陣営の展望するドバイやアメリカ挑戦に確信が持てる
3歳クリソベリル(父ゴールドアリュール)の、新たな歴史を切り開く力強いGI制覇だった。無敗でチャンピオンズC(前身ジャパンCダートを含む)を制したのは、この馬が史上初めて。中京ダート1800mに移ってのレースレコードだった。これからまだ一段と強くなるだろう。550キロの馬体はバランス抜群、少しも巨漢に映らないからすごい。
ここに至るまでの5勝は、他馬とは一線を画す素質の違いで記録してきたところがあるが、今回は音無調教師が「中間の放牧(再鍛錬)ですごく成長してくれた」と振り返るように、スケールに勝負強さを加えた着差以上の「実力勝ち」だった。コースは異なるとはいえ、一戦ごとに1800mの時計を短縮し今回は1分48秒5にまで達した。
この好時計勝ちは大きい。陣営の展望するドバイや、アメリカ、来年新設される超高額賞金のサウジCへの挑戦に、スピード競馬に対応の確信が持てることになった。
クリソベリルのチャンピオンズC制覇により、父ゴールドアリュール産駒のダートGI勝利(統一重賞を含む)は、芝に比べるとGI数ははるかに少ないのに、今回2着に惜敗した6歳ゴールドドリームの5勝、コパノリッキーの11勝、エスポワールシチーの9勝など、計38勝にも達した。ゴールドアリュール(17年2月に18歳で急死)自身の4勝を加えると、ゴールドアリュール系のダートGI勝利は「42勝」となり、ダートGI史上断然の最多勝利数となった。チャンピオンズC3勝も最多勝利。
無敗でチャンピオンズCを制したクリソベリル
輸入牝馬キャサリーンパー(父Riverman)のファミリーの活躍も特筆。直仔のアロンダイト(父エルコンドルパサー)がダート5連勝で2006年のジャパンCダートを勝ち、その全姉にあたるクリソプレーズの産駒は「クリソライト(GI 1勝)、牝馬マリアライトがGI2勝、そしてクリソベリルがGI2勝、リアファルもGII 1勝」となった。
さらに半姉タンザナイトの直仔ダンビュライトはGII2勝。かつ孫世代のブラックスピネルがGIII 1勝など、21世紀になって活躍馬続出の名牝系に発展している。
レース全体の流れは、前半1000m通過「60秒8」。後半は「12秒0-12秒0-11秒6-12秒1」=1分48秒5。例年より時計の速いコンディションだったわりに前半がゆったり流れた結果、後半800m「47秒7」は例年よりかなり速い上がりになった。
単騎逃げに持ち込んだ5歳インティ(父ケイムホーム)には理想の形になり、インティ自身は後半600mを「35秒9-12秒3」でまとめているが、これをマークしていたクリソベリルと、好位の6歳ゴールドドリーム(父ゴールドアリュール)に最後の追い比べで交わされてしまった。1分48秒7は自身の最高時計だけに(1800mで5勝)、残念ながら今回の1800mでは半ば力負けかもしれない。初めて古馬に外から来られる展開のインを通ってきた勝ち馬に交わされたのはショックだろう。昨年、1分35秒6でゴールドドリームを振り切って勝ったフェブラリーSで巻き返したい。
1番人気で2着したゴールドドリームは、勝ったかと思えるシーンもあったが、インティとの間を割って伸びた勝ち馬に屈したからこちらもかなりショック。これでダートGIは16戦【5-5-2-4】となった。だが、4歳時のチャンピオンズC勝利を含め、目下10戦連続してGIの3着以内をつづけて【4-5-1-0】であり、陰りなど少しもない。3年連続して連対中のフェブラリーSでは、2020年も勝ち負け必至だろう。
チュウワウィザード(父キングカメハメハ)は、中団のインで人気馬4頭を前に見る位置。直線はちょっと苦しい形になったが、最後までしっかり伸びて少差4着。紛れの生じる展開ではなかったので、ほぼ力は出し切った結果か。ただし、まだ4歳、もうひとまわりのスケールアップはある。
L.デットーリ騎乗で4番人気のオメガパフューム(父スウェプトオーヴァーボード)は、中団でもまれる展開から伸びそうになったが、もうひとつエンジン全開にならなかったあたり、不安は解消していても左回りはもう一歩。これで左ダート【0-1-1-3】。
伏兵陣では、7歳ウェスタールンド(父ネオユニヴァース)は、中間の動きは前回を上回り、当日も落ち着いた好状態だったが、なぜかもうひとつみなぎる闘志がなかったようにも映った。
6歳サトノティターン(父シンボリクリスエス)は、木曜の移動が吉と出て素晴らしい状態だったが、この距離で押して中位を取りに出た作戦が裏目に出たのか、後半ペースが上がるとスパートできなかった。やはり2000m級向きなのか。