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ノーザンファーム、初の繁殖牝馬セール単独開催

  • 2019年10月23日(水) 18時00分

今や繁殖牝馬が投資の対象になる時代


 昨日、苫小牧市のノーザンホースパークにて「ノーザンファーム繁殖牝馬セール」が開催された。従来、ノーザンファームは、この時期に新ひだか町静内の北海道市場で開催される「繁殖馬セール」に上場させていたが、今年から単独で、セレクトセールと同じ会場を使用して繁殖牝馬のセールを実施することになったのである。

生産地便り

セール会場風景


 上場予定頭数は60頭。すでに生産者を始め、各方面には事前に名簿が郵送されており、受胎馬41頭、未供用馬(3歳〜5歳)が16頭、不受胎馬が3頭という内訳である。

 開場は午前10時。受胎馬、未供用馬をそれぞれ区分け(隔離)して、10時半より11時半までの1時間、比較展示が実施された。この日、北海道は季節外れの暖かさと晴天に恵まれ、ノーザンの血を求め日高からもかなり多くの生産者が訪れて、名簿を片手に1頭ずつ上場馬を見て回っていた。「どれくらい高くなるか、予想がつかない」「ライバルが多そうなので、予算内で落札できるかどうか」と口にしながらも、「本気度」の高そうな生産者が少なくなかった。

生産地便り

セール展示風景


 予め販売希望価格が公表されており、最も高額なのは、5番アスティル(鹿毛5歳、父ステイゴールド、母ヒストリックスター)の2000万円。ロードカナロアを受胎しており、半姉には桜花賞馬ハープスターがいる。本馬自身は5戦未勝利ながら、祖母は名牝ベガで、アドマイヤベガ、アドマイヤドン、アドマイヤボスなど活躍馬が目白押しの母系である。

 1000万円は3頭いて、7番コズミックショア(9歳鹿毛、父Elusive Quality 母メアリーデラニー、ドゥラメンテを受胎)、11番クルージンミジー(芦毛10歳、父Mizzen Mast、母ベイビーレッツクルーズ、ハーツクライを受胎)、42番プリメラビスタ(4歳栗毛、父オルフェーヴル、母ビワハイジ、東海公営2勝、繁殖未供用)というラインナップだ。

 セリ会場はセレクトSと同じくホースパーク内の屋内馬場に作られており、セレクトS仕様をややコンパクトにしたサイズである。定刻通りにセリが始まり、1番グラニーズチップス(5歳芦毛、父ハーツクライ、母ココシュニック、リオンディーズを受胎)が登場すると、400万円から50万刻みでどんどん価格がセリ上がって、1800万円で(株)ヒポファイル・ブラッドストックに落札された。

 2番ダブルゴールド1250万円、3番ラダームブランシェ1400万円と、次々に1000万円以上の価格で落札馬が続く。

 5番アスティルが登場すると、さらに活発な争奪戦が展開され、3700万円まで高騰した。落札者は江馬由将氏。7番コズミックショアも、2400万円まで上がり、西山茂行氏が落札した。

生産地便り

受胎馬最高価格となった5番アスティル立ち姿


 前半は1000万円超えの落札馬が続き、落札者も日高の生産者と馬主が交錯した。生産者はそのまま自牧場で繋養し、来年出産させるだけだが、馬主もまたどこかの生産牧場に預けることになる。繁殖牝馬が投資の対象になる時代であることを感じさせるセリ風景であった。

 その後、価格はやや落ち着き、受胎馬の後半は、200万円〜300万円台の落札馬が続いて、「思いがけない安さで落札できた」と喜ぶ生産者の姿が見られた。

 セリが最もヒートアップしたのは、受胎馬が終了し、続いて未供用馬が登場した時である。前述の42番プリメラビスタは、名牝ビワハイジの最後の産駒で、特筆すべき競走成績はないものの、滅多に出ない牝系とあって、激しい争奪戦が展開した。

生産地便り

未供用馬最高価格となった42番プリメラビスタ立ち姿


 場内のあちこちから声が上がり、価格はどんどんつり上がって、最終的に6200万円で(有)ケイアイファームが落札した。

生産地便り

未供用馬最高価格となった42番プリメラビスタ落札場面


 最終的には上場60頭中、57頭が落札され、売却率は95%、税込5億2987万円(税抜き4億8170万円)を売り上げた。落札馬の平均価格は税抜きで845万円。

 初の試みとなったノーザンファーム繁殖牝馬セールについて、主催者を代表して吉田俊介氏は「220名の方々の購買登録を頂き、大半の馬を落札して頂いて感謝しております。これまでジェイエスさんの繁殖馬セールに上場していましたが、頭数が多くなり、輸送の手間の問題などもあって、ここで単独開催となりました。来年以降も、生産地の年間スケジュールに組み込んで頂けるようなセリにして行きたいと考えております」とコメントした。

生産地便り

ノーザンファーム繁殖牝馬セールの主催者を代表して吉田俊介氏がコメント


 今日(10月23日)は、北海道市場にて(株)ジェイエス主催の繁殖馬セールが開催される。こちらについては来週、触れる予定である。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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