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【有馬記念】リスグラシューVSアーモンドアイ 最初で最後の「現役最強牝馬対決」 / 矢作芳人調教師(後編)

  • 2019年12月15日(日) 18時02分
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▲アーモンドアイとの対決への思いを語った矢作調教師 (C)netkeiba.com


有馬記念で引退を迎えるリスグラシュー。牝馬にして5歳の今がピークというのは、長い競馬史を紐解いてもなかなかないことです。「本音を言えば、もうちょっとリスグラシューの走りを見ていたかった」、インタビュー中にそうもらした矢作芳人調教師のリスグラシューへの思いを、2週にわたってお届けします。

今回のテーマは、目前に迫った有馬記念への意気込み。アーモンドアイの参戦が発表され、最初で最後の「現役最強牝馬対決」が実現することとなりました。注目の一戦への勝算と、矢作師が考えるアーモンドアイの最たる才能とは。

(取材・構成=不破由妃子)

※前編のインタビューはこちらから


今の強さを思うと、3歳時は全然本物ではなかった


──いよいよリスグラシューのラストランが目前に迫りました。今、リスグラシューに対しては、どんな思いがありますか?

矢作 初めて見たのは1歳の頃で、そのときから素晴らしい馬だなと思っていました。当時、その印象をそのまま新聞記者に伝えたら、それが記事になってすごく話題になってね。クラブに応募が殺到したというエピソードを思い出します。

 とはいえね、僕としてもここまで走るとは…。ボーナスを入れれば、クラブの馬の歴代最高獲得賞金を更新しようかという勢いですからね。

──何がすごいって、牝馬にして5歳の今がピークということ。長い競馬史を紐解いても、なかなかいませんよね。

矢作 そうですね。ここにきてやっと本格化したなっていうところですから。3歳時にクラシックを勝てなかったときは、「ツキがなかった」と思っていたんですよ。でも、今の強さを思うと、当時は全然本物ではなかったということ。勝てなくても当然だったのかなと今は思いますね。

──結果論ですが、それでいて阪神JF2着、桜花賞2着、オークス5着、秋華賞2着。まるでポテンシャルの塊のような馬だったわけですが、それがどういうきっかけで引き出されてきたのでしょうか。

矢作 休むたびに強くなっていった感じですね。最初の変化は、東京新聞杯を勝つ前。その年の夏を越して、エリザベス女王杯の前にも変わりました。その後、2回の香港遠征を経て、「また変わってきたな」と思っていたら、宝塚記念のあの勝ちっぷりですよ。

──レーン騎手の迷いのない先行策から、最後は2着キセキに3馬身差。それまでのリスグラシューとはまったく違う競馬だったこともあって、ものすごく衝撃的でした。

矢作 確かに絶好調でしたけど、それにしても強かったですよね。絶好調といえば、コックスプレートもそう。良くなる馬はそういうところがあって、使うたびに絶好調が更新される。ここがピークだなと思ったところから、さらに上がある、みたいなね。

──まさに今、リスグラシューがその状態にあるとしたら、有馬記念でさらに更新される可能性もありますね。

矢作 そうですね。その可能性はあります。

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▲レーン騎手の迷いのない先行策で、宝塚記念を勝利 (C)netkeiba.com


「ぜひ戦ってみたい」というのが今の気持ち


──さて、有馬記念では、アーモンドアイとの現役最強牝馬対決が耳目を集めていますが、先生ご自身、コックスプレートのあとに「今なら戦ってみたい」とコメントされていました。ズバリ、勝算のほどをお聞きしたい。

矢作 東京の超高速馬場では分が悪いだろうけど、それ以外の条件なら…。それこそ、有馬記念はリスグラシューの舞台ですからね、対戦が叶えば面白いなと思っていました。

 2500mを走るのは初めてですけど、何も問題はないし、宝塚記念のような少し上がりが掛かる競馬に一番適性がある。そういった意味では、有馬記念にも同じようなイメージを持っています。ですから、「ぜひ戦ってみたい」というのが今の気持ちです。

──ライバルのアーモンドアイについてですが、先生が思うあの馬の才能とは?

矢作 それはやっぱり、レースですべてを出し切ることでしょう。レース直後の姿を何度も見ていますが、「倒れてしまうのかな?」と思うほどフラフラになっていますからね。そういう姿を見るたび、ここまで出し切る馬がいるのか…と思います。

 もちろん、スピードも瞬発力も秀でていますけど、何よりほかの馬と違う点はそこ。アーモンドアイの最たる才能だと思います。

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▲「そういう姿を見るたび、ここまで出し切る馬がいるのか…と」 (C)netkeiba.com


──では、ラストランに向けて、改めて意気込みを聞かせてください。

矢作 リスグラシューは、若い頃に負け続けたことで、多くのファンが応援してくださった馬。だからこそ、ここでファンの期待に応えたい。結果次第では、年度代表馬のチャンスもあると思うので。

──そこに狙いを定めての挑戦ということですね。

矢作 はい。そのつもりで挑みます。

──特例でレーン騎手の騎乗も叶いましたしね。

矢作 ここまで2回騎乗して、2回とも強いパフォーマンスを引き出している以上、彼に乗ってもらうことが一番ファンが喜んでくれるのではないかと思って交渉しました。実現してホッとしています。

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▲最後の手綱は、宝塚記念&コックスプレートを勝利したレーン騎手に託された (C)netkeiba.com


──コックスプレートを勝った際には、「うれしすぎて涙も出ない」とおっしゃっていましたが、有馬記念を勝ったら…。

矢作 今度は泣くでしょうね(笑)。今年は厩舎として宝塚記念も初出走でしたけど、この有馬記念も今回が初出走。これでやっとすべてのGIの出走が叶います。

 宝塚記念も初出走初勝利でしたから、有馬記念でもそうなることを願って、これまでの絶好調を更新するような最高の状態で当日を迎えられればと思っています。

(了)

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