▲地方所属馬として3頭目のJBC覇者となったブルドッグボスの口取り 鞍上は12年前にフジノウェーブでJBCスプリントを制した御神本騎手
昨日行われたJBCスプリントはブルドッグボスが見事な差し切り勝ちを決めました。これまでJBCを制覇した地方馬は3頭のみでありながら、鞍上の御神本訓史騎手はフジノウェーブに続き2度目の勝利。その前回はゴール後のある動作を「恥ずかしいですよね(苦笑)」と振り返ります。また、かつて短期騎乗をした高知で見せた意外な(?)優しい一面とは。
騎手が憧れる御神本騎手のフォーム
内からノブワイルド、外からコパノキッキング、そして間にファンタジストとスタート直後、3頭がスピードを見せつけ合ったJBCスプリント。
「先行勢が激しく、最初のゴール板を過ぎてもペースアップしていて、『だいぶ速いな』と思って乗っていました」
ブルドッグボスの背中で御神本騎手はそう感じていたといいます。
3コーナー手前でコパノキッキングと藤田菜七子騎手が先頭に並びかけると場内から大歓声が上がりましたが、後方集団の一角で息をひそめていたブルドッグボスは
「4コーナーですごく反応が良くて、追い出したら『これは勝てるな』と思いました」とグングン加速。
完全に抜け出していたコパノキッキングをゴール直前で計ったように差し切ると、御神本騎手は観客に向かって右手を伸ばし、人差し指でポーズをとりました。
▲御神本騎手がホームストレッチに戻ってくると大きな歓声が上がりました
騎乗フォームが崩れることなく、あまりに綺麗なポーズとゴールから逆算した差し切り勝ちに見とれてしまいました。
多くの騎手たちも「御神本さんの騎乗フォームはカッコイイ!」と憧れのまなざしを送ります。騎乗フォームについて御神本騎手はこう考えているといいます。
「せっかくやるんだから中途半端な乗り方はしたくないので、姿勢は綺麗に乗ろうと追い求めています。勝ち方や追い方など1つ1つの動作や所作にまで敏感に意識することは大事なのかなと思うこともあります。綺麗に乗れれば、馬も走りやすかったり気持ちいいと思うんですよね」
しかし、初めてJBCスプリントをフジノウェーブで制覇した時は
「ゴール後に首筋を撫ですぎですよね(笑)。しつこくて恥ずかしいくらいです」
と10年以上経った今でも照れながら話します。
▲12年前、フジノウェーブでJBCスプリントを制した御神本騎手(撮影:高橋正和)
それゆえでしょうか。今回のポーズの決め方はいつも以上にスマートでカッコよく映りました。
母の日には毎年
時は遡ってJBCの5カ月前。浦和から遠く離れた高知競馬場で雑賀正光調教師はほくほく笑顔で御神本騎手を見つめていました。
というのも、高知優駿にナンヨーオボロヅキを出走させ、御神本騎手の見事なレース運びで圧勝したのでした。
▲ナンヨーオボロヅキで高知優駿を勝利した御神本騎手(提供:高知県競馬組合)
前走では赤岡修次騎手が同馬に騎乗したのですが、この時は南関東へ期間限定騎乗に出かけており、騎乗が難しい状況。
「騎手をどうしようかと思っていて、御神本に連絡してみたら、『行きます!』って言うてくれたんや」
かつて御神本騎手が2010年に高知で期間限定騎乗をしていた時、所属していたのが雑賀厩舎という縁がありました。さらに雑賀調教師はこう続けます。
「御神本は今でも母の日にはうちの奥さんに毎年プレゼントを贈ってきてくれるんや。今年も胡蝶蘭が届いてね。ホンマ、優しい子やで」
押しも押されぬトップジョッキーの意外な一面。
こうして、期間限定騎乗後初めて高知の馬に騎乗し重賞制覇となったのでした。
さて、改めて昨日のJBCスプリントについて、御神本騎手はこんな思いを抱いていたといいます。
「JBCを浦和でやると聞いて、地方馬や浦和の馬にチャンスがあるんじゃないかと思っていました。初の浦和開催を浦和の馬で勝つことができたのは関係者やたくさんのファンのおかげです。まだまだJBCを勝つ地方馬は少ないですが、みんなで切磋琢磨して来年に向けてまたがんばっていきたいと思います」
2016年川崎や2017年大井開催を上回る2万9191人が詰めかけた浦和競馬場。
スタンドで、4コーナー付近の立見席で、正門脇の特設ビジョンで、みなさんそれぞれに思いを抱えながら熱い一日を過ごしたことでしょう。
来年は門別でJBC2歳優駿と大井でJBC3競走を同日に行うという史上初の試み。どんなドラマが待っているでしょうか。