数を作成し(瞬発指数)、さらにラップタイムから適性を判断(ラップギア)、過去概念を一蹴する形式の競馬理論に発展した。 『ラップギア』 は全体時計を一切無視し、誰にも注目されなかった上がり3ハロンの“ラップの増減”のみに注目。▼7や△2などの簡単な記号を用い、すべての馬とコースを「瞬発型」「平坦型」「消耗型」の3タイプに分類することから始まる。瞬発型のコースでは瞬発型の馬が有利であり、平坦型のコースでは平坦型に有利な流れとなりやすい。シンプルかつ有用な馬券術である。

高回収率をたたき出す馬券のプロたちは、どのような視点で重賞レースにアプローチをしているのか。ときに冷静に、ときに大胆に直球勝負で攻める予想家たちの熱き見解は必見。 関連サイト:ウマい馬券

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