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悪天候に泣かされた秋競馬 “馬場”に対する小牧騎手の実感を調査

  • 2019年11月19日(火) 18時01分
太論

▲“馬場”に関する質問に答えます!


悪天候が続き、道悪での開催が多かった秋競馬。『太論』読者からも、“馬場”に関する質問が多く届きました。今回は、そのなかからいくつかピックアップし、馬場に対する小牧騎手の実感を調査。そこから話が広がり、レース中「馬の後ろに付けるリスク」についても語ってくれました。(取材・文:不破由妃子)


レース中にゴーグルが外れたら…あまりの痛さにビックリ!


──この秋は台風の影響もあって、馬場が悪い開催が多かったですよね。そのためか、馬場にまつわる素朴な疑問がいくつか届いています。まずは、「この秋は雨が多かったので気になったことがあります。アッという間に馬場が回復している印象がありますが、良馬場発表でも稍重に近いなと感じることはあるのでしょうか?」という質問です。

小牧 あるある、それはある。雨の影響を受けた馬場は、良馬場でもあってもやっぱりちょっと湿っているし、パンパンと良馬場とはまた違う。良馬場か稍重かの判断には基準があるんやろうけど、そんなに急には回復せんでしょう。今はだいぶ水捌けもいいんやろうけど、芝なんかは風で渇くという一面もあるんちゃうかな。でもまぁ、雨のあとはデコボコしているから、その点では良馬場でも稍重でも一緒やけどね。

──走りづらさは一緒ということですね。

小牧 なんせいつもより時計が出ないことが多いでしょ? 時計が掛かるということは、走りづらいっていうことやからね。

──続いても馬場にまつわる質問なのですが、「調教で走るウッドチップの“良”と“重”は、具体的にどれくらい違うのですか? 調教欄を見るときの参考にしたいです」。

小牧 単純に、重のときのチップは水分を含んでいるから、走りづらいよ。当然、時計も変わるしね。それに、同じ良でも走る時間帯によって時計は変わる。馬場が慣らされていない時間帯は、馬が脚を取られるからね。もうボコボコやもん。

──ハロー掛け後の馬場に殺到しますものね。

小牧 そうそう。みんな少しでも馬場がいいときに走りたいから、開場すると一斉にバーッと出ていくでしょ? 追い切りのときは、みんなハロー掛けのあとに乗るようにしてるしね。

──そう考えると、調教の時計はやっぱり額面通りには受け取れない?

小牧 馬場状態に左右されるからね。

──話はちょっと変わりますが、チップが顔などに飛んでくることはないんですか? 形状的にすごく痛そうな…。

小牧 チップはね、飛んできたらホンマに痛い! ゴーグルが絶対に必要やね。まぁ砂も大概痛いけどね。だから、馬はよく目を開けて走ってるなと思う。人間やったら耐えられんよ。レース中にゴーグルが外れたときなんか、あまりの痛さにビックリするから。まともに乗っとられへんで。

──ゴーグルが外れることってよくあるんですか?

小牧 いや、よくあることじゃないけど、30年以上乗っていれば何回かあるよ。あと、泥が付いて見えなくなった場合、ゴーグルを取ってしまうこともあるけど、あのときの痛さはたまらんね。目も開けられへんし、まともに追われへん。

──そうでしょうねぇ。馬は一体、どれだけ痛い思いをしているのか…。

小牧 痛いもんやから、嫌がって頭を上げてる馬がいますやん。頭を上げるのって、引っ掛かってるときばかりじゃないからね。

──そう考えると、馬の後ろに付けたり馬群のなかに入れるのは、経験の浅い馬にとっては本当にチャレンジなんですね。

小牧 そうやね。だから、調教であえて馬の後ろに入れて練習したりしてるでしょ。あれはすごく大事なこと。とはいえ、砂を被るのが本当に嫌な馬は、練習しても慣れんもんねぇ。逃げ馬とか、砂を被ったら一切ダメな馬がいますやん。あと、そういう馬は、力が足りないとわかっていても外々を回るしかなかったり。

──逆に、好走要因として「砂を被らない位置で競馬ができたこと」を挙げるケースも多々ありますものね。ちなみに、前に馬がいたとしても、微妙に砂を被らない位置関係ってあるんですか?

小牧 あるよ。前の馬に引っ付いてたら大丈夫。顔じゃなくて、胸に当たるから。

──なるほど。多少リスクはありますが、前の馬との距離を詰めれば、砂を被らずに済むわけですね。

小牧 うん。ただ、そもそもの位置取りが中団や後方の場合、前にいる馬と距離を詰めたとしても、その前にも馬がたくさんいるから意味がない。前にいる馬が1頭やったら、詰めれば砂は胸にしか当たらないけど。

──じゃあ砂を被るのがダメな馬の場合、番手の競馬がベスト!?

小牧 そうやね。番手とか、離れた2番手の後ろとか。砂云々は別にしても、僕は番手の競馬が好き。4コーナーで外からこられて出られへん場合があるから、意外と嫌うジョッキーが多いけど、ジーッとしていられるぶん、脚を残せるからね。

太論

▲「頭を上げるのは、引っ掛かってるときばかりじゃないからね」

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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。2024年には再度園田競馬へ復帰し、活躍中。史上初の挑戦を続ける。

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