展開のカギを握りそうなアエロリット。牡馬混合戦にはめっぽう強いだけに、牝馬と侮っていると痛い目に遭うかも!?(撮影:下野雄規)
GI馬10頭が揃った今年の天皇賞・秋。今回はアエロリットやダノンプレミアム、ワグネリアンらの評価に切り込んでいく。現場で評価されている馬は一体、どの馬なのだろうか? 記者たちのジャッジや生の声をお届け。さらに、当日のチェックポイントもうかがう。(取材・文・構成=緒方きしん)
ペースを握るのはアエロリット。人気のダノンプレミアムは評価が真っ二つ
スポーツニッポン・秋田麻由子(以下、秋田) アエロリットも強いと思うな。とくに牡馬とやったらうまく実力を出し切れるタイプなのかな? 前走も序盤から積極的にいったけど、彼女にしてみれば決してオーバーペースではなかった。
スポーツニッポン・高木翔平(以下、高木) 天皇賞・秋では、津村騎手から戸崎騎手に乗り替わり。果たして同じようなペースで逃げるのか、それとも平均ペースの逃げに切り替えるのか…。
秋田 アエロリットは平均ペースでいくのが良い馬じゃないし、あのくらいのペースでいくんじゃない? そこを2馬身くらい離れてスティッフェリオが追走するイメージ。
スポーツ報知・坂本達洋(以下、坂本) この馬は心身の成長力も素晴らしいですよね。3歳シーズンは480〜490キロくらいだったのが、今は510キロオーバー。クロフネ産駒らしいパワーに満ち溢れています。
秋田 1月のアメリカ遠征で、不向きな馬場を経験したよね。結果は9着と負けたけど、それを乗り越えてもう一段階強くなった印象がある。
坂本 アエロリットの懸念点をあげるなら、距離ですね。ギリギリ守備範囲かなとは思うんですが、2000m以上のレースは秋華賞以来です。自分のペースでいけたらいいですけど、他馬が絡んでくるようだとラストで距離の壁にぶつかりそうです。
秋田 先行勢だと、ダノンプレミアムもいるよね。ファン目線でいえば「ダノンキングリーが天皇賞・秋で、ダノンプレミアムがマイルCSでは?」といったところかもしれない。でも、あえてダノンプレミアムでいくということは、勝負をかけてきているということなんだと思う。
坂本 前走の安田記念は大きく負けているけど、ダメージを残さないようにしようという鞍上の判断です。レース後も下馬していましたし、本調子のレースではなかった。
高木 朝日FSでの強さが印象的な馬です。そこで負かしたステルヴィオ、タワーオブロンドン、ケイアイノーテックもその後GIを勝利していますから。あのレースを先行して上がり33秒6はすごい。本質的な時計勝負になれば“戦える馬”だと思います。
坂本 金鯱賞でもリスグラシュー・アルアインらを相手に勝利していますし、左回り2000mという条件は悪くないでしょうね。
秋田 ただし、ずっと勝ってきてた馬だけに、大きく負けてしまったことで馬が自信を失っていないかが心配だな。それにGIIだと2000mもいけるけど、GIの舞台だとやはり得意なのはマイル戦だとは思う。2人とは意見が分かれるところだね。
安田記念では一敗地にまみれたものの、ポテンシャルはメンバー屈指のダノンプレミアム。2強の牙城を崩すとしたら、この馬か。
福永騎手も素質に太鼓判! ダービー馬の意地を見せたいワグネリアン
坂本 ワグネリアンはどうでしょうか?
高木 札幌記念で本命にしていました。あの時は両前脚を落鉄したことが敗因ですが、コーナーを回ってきたところまでは「勝ったな!」と思わせてくれるレースぶり。十分に期待を持たせてくれる走りでした。
秋田 鞍上の福永騎手はワグネリアンの実力に自信あるみたい。「札幌記念の時くらい仕上がっていたら、アーモンドアイたちにも通用する!」と言ってたもん。でも裏を返せば、それだけ札幌記念は調子が良かったということ。だからこそ、勝ちたいレースだったよね。今回はそれくらい仕上がっているのか、しっかりと見極めたいところかなぁ。もしも抜群のデキだとしたら、それこそ1年ぶりの白星があっても不思議じゃない。
高木 人気的にも、魅力はありますよね! そういえば今年、父のディープと母父のキンカメ、両方が亡くなっていますね…。
秋田 さらに去年の震災でたった1頭亡くなったのが、ワグネリアンのお母さん。悲劇のなかにいる馬だけど、競馬はそんな馬にドラマが起こるものだと思う。
高木 そういう意味でも応援したくなりますね。同じくディープ産駒だと、アルアインもいます。皐月賞をレコード勝ちした実力派です。高速馬場への対応力を考えると軽視できないとは思うものの…。
坂本 穴馬というのは、先行馬から生まれると思っています。ポジションと流れ次第では、十分に一発はあるかと。ウインブライトと同系統だから、やりあっちゃうと難しい競馬にはなるんですけどね。
秋田 集中力をなくすことのある馬だから、アエロリットが作るであろう厳しい流れは歓迎だよね。中だるみする展開よりは絶対に得意だと思う。あとはディープ産駒だと、復調気配のあるカデナに頑張ってほしいな。
福永騎手が、その素質を高く評価しているワグネリアン。2強を破って、昨年の神戸新聞杯以来の勝利を手にしたいところ。
激戦必至!当日の注目点は?
坂本 あとは当日どうするかですが、馬場状態は気にしたいですよね。台風の影響などもあって読みにくい部分はあるものの、基本的には先行勢有利な馬場なのかな? と。アーモンドアイはテンションにも注意しておきたいです。ピリピリし過ぎてないといいんだけど…。
高木 サートゥルナーリアもテンションに注意したいです。ダービーのような状態にならないと願うしかないです。
坂本 パドックだけじゃなく、返し馬までしっかり見届けたほうが得策ですよね。馬場に入ってからピリッとした馬は要注意だし、先入れしている馬も少し割り引きだと思います。
秋田 当日の状態が気になるといえば、ウインブライト。良し悪しがわかりやすい馬だしね。
坂本 ウインブライトは絞れているか、ですかね。馬体重というよりは馬体の雰囲気に着目したいです。あとは返し馬で、松岡騎手が“クイッ”とリズムよく腰を浮かせられたかどうか(笑)。
秋田 そっと入る馬よりは元気に入る馬がいいよね。さて、総括すると、やっぱり私はアーモンドアイが最有力だと思うな。去年のジャパンCのような、先行してラストも脚を使うという競馬をすれば、どの馬も敵わないんじゃない?
高木 いやいや! サートゥルナーリアが真っ向から対抗できる可能性は十分です。その実力の片鱗を、前走で見ました!
坂本 いずれにせよ、このレースは“新たなる伝説のはじまり”だと思っています。まさに、力と力の激突です。素晴らしいレースになることを楽しみにしています!
今年の大阪杯を制しているアルアイン。皐月賞を含め芝2000mGIを2勝しており、人気薄だと狙って面白いかも!?
競馬史に刻まれる対決、アーモンドアイvsサートゥルナーリア。二強の取捨に必要な3つのカギとは?