香港の競馬サークルに強いつながりを持つというゾーイさん。馬主としての一面もあり、現地ではタレントとしても活躍している
いよいよ明日に迫った今年の香港国際競走。政情が不安定ななか、今年は開催するのかとヤキモキさせられたが、ふたを開けてみれば、アーモンドアイとラヴズオンリーユーの回避はあったものの、9頭の日本馬がエントリーしてきた。昨年は全レースで香港馬が優勝したが、今年は一矢報いることができるのか? 現地在住の記者イアン・シャム氏と馬主の資格も持つ美人タレント・ゾーイ・シャムさんに今年の香港国際競走について聞いた。
スプリントは香港短距離界期待の新星エセロに注目
香港競馬の牙城ともいえるスプリント路線。ロードカナロア以来の制覇を目指すダノンスマッシュの前に、香港勢が今年も強大な壁となって立ちはだかりそうだ。なかでも、前哨戦で古馬を破ったエセロにはイアン氏、ゾーイさんともに一目置いている。
イアン氏が「エセロを負かすのは難しいだろう。ジョッキークラブスプリントでは、古馬を相手に大仕事をやり遂げたばかりだ。香港スプリント初の3歳馬のGI制覇に立ち会えるかもしれない」と評すれば、ゾーイさんも「3歳にしてスターホースとなったエセロですが、管理するJ.ムーア調教師が『エイブルフレンドの伝説を思い出させてくれた』と言っています。香港の競馬ファンにとって希望の新星です」と、往年の香港競馬界のスターホースを彷彿とさせる強さを認めているよう。
とはいえ、ゾーイさんのイチオシはミスタースタニングで、「このレース初の3連覇を期待。4月のスプリントカップの後、ケガをして休養していましたが、先月のジョッキークラブスプリントで復帰を果たしてくれました。目標とするこのレースでは本来の姿を見せてくれるはず」と、期待を寄せている。
香港勢はエセロ以外にも、J.サイズ厩舎が送り込むビートザクロックやホットキングプローンもいる。前者については「これまで3着以内を外したことのない安定感は馬券を買う側からすれば心強い」とイアン氏。
また後者も「ケガでほぼ1年ぶりとなったジョッキークラブスプリントで2着。その能力は健在であることをアピールした。自在性もあり、エセロを負かすとしたらこの馬かもしれない」と、侮れない1頭であることを強調している。
香港のスプリント路線の新星として期待を背負うエセロ。史上初の3歳馬による制覇なるか、注目が集まる(撮影:森内智也)
香港マイルは連敗中のビューティージェネレーションをどう評価するかがカギ
このレースを連覇中のビューティージェネレーションが、ここへ来て2連敗。マイル路線は風雲急を告げ、今年は絶対的な軸が不在という状況だ。両氏の判断も分かれており、「やはりビューティージェネレーションを応援したいです。2年連続で香港の年度代表馬となり、今シーズンの初戦セレブレーションカップではレコードタイムで優勝しました。ここ2戦は不完全燃焼で終わっていますが、そのぶん、余力も十分にあるはずです」というゾーイさんに対し、イアン氏は「ジョッキークラブマイルで2連敗を喫したビューティージェネレーションは3番手まで」と、評価を落としている。
逆に同じ香港馬でもうなぎ登りなのが、前走のジョッキークラブマイルでビューティージェネレーションを下したワイククだ。
ゾーイさんは「今シーズン大きな成長を遂げ、前走ジョッキークラブマイルでビューティージェネレーションを負かしました。再び驚異的な存在となるはず」と語り、イアン氏にいたっては相手候補の筆頭に挙げるほど。
「期待された香港ダービーは2着に終わってしまったが、その鬱憤を晴らすかのように今シーズンに入ると力を付けていき、遂にはジョッキークラブマイルで頂点に立つまでに成長した」と、その成長ぶりに舌を巻いている。
そのワイククの実力を認めたうえで、それらをまとめて負かすのがインディチャンプだというのがイアン氏の見解。6月にアーモンドアイを破った安田記念をふまえ、「あれは私のみならず香港の競馬関係者にも衝撃を与えた。マイルチャンピオンシップを勝利した上での参戦であり、モーリス以来の日本馬の勝利を確信している」と、断言。
ゾーイさんも「今年の安田記念とマイルチャンピオンシップを制した、インディチャンプをはじめとする日本馬に優勝されても不思議ではありません」と、今年の日本馬には注意を払っている様子だ。
香港のマイル路線で評価急上昇のワイクク。絶対的本命不在の今年ならアッと言わせるシーンがあってもおかしくない(撮影:森内智也)
香港カップはアーモンドアイ回避で一転、混戦模様に
ここ2年は香港勢が優勝しているが、今年は日本や欧州からの遠征馬、地元の香港馬ともに人気の中心になりそうな馬が不在。前走で豪マッキノンSを制したマジックワンドが押し出されるような格好で人気を背負いそうだが、それを象徴するように、二人の見解にもバラツキがみられる。
イアン氏は「シャティントロフィーでビューティージェネレーション相手に大金星を挙げており、管理するキャスパー・ファウンズ調教師が今シーズン本格化すると期待している馬」というライズハイに注目しつつも、「またウインブライトも侮れない。稀に母国ではGIを勝てずにいながら、香港の馬場や環境が合って好走する馬がいる。ウインブライトはまさにそのタイプ」と、今春クイーンエリザベス2世Cを勝った芦毛の日本馬を警戒している。
一方、ゾーイさんは前走のマッキノンSでGI勝ちを収めたマジックワンドの強さを素直に認めつつも、「ただ、非常にタフなレースを続けてきている点は気がかりです。その部分は割り引く必要があるでしょう」と、全幅の信頼を置くまでにはいたっておらず、むしろ「香港馬では、今シーズンその名の通り飛躍を続けているライズハイに期待しています。シャティントロフィーではビューティージェネレーションを負かしており、その潜在能力は高いです」と、こちらもライズハイが気になっている様子。
上記以外ではイアン氏が3歳牝馬のエディザ、ゾーイさんは香港ダービー馬フローレや、楽に逃げられたという条件付きだが、タイムワープの名前を挙げている。
今年の注目株として二人から名前が挙がったライズハイ。本命不在の一戦だけに決して侮れない(撮影:森内智也)
クラシックディスタンスでも日本馬に対抗できるエグザルタントに期待
香港ヴァーズでは、ともにエグザルタントに注目。元来、短距離路線が強い香港競馬において、中〜長距離で日本や欧州からの遠征馬に抗するのは厳しかったが、この距離でようやく出てきた逸材だ。
イアン氏は「連覇に期待。ジョッキークラブカップを制した後、確勝を期してここに駒を進めてきた。今年も海外からの強豪馬相手に素晴らしいレースを見せてくれるだろう」と太鼓判。ゾーイさんも「エグザルタントは香港のトップホース。今シーズンはさらに円熟味を増し、レースぶりにも力強さも感じます。きっと2連覇を果たしてくれるでしょう。私も大声で応援したいと思います」とベタ褒めだ。
相手候補はイアン氏が英ダービー馬アンソニーヴァンダイク、ゾーイさんはプリンスオブアランと意見が分かれた。理由として「管理するエイダン・オブライエン調教師は、ハイランドリールを3歳時にこのレースで走らせて勝たせた実績がある。あの時の再現があるかもしれない」と話したイアン氏に対し、ゾーイさんはプリンスオブアランについて「昨年は未完成でしたが、今年は馬体に実が入ったと感じます。メルボルンCで2着だったように遠征に動じないのも心強いです」と、見解を述べてくれた。
他ではC.スミヨン騎手とのコンビでエリザベス女王杯を制したラッキーライラックと、天皇賞・春で2着の実績のあるグローリーヴェイズという日本から参戦する2頭を挙げたイアン氏。それに対し、ゾーイさんは長期休養と去勢手術を経て、持っている能力を発揮できるようになったヤングラスカルと、昨年の香港カップで2着に入り、今年のナッソーステークスを優勝したディアドラを推奨している。
今年も香港馬が席巻するのか? それとも日本馬、欧州馬の逆襲はあるのか? 世界のホースマンが注目する香港国際競走の行方から目が離せない。
短距離王国の香港において、中〜長距離で頭角を表してきたエグザルタント。遠征馬を蹴散らして連覇なるか?(撮影:高橋正和)
今週末はGIレースが目白押し! 阪神JFでは、美人キャスターたちがうら若き乙女のアツーイ戦いに注目。そして香港国際競走は、香港在住の美人競馬タレントが、現地の声を交えながら4つのレースを徹底分析。予想の参考にぜひ!